今後30年以内に発生する確率は70~80%と言われている南海トラフ地震。   
南海トラフ地震は大津波を伴う地震が特徴で、最悪の場合、死者は東日本大震災の約17倍に上る約32万3000人が想定されている。

5月10日午前8時48分、宮崎県で震度5弱を観測した地震は、震源が日向灘で、南海トラフ巨大地震で想定される震源域で発生したため、南海トラフ巨大地震の前兆かと心配した人も少なくなかったのではないだろうか。

震源の深さが25キロというのは、まさに大陸と海のプレートの境界で起きた地震で、気象庁の緊急会見では、今回の地震の規模を示すマグニチュードは6.3だったが、これがもしマグニチュード6.8以上であったならば、2017年11月から運用が始まった「南海トラフ地震臨時情報」が初めて発表され、巨大地震との関連を調査する事態になっていたという。

評価検討会の委員の一人は、地震発生の第一報を受けてヒヤリとしたという。
まさに紙一重の状況で、改めて南海トラフ巨大地震の切迫感が浮き彫りになったと言ってよい。

そんな南海トラフ地震が起こるメカニズムを説明する。

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日本列島が乗っている陸側のプレートを引きずり込むように海側のプレートが沈み込んでいる。 
その沈み込み始めのラインを南海トラフと言う 。 

2つのプレートの境界面には、強くくっつきあった「固着域」と呼ばれる部分があり、固着域周辺には地震の原動力になる「ひずみ」が溜まり続けている。
それが限界に達すると固着域が破壊され、陸側のプレートが跳ね上がり、強い揺れや津波を引き起こすのだ。

では、巨大地震の前兆の疑いがあるケースとはどのようなものなのか。

ケース①「半割れ」 

震源域の片側でマグニチュード8クラスの「半割れ」と呼ばれる地震が発生した場合、残りの領域でも巨大地震が発生する可能性が高まると考えられている。

ケース②「 一部割れ」  

震源域の一部でマグニチュード7クラスの一回り小さな「一部割れ」と呼ばれる地震が発生しても、巨大地震が発生する可能性がある。

ケース③「ゆっくりすべり」

また「ゆっくりすべり」と呼ばれる現象は、地震の揺れを伴わずにプレート境界がゆっくりすべり戻るもので、南海トラフの想定震源域内でも繰り返し発生していて、たまったひずみを少しずつ解放している。
しかし、この「ゆっくりすべり」が通常とは異なり、プレート同士の固着状態に変化を与える場所で発生すると固着域を一気に破壊する巨大地震を引き起こすと考えられていて、ひずみ計などで「ゆっくりすべり」の監視を続けている。

FNN
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