デジタル社会から身を守る、子どもの「メディアリテラシー」の育て方

特集「子どもとデジタル」第3回

  • メディアというものは、受け手と送り手の顔が見えないもの
  • メディアの商業的なしくみや表現方法を知ることが重要
  • 一緒に接触する時に進んで話し合ってみよう

私たちの暮らしは、いまやメディアと切っても切り離せない。生まれた頃から、スマホやパソコンがある子ども世代はなおさらだ。しかし、メディアリテラシーについて、その能力を身につけている子どもがどれくらいいるだろうか。今回は、内閣府「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会」座長代理も務める千葉大学の藤川大祐教授に、家庭でできるメディアリテラシー教育について聞いた。

送り手と受け手が見えないしくみが

メディアの問題を生んでいる

そもそもの疑問だが、「メディアリテラシー」とは一般的にどのようなものなのだろう。

「メディアは日本語で“媒体”と訳されるように、中に入ってつなぐもの。テレビや新聞、雑誌のようなマスメディアが典型となり、インターネット時代の今はウェブサイトやブログ、ツイッターなどさまざまなメディアが登場しています。メディアリテラシーとは、これらメディアに対する“読み書き能力”を指します」(藤川さん、以下同)

メディアリテラシーが求められる背景には、そのコミュニケーションの難しさが関係しているという。

「メディアには、送り手と受け手が存在し、お互いの顔が見えない関係性で成り立っています。そのため、受け手にしてみると、送り手がどんな意図をもってどんな構成にしているのか、送られてきた情報でしかわかりません。こうした状態において受け手がメディアの発信する情報をそのまま受け止めると、さまざまな問題が生じてしまいます」

メディアのしくみと表現方法には

制約があることを知ろう

メディアの情報を鵜呑みにすると問題があると話してくれたが、メディアはどんな問題を生み出しやすいのだろうか? その特徴から考えてみよう。

「例えばテレビの場合、NHKは受信料をもとにした公共放送ですが、民放はスポンサーによる広告放送で、CMが流れることが大前提です。CMは購買意欲を喚起するためのものですが、そのまま受け取ると無計画にお金を使ってしまうことになります。また、広告主にとって折り合いが悪い情報は伝わってこない可能性もあるでしょう」

テレビだけではなく新聞や雑誌、インターネットにも広告は利用されているから、同じように配慮が欠かせない。それだけでなく、メディアでなされる表現方法についても注意が必要だと藤川さんは解説する。

「ドラマにしてもバラエティにしても、ストーリーや笑いをわかりやすく伝えようとすると、紋切型の表現になりがちです。例えば、学園ドラマの校長先生はいばった人、教頭先生は意地悪な人というのを見かけます。脇役に個性を出してしまうと話がややこしくなるので、ステレオタイプな表現を使っているわけです。しかし、そのまま受け取ってしまうと職業についての偏見が生まれます。ほかにも、男らしさや女らしさが極端に描かれたり、LGBTなど性的少数者に対する差別的な表現も見受けられたりします。アニメでいまだに専業主婦家庭が多いことや、女性は痩せていなければならないと煽る風潮も気になりますね」

送り手側の意識づけとメディアをネタにした会話が

高いメディアリテラシーを育てる

では、メディアリテラシーを身につけるためには、どのような心構えが必要なのだろう。藤川さんは、そのポイントを「メディアには送り手がいるという意識を持たせること」だと語る。

「まずはそれぞれのメディアが、どんな商業的なしくみで成り立っているのかを話し合ってみてください。そうすることで、CMで見た商品を何でもかんでもほしがってはいけない、とわかるはずです。さらに、テレビを観ている時になぜその演出なのか、新聞を読んでなぜその見出しなのかを考えるようになれるといいですね。英語で“クリティカル・シンキング”といいますが、漫然と受け取るのではなく、メディアに対して立ち止まって考えることが必要です」

メディアリテラシーの高い子どもを育てるには、一緒にメディアに接触する時がチャンスだとも藤川さんはアドバイス。

「『このドラマのお母さんは、仕事から帰ったら当たり前のようにごはんを作っているけど、これってどう思う?』など、メディアをネタにして会話ができると、いろいろな観点から物事を捉えられるようになります。また、一緒にメディア接触している時に性的少数者を見て『気持ち悪い』、ハーフのタレントを見て『日本人らしくない』と親が差別的な発言をすると、子どもにも強く影響してしまうので、注意してほしいですね」

メディアを視聴する立場の時、私たちは受け身の存在となる。しかし、受け身だからといって、何も考えずに接触するのではなく、それをヒントにして考える態度を子どもたちには教えていきたい。

■藤川大祐氏
千葉大学教育学部教授/1965年、東京生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学(教育学修士)。金城学院大学助教授などを経て、2001年より千葉大学勤務。2010年より千葉大学教授。メディアリテラシー、ディベート、環境、数学、アーティストとの連携授業、企業との連携授業など、さまざまな分野の新しい授業作りに取り組む。学級経営やいじめに関しても研究している。近著にAKB48と考える『実践! スマホ修行』(学事出版)がある。

文=岡本 のぞみ(verb)
撮影=片桐 圭