2020年に小学校で必修化「プログラミング教育」が起こす学びの革命

特集「子どもとデジタル」第8回

  • 1年生は絵本などアンプラグドやビジュアル言語でプログラミングを理解
  • 3年生はプログラミングを算数にも応用
  • プログラミング授業は学びを変えるきっかけになる

2020年以降、小学校でプログラミング教育が必修化される。今後、情報化社会の高度化がますます進み、コンピューターがその基盤となってくるからだ。そこで、いち早くプログラミングをその授業として取り入れている東京都小金井市立前原小学校の1年生と3年生の授業を見学させてもらい、松田孝校長にそのねらいを聞いた。

1年生は、絵本から授業をスタート

まずは直感的にプログラミングを理解する

前原小学校では、昨年4月からプログラミング授業を導入している。しかも驚くことに、全学年で取り組んでいる。“プログラミング”と聞くと、コンピューターに難解なコードを打ち込むというイメージから、「小学1年生にできるの?」という疑問が浮かぶ。しかし、前原小学校ではプログラミングの考え方を理解するところから段階的に学んでいくという。

まず、1学期は『ルビィのぼうけん』という絵本を使って、「どう計画を立て、どう進めるか?」というプログラマー的な考え方を身につける。次に「PETS(ペッツ)」という電車型のロボットを使って、命令通りに動かす方法を学ぶ。最後に、1人1台のタブレット端末を活用して、「Viscuit(ビスケット)」というプログラミング言語で、自分がモニターに描いた絵を動かしてみる。テキストを打ち込むことなく、直感的にプログラミングの楽しさを知ることから学習が始まるのだ。

この日、1年生の教室で行われていたのは、Viscuitを使った授業。担任教師が大型ディスプレイで、卵が割れてひよこになるアニメーションの作り方を解説した。授業では、教師と同じ方法を実践するだけでなく、いろいろな方法を考えるのも自由。例えば、爆弾が爆発して花火になるというようなアニメーションを組んでもいい。

しばらくすると、卵を産んだ後、にわとりが消えるアニメーションを考えた子どもがいた。大型ディスプレイでその様子が紹介されると、「すごい」という声があがると同時に、教師はどうしたら作れるかを生徒にタブレット端末で試させる。5分も経つと、教室のほとんどの子どもたちができるようになっていた。

40分の授業の間、子どもたちはプログラミングの世界に没頭。夢中になって自分なりのプログラムを作ろうとしている姿が印象的だった。

3年生はコンピューターを使い

かけ算の概念をプログラミングで理解

3年生ではさらにレベルアップして、教育用コンピューター「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」とプログラミング言語「Scratch(スクラッチ)」を使った授業が行われる。この日の課題は、「139×14」のかけ算を面積図で説明すること。面積図に見立てるのは、立方体ブロックゲームの「Minecraft(マインクラフト)」。Raspberry Pi だけでなく、PlayStationやWii Uでもリリースされている子どもに人気のブロックゲームのため、子どもたちの興味を引きつけながら、数の性質が理解できる。

プログラムを入力し、ブロックが一気に立ち上がる様子を見ると、子どもたちから歓声が。自分の出した指示がすぐに形になることがおもしろいようだ。授業の後に感想を聞くと、「難しいけど楽しい」という声が多かった。「将来、コンピューターを使って仕事してみたい?」と聞くと「してみたい!」という声が重なり、プログラミングに抵抗を持つ子どもはいないという印象だった。

パソコンに向かった瞬間“主体的”に

プログラミング教育には学びの本質が詰まっている

前原小学校にプログラミング授業の導入を決めたのは、校長の松田孝先生。前任である多摩市の小学校長時代に、プログラミング教育のワークショップに参加したのがきっかけだったという。

「そのワークショップでの子どもたちの様子が衝撃的で、『なんでこんなに一生懸命なんだ』と驚きました。授業を行ってみてその理由がわかったのですが、1人1台のパソコンに向かった瞬間に、情報端末の持つ『assistive(支援)』や『adaptive(適応)』という機能が、子どもたちを主体的にします。先生から一方的に教えられていたものがそうではなくなって、自分の行いに対して即座にレスポンスが返ってくる楽しさがある。ただやらされる勉強ではなく、プログラミング授業には学びの本質があると思いました」

実際に子どもたちからの評判はすこぶるよく、授業の集中力も非常に高い。プログラミング授業の中では、子どもたちが褒め合うことはあっても貶すことはなく、「困った人に教えよう」というコミュニケーションもできあがっているという。しかし、松田校長の挑戦はまだまだこれから。

「来年の授業では、さらなる習熟を目指しています。国語や算数にもプログラミング授業の取り組みを活用したいですし、図工に3Dプリンター、屋上菜園にIoTを取り入れ、プログラミングが生活に密着していることを子どもたちに体験させていければと思っています」

情報化社会の高度化に合わせて導入されようとしているプログラミング教育。そこには、日本の学びを変えるきっかけとなる要素が詰まっているのかもしれない。

文=岡本のぞみ(verb)
撮影=片桐圭