教育現場に取り入れられつつある“ICT” 現代の子どもたちは、どう育っていくのか

特集「子どもとデジタル」第4回

  • ICT活用の狙いは“21世紀型スキル”の育成
  • デジタル教材の普通教室での常設割合は約2割
  • ICTによって子どもの隠れた能力が評価される可能性も

文部科学省が2020~2022年度にかけて、小中高校の学校教育の基準となる「学習指導要領」を改訂する方針を発表した。ディスカッションやプレゼンテーションを取り入れて主体的かつ対話的な深い学びを目指す方針で、デジタル教材やプログラミング教育も導入されることになる。

新たな学習法の効果を実証するため、先行導入している学校も出てきているが、そもそも日本はなぜ今、教育現場でのICT(情報通信技術)活用に力を入れ始めたのだろうか。ベネッセ教育総合研究所の土屋利恵子さんに、その理由を聞いた。

ICTの活用によってこれからの社会で求められる能力が形成される

「文科省が2011年4月に取りまとめた『教育の情報化ビジョン』では、“ICTの活用によって教育の質を向上するとともに、21世紀を生きる子どもたちに求められる力を育む”とあります」(土屋さん、以下同)

21世紀を生きる子どもたちに求められる力とは、生活を営む上で活用できるレベルの「知識・技能」、想定外の問題にも対応できる「思考力・判断力・表現力」、学びを社会との関わりに生かす「態度・価値観」の3本柱から成る総合的な能力のこと。しかし、なぜICTの活用が、これらの能力につながるのだろうか。

「デジタルメディアの『オープン』『パーソナル』『シェア』『フレキシブル』という性質が作用すると考えられています」

例えば、インターネットを通じていつでもどこでも知識を得られる『オープン』な性質や、履歴を記録し個々に応じた学習を展開できる『パーソナル』な性質によって、知識の深化や主体性の育成を目指せる。映像やARで作られた教材を見たり、プログラミングで表現したりできる『フレキシブル』な側面からは、新たなものを創造する思考力を養うことができ、友達との意見交換やアイデアの提案を瞬間的に行える『シェア』という特徴は、人とのコラボレーション力や表現力の形成につながるというわけだ。

「学校の授業に取り入れられようとしているプログラミングは、21世紀型スキル形成の手段といえると思います。コンピューターの動かし方を知ることは、物事の解決に向けた手順の踏み方を学ぶことでもある。また、ゼロからものを生み出すことで目標実現のための論理的思考が形成され、判断力や表現力につながるといわれています」

ICTやプログラミングと聞くと、コンピューターを操る技術を学ぶものと思ってしまうが、実際は社会に出て必要とされる全般的な能力の形成を目指しているのだ。今の学生たちが社会に出る頃は、AIなどの技術の発達により仕事の質も変わり、より主体性や発想力が必要になると予想されるため、教育改革といえる動きが進んでいるのだろう。

「デジタル機器をどう教育に活用するか?」が今後の課題

しかし、実際の教育現場では、まだまだデジタル環境の配備は進んでいないようだ。2016年3月時点で、全国の学校のPC導入率は生徒6.2人に1台。普通教室に無線LANが整備されている学校は26.1%、普通教室に電子黒板がある学校は21.9%。学校や自治体によって差はあるものの、まだまだ発展途上といえる。「ただし、機器を導入するだけでは意味がない」と土屋さんは話す。

「デジタル教材は使い方が重要。どのような教育を行うためにどの機器を取り入れどう使うかが、教育現場の課題になっていくと思います。課題解決のためには事例を作っていく必要があります。実証授業の中で子どもに見られた変化や成長を、授業内容や使用教材と合わせて提示することで、自治体や学校、教員の方々の判断材料になります」

プログラミング授業では子どもも5分前に席に着く!

ベネッセ教育総合研究所でも研究授業を学校と共同で行っているそうだが、受講した子どもたちの反応を聞くと、「夢中になって取り組む子がほとんど」とのこと。

「以前、1人1台タブレットを用いて、自分の夢をプログラミングを用いてアニメーションにするという授業を行ったのですが、生徒たちが授業の5分前には席に着いていたり、学校を休みがちだった生徒がプログラミングの授業には出るようになったりと、高い参加意欲を感じました。思い描いたものを実現したことで、『コンピューターは調べるだけではなく表現するもの』という意識も身についたようです」

また、ICTの活用によって子どもが考えをアウトプットしやすくなり、教員も生徒1人ひとりの習熟度や思考の過程を見やすくなったことで、これまで埋もれていた子どもたちの能力が発見されるようになったという。結果だけでなくプロセスが評価されやすくなったのだ。

「今後は教員と同じように、親も子どもがどんな学びを行ったか、どう取り組んだのかが見えるようになります。その中から子どもが興味を持っていることが見えてくるかもしれないので、親も子どもの成長や夢をフォローしやすくなるでしょう」

2020年に向けて、速度を増していくであろう教育現場でのICT活用。その根底には、子どもたちの能力を引き出し、可能性を広げていきたいという思いがあるといえる。


(執筆:有竹 亮介(verb))