人身事故の危機。男性を救った勇敢な女優

元「関鉄レールメイト」で女優の池上恵さんに話を聞いた

カテゴリ:国内

  • 身近で恐怖を覚えたことが、最初のきっかけ
  • テレビのニュースや本を見ていたことが冷静な対応に繋がった
  • ほんの少しでも、周りのことを気にしてみることが大切

走って駆け寄り非常停止ボタンを…

200メートル先には電車が見え、目の前には踏切に閉じ込められてしまった人がいる。
そんな危機的な状況に出くわした時、あなたはどのように行動するだろうか。

一切の迷いも無く、走って駆け寄ったのは1人の女性だった。
勇敢な彼女の名前は、池上恵さん。今は女優として活動しているが、以前は「関鉄レールメイト」という関鉄(関東鉄道)の”PRレディー”を務めていた。

12月7日、池上さんが、茨城県を走る関東鉄道常総線の駅まで歩いている時のことだった。
池上さんの前方に、自転車に跨って歩くおじいさんがいた。
おじいさんが踏切内に入ったその時、警報音が鳴り、遮断機が下りてしまった。

池上さんは危険を感じ、走って駆け寄り非常停止ボタンを押した。
そして、遮断機を持ち上げ、おじいさんは無事に外に出ることができた。

勇気ある行動をとった池上さんに、話を聞いた。

池上恵さん

レールメイトだからじゃない。1人の人間としての行動

――おじいさんはどんな様子だったのですか?

線路の真ん中で止まったまま、向かってくる気動車を見つめていました。その時は200メートルほど先に気動車が見えていました。
おじいさんが立ち止まってしまった時はとても驚きましたが、怖がっている様子も、身投げという雰囲気もありませんでした。
一切表情を変えずに、気動車が来るのをただ漠然と見ている感じでした。
無事に外に出られた後、おじいさんは関東鉄道の方とお話しされていましたが、その最中も表情はずっと同じでした。

――池上さんは咄嗟に動いたんですか?恐怖や迷いはありましたか?

全くありませんでした。焦るということも無く、おじいさんに声かけよう、非常停止ボタンを押そう、という感じでした。

――非常停止ボタンはどこにあるのでしょうか?

踏切によって異なるかもしれません。
ネット上に寄せられたコメントの中に、「私の近所の踏切にある非常停止ボタンは手の届かないところにあります」と書かれていました。それだと意味がないので、急いで変えたほうがいいんじゃないかなと思います。
コメントを見ただけなので、どこの地域のどの踏切かは不明です。

――池上さんが所属していた「関鉄レールメイト」とは、どのような活動をするのでしょうか?

騰波ノ江駅という駅舎がありまして、毎月そこで、「とばのえステーション」という交流の場を設けています。
その際、駅の中のスペースで、皆さまと情報交換やご案内などのアテンダントを担うのが主な活動です。
廃線になったレールの上を、漕ぐことができるトロッコに乗って走っていただいたりするイベントもあります。
また、イベントの中で事故防止の呼びかけをしています。その際、「事故無し」と「梨」をかけて、地元の農家さんが提供してくださった梨を、ご来駅していただいた方にお配りしています。

――もともと鉄道に興味があったんですか?

応募の前に、鬼怒川の決壊があって、常総線もしばらく使えなくなりました。
その地域に住んでいる友人から「冠水しちゃって仕事に行けない」「幼稚園が冠水して娘の幼稚園が変わってしまう」というような状況を聞いていました。

東北の震災でも、私の友人がご家族を亡くしていて、まだ見つかっていないんです。そのようなことが立て続けにありました。
ニュースで目にして、あぁ大変だなって思ったり、自分には起きないことと思っている人もいるかもしれません。ですが、私は身近で恐怖感を覚えたと同時に、何かできたらいいなと思いました。それが1番のきっかけです。

――レールメイトでなくても、同じ行動でしたよね?

はい。もちろんです。あの時はレールメイトとしてではなく、1人の人間としての対応だったので。

コミュニケーション不足が大きな事故を招くかも

――今回の件の他にも、困っている人を助けた経験はありますか?

階段から落ちた血だらけの人を発見したことがあります。
頭を打っている場合は、揺すったり動かすと危険なので、触らずに声をかけました。意識があることが確認できたので、119番に電話して伝えました。

あとは、友人が選挙活動を手伝っている最中に、脱水症状になった方がいたようで、その時119番ではなく、なぜか私に電話がかかって来たんです。
電話越しで、脱水症状時の応急処置を伝えながら、病院に行くようお願いしました。

――対処法や応急処置の知識はどこから得ているのでしょうか?

ニュースで流れている注意喚起がきっかけですね。そういう時はどうしたらいいんだろう、と考えたり、本で調べることもあります。
あとは、病院に行ったときに、対処法を教わったこともあります。そこから知識を得ました。

――事故をなくすために、世の中もっとこうなればいいのに!と思うことはありますか?

人と人とのふれあいが減ってくると、今回のような場に居合わせた際に、声をかけていいのかわからないなど戸惑ってしまうこともあると思います。
たとえ相手に迷惑だとしても、声をかけないと事故になることもありますので、人との交流やふれあいを大切にしてほしいと思います。

事故が減って、その分、事故を防ぐための工夫に時間をかけられる世の中になって欲しいです。

――この記事を読んでいる方々に伝えたいことはありますか?

近い将来、日本人の半分が高齢者になると言われているので、自分だけではどうしようもできないことも増えると思います。
困った時はお互い様というように、小さなことでも助け合ったり、少しでいいので、周りを注意して見る気持ちができてくれたら本当にいいなと思います。

そして、この記事に目を留めたことが、良いきっかけになってくれたら嬉しいです。


(執筆: editors room)