知らないですまない「暴力団」。カジノに誘い込む手口など

【実は身近な物語】暴力団のエキスパートに聞く「ヤクザと関わらないために気をつけるべきこと」

カテゴリ:国内

  • 暴力団に関わらないためには「君子危うきに近寄らず」
  • 任侠山口組と神戸山口組の大きな抗争はしばらく起きないのでは
  • 暴力団の貧窮で、アングラ化、組織の変化が起こるかもしれない

『暴力団』と聞くと、身近な存在とは思えないかもしれない。

しかし、振り込め詐欺や、恐喝、闇金融、賭博、違法薬物の売買、みかじめ料の徴収など、暴力団が関わる犯罪で、一歩間違えれば私たちが被害を受ける可能性があるものは、そこら中に転がっている。

さらに、一般人に影響が出るものとして、“抗争”がある。

古くは、一般人や警察官に負傷者が出た山一抗争。2007年には、佐賀県で、一般人を対立組織の組員と勘違いして拳銃で殺害した事件など、一般人に被害が出た事件は実際に起きている。

2015年8月、日本最大の指定暴力団六代目山口組が分裂し、神戸山口組が結成、さらにはその神戸山口組が2017年4月に2つに分裂し、任侠団体山口組(以下、任侠山口組)が結成され、対立状態が続いている。

ぶつかり合いは今も起きているが、今後大きな抗争となり得る可能性はあるのだろうか?
私たちに影響は出るのだろうか?
私たちが気をつけるべきこととは?

「裏社会」を長く取材し、去年、任侠山口組の織田絆誠(金禎紀)代表に取材をして、『山口組三国志ー織田絆誠という男』を執筆したジャーナリストの溝口敦さんに話を聞いた。

溝口敦氏

「君子危うきに近寄らず」が一番大切

ーー暴力団が関わるものといえば、スポーツ界や芸能界で裏カジノが問題になりました。昔に比べれば増えているんですか?

幾分か増えているんじゃないかと思います。
やはり自由になる金がたんまり入ったというような時に、使い道を探す、それで裏カジノに行くっていうような気持ちの人がいるわけです。
スポーツ選手だったり、株や、FX、ビットコインなどで儲かった人が、使いたいという欲求を持つ。そういう人に裏カジノはもってこいで、30分で1000万円を溶かすなんていうのは簡単にできちゃうんです。
しかもおしゃれな雰囲気ですよ。お酒も飲み放題、食べ物は食い放題。従業員にモデル級を揃えている。そういうような人間が傅いてくれて、気持ちよくできる、そういう所なんですね。

ーー裏カジノに行くような間口も広くなったんでしょうか?

多いのは、高級クラブとかキャバクラのホステスが金を持ってそうな客に声をかける。「わたしカジノって行ったことないの、一緒に行ってくれる?」って。
それで女の子は、「太い客連れてこいよ、その野郎の負けた分の1割をバックするからよ」って言われているわけですよ。
客はカジノに行って、人の勝負を黙って見てるわけにもいかない。それで自分も勝負をすると負けるに決まってるんです、そういうことになってる。すると女の子も儲かる、そういう仕掛けになってるんですよ。
フリーな客は入れないというか、寄せ付けないですが、そういう形での紹介で、お金を持っている人は誘惑にさらされる機会が多いわけですよね。

ーー私たちはどうすればヤクザに関わらずに安全な生活を送れますか?

暴力団員の数も少なくなってきたから、それほど出会わずに済むと思うんですよ。やはりトラブルを起こさなければ、暴力団に関わらずに済む。
例えば新宿歌舞伎町で、客引きの言葉にのって、ぼったくられたと。そこでじっと我慢してれば、トラブルにならない。払える能力があるなら払うと。
そもそも客引きの言葉には乗らなければ、それほど暴力団とは合わないはずです。
また、覚醒剤にいたずら心に手を伸ばすということをしなければ、そういう人間と知り合わずに済む。そういうことだと思うんですよ。

やる人はついつい気まぐれで手を出すんでしょうけども、そういうことをせずに、おとなしくしていれば、それほど関わる機会も無いと思います。

任侠山口組が話す分裂の理由

任侠山口組は、2017年4月、結成の際に記者会見をおこない、分裂の理由を次のように話した。

まず名古屋(六代目山口組)方式を否定して立ち上がった神戸山口組であります。その名古屋方式の悪政は数々あれど、大きく分けると、
第一に金銭の吸い上げ、
第二に当代の出身母体のひいき、
第三に当代が進言・諫言を一切聞かない、
これでは山口組が自滅の道をたどると、真っ向から否定して立ち上がったにも関わらず、神戸山口組の現実はその名古屋方式にも劣るそれ以下の悪政でした。
(『山口組三国志ー織田絆誠という男』より)

そして織田代表は、神戸山口組の悪政に苦しむ同志、そして山口組の将来のために立ち上がり、任侠山口組を結成したという。

ーー神戸山口組のやり方は、六代目山口組のやり方と変わらなかったんですか?

そうですね。(神戸山口組の)井上組長は、物による交際、気遣い心配りによるプレゼント攻勢というのが、割と得意な人のようです。そのためにお金もかかるのではないかと思うんですけど、山健組の直参から月70万円とか80万円というお金を集めていくというのは、ちょっと取りすぎなんじゃないかという声もあります。その他に登録料という山健組独自の、組員一人当たり月々1万円徴収するというものがありますからね。

しばらくは大きい抗争は起きない?


ーー任侠山口組の織田代表に直接インタビューをしてどんな印象を持ちましたか?

織田さんは割と生真面目な人ですね。インチキはやらないような人です。

ーー山口組三代目田岡組長の時代は正業が許されていた時代でした。織田氏は今の時代の中で、組員の生活をどう考えているのでしょうか?

正業につかせるというよりも、「暴力団、ヤクザ自体が、それぞれ好き勝手にシノギ(収入を得るための手段)を見つける、そういう商売である」ということは言っていました。
私が「今の時代果たして正業というのはできるのか」と疑問を呈したら、「そのためにも、反社会的勢力であることから出なきゃいけない」ということを言ってましたね。

ーー暴対法がある現状では難しいのではと思いますが?

警視庁のある幹部に話を聞いたところ、やはり「反社会的勢力の範疇から抜け出すのは難しいだろう」ということは言ってましたね。

ーーインタビューで織田代表は、最終的に3つに割れてしまっている山口組を1つに戻したいと話していましたが、実際のところどうなんでしょうか?

当人はそれを思っているような気がしますね。
私は、戻れないだろうなと、条件のすり合わせができないんじゃないだろうかと思っているんです。要するに統合した時に、月の会費は一体いくらにするのかと。
任侠山口組は月10万円としています。一方、月70万円、80万円っていうのが六代目山口組ですよね。再統合した場合、それをどうすり合わせるのということになりますよね。任侠山口組にいる若い人は月10万円のところを月70万円にしたら、払いきれないでしょう。

それよりも、並立という道があるのでは、と僕は思います。並立というのは、例えば九州の道仁会と浪川睦会、あそこは抗争の果てに並立常態になりましたよね。
それから松葉会と関東関根組も2つに別れたじゃないですか、あそこも今並立状態になっています。だから並立っていうのはあり得ない状態ではないんですよね。

織田氏自身は「組員に我々任侠山口組という船は、どこに向かっているのか目標を示さなければならない。そのための1つになるという目標であり、そしてそのためには任侠山口組がある程度大きくならないといけない。そういう目標を組員たちに持ってもらう」と話しています。しかしながら、戻るためには先ほど言ったように条件のすり合わせが、物凄く難しい部分が出てきそうです。

また、任侠山口組の方は組長を持ってないんですよね。織田氏は代表であり、盃事をしていない。そうすると「じゃあ統合に伴って盃直しをするのか?」ということになりますよね。これも難しいところかもしれません。


ーー2017年9月、織田代表が神戸山口組組員に襲撃をされ、警護役だった組員が殺害されましたが、返し(報復)をしていません。今後大きな抗争は起こり得るんでしょうか?

警察の取り締まり体制、そして法律が問題になってくると思います。
暴力団対策法によれば、組長の使用者責任ということが考えられます。また民法でも組長の使用者責任があるという判例が出ています。そして組織犯罪処罰法により、組織的殺人ということで実行犯が捕まれば、指揮命令系統というのは半ば自動的に辿られて、組織のトップが逮捕される、そういうような状況になっていますよね。

そういう中で返しをするというのは、非常に危険を伴うわけです。
せっかく自分のところが攻撃されたという、ある点で優位点に立っていたわけですが、返しをすることで五分五分にしてしまう。その攻撃の作用反作用、これは非常に大きいものがあるわけです。

そういう意味で、報復は任侠山口組は当分考えてないんじゃないかと思います。そして、逆に神戸山口組の方が、任侠をこのままにしておくと、結局組織の存亡に影響するというか、そうでなくても組織が相当ガタがきていますよね。

だから結論的にいうならば、任侠は報復ということを、焦ってもいない、静観している、というところじゃないかなと思いますよ。

暴力団の資金源にはかばかしいものはない

ーー暴力団のシノギとしては今どんなものがあるんでしょうか?

はかばかしいものがないというのが現実です。
一番確実に稼いでいるのは覚醒剤ですよね。力のあるところ、資金力のあるところ、スポンサーがいるところは、裏カジノをやっています。そこそこ繁盛していると言っていいでしょう。
博打関係でいうと裏カジノと、ネットカジノ。
野球賭博やノミ屋などは、もうみんなダメです。

ーーもう古くなってしまっているということですか?

そうですね。
賭け客だってヤクザをバカにして、負けたら賭け金を払わないですよね。金貸しもダメ。人夫出しという人材派遣業、堅気の商売もあるけれど解体業は、大したことはないですがいいかもしれません。下請け関係はダメでしょうね。
管理売春は自前で売春する人が増えて、ほとんどヤクザの出番はない。
伝統的シノギと警察が呼んでいるものは、博打・管理売春・覚醒剤なんですけど、その中で生き残っているのは覚醒剤だけです。

ーー振り込め詐欺などは暴力団よりかは、半グレのシノギになってしまっているんでしょうか?

そうですね。元々振り込め詐欺は半グレが最初の頃に手をつけたことであって、それを今暴力団が勉強したり、ねだったり、あるいはそういう半グレの若い者を組員に引き入れたりということをしています。
そういう新しいシノギを考え出すのは半グレで、暴力団が後から参加するという一連のパターンがあります。今はもう終焉していますが、危険ドラッグでも同じパターンでした。
そして金塊の密輸もそうでした。金塊の密輸も、もう終わりでしょうね。
一部暴力団は危険ドラッグにも金塊密輸にも乗り出しているけれども、後発組ですよね。

ーー儲けられるのは先発組ですもんね。

そうですね。
そして金塊密輸の後何があるかというと、半グレたちも今新しいシノギを見つけ出せていない状態です。
一部の金のある暴力団は、例えば中国に10億円の単位の資金を投入して、パソコンを揃え冷却装置を揃え、ビットコインのマイニング工場をやっています。マイニングは違法でもなんでもないし、率がいいということは今言われていますよ。
金のある人間はそういうことやっているんですけどね…

貧窮する暴力団で、一般人に被害も?

ーー暴力団が衰退すると、半グレや外国人などの犯罪が増えていくとも言われています。

任侠山口組は、「我々が半グレを善導し、日本の町から外国人不良集団を駆逐する」ということを言っています。果たしてそれが成功するのか、そして今そういう必要性があるのか、ということはまだ疑問ですが。
警察筋の見方としては、「半グレの善導という時に、そこに暴力が伴わないのか。暴力が伴ったら私たちが黙っているわけにはいかない」というところです。まあそれは当たり前と言えば当たり前の話ですけどね。
そもそも半グレは善導したところで、果たして言うことを聞くような連中かどうか。

ーー今のこの厳しい暴対法の締め付けで、暴力団自体もアングラ化しているという意見もあり、ある組では3分の2近くは組員登録してないという話も聞きました。

それはその通りだと思います。
山口組系傘下の組でもそれは進んでいます。山健組では登録料という悪名高いシステムがあったので、なおさら登録せず、ヤクザの戸籍に入れないという措置が、従前から行われていたんです。だから、隠れ山健組組員っていうのは結構多かったわけですよ。

ーー貧窮していく暴力団によって、一般人に影響が出そうなことはありますか?

それはあるでしょうね。というのは、彼らの本能・習性で、自分より弱いものを喰うというところがあります。
例えば自分が博打に負けて、1000万円いついつまでに返さないといけない、と追い込みをかけられている。こういう時に半狂乱になって、「1000万の負債を負っている俺に比べて、堅気のだれそれはのんびりやっていると。これは俺と同じ苦痛を味わうべきなんだ」という風に考える人もいるわけです。
ですから、窮乏化すればするほど、喰う相手を探すことになり、警察は自分より強いから警察を喰うわけにはいかない。そうすると一般人だと、というようなことになるんですね。

ーー今後暴力団はどうなるんでしょうか?

暴対法は、暴対法に基づく指定暴力団の“指定”のために条件を儲けています。
それは血族的関係、要するに親分のいうことを子分が聞く関係、そういう階級関係がなければならないとか、主要構成メンバーの暴力団特有の犯罪歴や、そのパーセンテージはどうだとか、規定があるわけです。

その中に暗に含んでいるのが、親分子分の盃ですよね。親分子分の盃があって初めて血族関係、擬制血縁関係、それに基づいて伝統的な暴力団が出来上がるという定義をしています。

任侠山口組は図らずも、親子盃をせず、組長をつくらず、織田氏は代表であるのみ、そして幹部の役職も組織対策部長などごく少数となっている。織田氏は「意図してそういうことをしたんじゃない」というようなことを言っていましたが、任侠山口組は図らずも暴対法に非常に指定しづらい要素を持っているんですよね。

このことからもさきほどの再統合が難しいということが言えるんですが、このことにより、暴対法が形骸化する危険もあるわけです。
どの組織もこの方式をやると、暴対法の指定暴力団の定義づけが不可能になっていく、陳腐化してしまうということになっていくわけですね。暴対法が形骸化する、そういう危険は今すぐにどうこうじゃないですが、将来的にあります。

山口組三国志 織田絆誠という男


(執筆: editors room)