タブレット端末や電子黒板…「デジタル教材」が子どもの教育にもたらすメリット

特集「子どもとデジタル」第5回

  • 教育現場のICTの役割は「教材の提示」と「個々の学習」
  • ICTツールを使いこなすことが子どもの“問題解決力”を育む
  • デジタル機器導入の課題は「使いやすくすること」

デジタル機器を通じて教材を視覚的に提示

子どもの視点を明確にし学習理解を深める

画像提供:富士ソフト

ここ数年、学校の授業にタブレット端末や電子黒板など、デジタル機器を導入する動きが少しずつではあるが見られるようになった。学校教育の基準となる「学習指導要領」を2020年度から改訂することが文部科学省から発表され、小中高等学校への「アクティブ・ラーニング」導入などの大きな変革と、それを実現するためのICTを活用した学習環境の整備が必要不可欠であるとされている。そのため、デジタル機器の導入はさらに加速するともいわれている。

実際に教育現場で活用されているデジタル機器とは、どのようなものがあるのだろうか。総合教育ソリューション「みらいスクールステーション」を展開している富士ソフトのみらいスクール事業部・砂岡克也さんに、学校のICT活用事情について聞いた。

「学校の教室で扱われているデジタル機器は、大きく2つに分けられます。1つは、教員が児童や生徒に教材を提示するための装置。例えば電子黒板や大型ディスプレイ、書画カメラ(実物投影機)などが挙げられます。もう1つは、生徒が学習するための端末。ノートPCやタブレット端末です。家庭で購入した端末を活用する『BYOD』を導入している私立中学や高校も増えていますよ」(砂岡さん、以下同)

画像提供:富士ソフト

電子黒板や大型ディスプレイには、文章や図版、動画、音声などの教材を投影できる。そして、テレビのように使うだけでなく、タッチパネル式で書き込みできるものも多い。生徒の端末では、生徒自身がインターネットで調べた情報や端末で撮った写真を使い、自分なりに表現できる。また、教員の端末から生徒の端末に学習課題が配布でき、生徒の思考プロセスや解答を教員がリアルタイムで確認し、生徒の解答例を電子黒板に映し出して解説に活用するという使い方ができる。

富士ソフトがリリースしている「メディアボックス」は、校内のサーバーに蓄積してある教材を教室の電子黒板や大型ディスプレイに映し出せる。リモコンで操作できるため、ICT機器が苦手でもすぐに使い始められ、タブレット端末と連携することも可能だ。また、廊下や食堂など教室以外に設置されたディスプレイを電子掲示板として利用し、平常時の連絡事項や災害時の緊急情報を配信することで、校内放送がイメージとして伝わりやすくなる。授業以外にも毎日の学校運営に役立つ機能が備わっているのだ。

デジタル機器の活用が“問題を解決する能力”を養う

教育現場へのデジタル機器の本格導入はこれからといえるが、ICTを活用することによって、どのようなメリットがあるのだろうか。

「例えば、広尾学園高校の医進・サイエンスコースでは、生徒が新規性のある論文を書くことを最終目標に設定していて、タブレットで過去の論文を検索しながら独自の研究に取り組み、成果をまとめるそうです。子どもたちは端末を使って、インターネットなどで情報を調べて分析し、さまざまなツールを使って創作や表現を行うことで、自ら計画して実行に移す術を学んでいきます。それが正解のない問題に取り組み、自分なりの解決策を引き出す能力を養うこととなり、AIやIoTが当たり前のように存在する社会で生き抜いていける人材を育む助けになると考えられます」

学習支援のツールというだけではなく、これからの時代を生きる子どもの問題解決能力を育むために必要なものといえるわけだ。大学入試も、入試科目への「情報」の追加や2020年以降のコンピューターによる受験が検討されていることもあり、日常的にコンピューターに触れることも重要になってくるという。

「デジタル機器の導入は、子どもたち個々の学習の進み具合が把握しやすくなるなど、多忙を極める教員の方々の負担軽減につながるべきだと考えています。一方で、各自治体での導入がまだ進んでいない現状があります。デジタル教材の準備、ノートPCや電子黒板といったデジタル機器の接続、児童や生徒への端末の配布など、授業前の準備に手間がかかることや、デジタル機器の不具合への対応の不安感が、教員の方々への重荷になるケースも少なくありません」

より手軽に使えるデジタル教育機器を開発中

全国の公立学校でのタブレット端末の利用状況は、導入が進んでいるところでも1学校につき1教室分(20~40台)、または教室で5~6人のグループに1台程度。また、導入したもののうまく活用できず、しまったままという学校も少なくないという。改善していく方法はあるのだろうか。

「まずは教員がデジタル機器に触れて、慣れていくことです。使えなければ、生徒に指導はできませんよね。また、我々メーカーとしては、より簡単に使える機器を開発することも急務だと考えています。例えば、教材をディスプレイや電子黒板に提示する場合、いつでも教室に設置されていてスイッチを入れれば使える状態にしてあり、教材も教員が事前に作らずとも簡単に取り出せる設定であれば、授業準備の負担が軽減されます。より多くの時間を生徒たちと向き合うことに割けるのです。これらの課題を乗り越えられれば、ICTの活用はますます進んでいくと思います」

教育現場でのデジタル機器の本格導入はまさにこれから。数年後には当然のようにデジタル機器で授業を展開する時代がくることだろう。いずれ子どもたちが社会に出てくることを考えると、今の流れは大人たちも知っておくべきかもしれない。


(執筆:有竹 亮介(verb))