本当に必要な情報はどれ? 鋭く見極められる「クリアな脳」はこう作る

特集「あの人の『情報源』が知りたい」第5回

カテゴリ:話題

  • 雑念に振り回されている自分自身に、まず気づくことが大事
  • 姿勢を整え呼吸に意識を向け、自分を客観視する時間を作る
  • 自分と向き合うことで、焦りや不安といったノイズに振り回されにくくなる

スマホやタブレットで、どこにいても情報を検索でき、かつリアルタイムでコミュニケーションが取れる時代。“常にオンライン”という状態に安心感を感じる人もいるだろうが、そのことに気疲れをしてしまう人も多いだろう。便利だからこそ起こる“デジタル疲れ”に、人はどう向き合い、“デトックス”を行えばいいのだろうか。

話題のマインドフルネスは、デジタルデトックスにも有効な手段

「現代人の多くは脳が疲れてしまっているのではないでしょうか。情報に振り回されて絶えず考えごとをしています。それがさまざまな不安やストレスに繋がっているのだと思います。しかも、無意識に考えごとをしていることにすら気付かず生活している人が多いんですよね

葛 文世さん

こう教えてくれたのが、岩手県にある鷲連寺副住職の葛 文世さん。寺院を営む傍ら、マインドフルネスを世に広めている人だ。最近耳にしたことがある人も多いマインドフルネスというキーワード、ものごとに全霊を傾け、人のパフォーマンスを最大化するための、いわば“脳のトレーニング”のことだ。2000年代からアメリカを中心に広まった手法で、GoogleなどのIT企業も社員向けのプログラムに導入している。

ではマインドフルネスの観点で、どのようにデジタル情報、ひいては自身の思考と向き合うべきなのだろうか。

「スマホを使えば簡単にいくらでも情報は出てきますよね。それらが全部正しいものとは限らない。そこから自分に必要なものを選ぶのは頭を使うし、ネガティブなことやノイズも多い。

『こだわり』『人からどう思われたいか』『不安に陥る自分』を客観視するトレーニングをしていくことで、そこにとらわれる自分自身の思考から距離を置くことができる。『ものごとに一喜一憂してとらわれ過ぎる必要はないんだな』と感じられるはずです。その結果、デジタルの情報はもちろんのこと、日常のあらゆるノイズに振り回されることが減ると思います」

さて、そのための具体的な方法とは? 意外に思われるかもしれないが、“呼吸”を整えることなのだとか。

呼吸を整え、過去や未来のことではなく、「今」の感覚に意識を向けること

「床や椅子に座ってリラックスして、呼吸を整えましょう。それが基本です。最初は短い時間でも大丈夫です。意識を呼吸に向けて、いろんなところをさまよっている頭を、“今ここ”に集中させてあげるんです。呼吸をコントロールしようとしなくて構いません。自然な呼吸を自然のままに感じ、客観的に自分の身体の感覚にも意識を向けていきます。

途中で考えごとが浮かんできても、それに“気付く”だけでよく、思考に対して善し悪しのジャッジをする必要はありません。考えごとに気付いたらそれを追わず、また呼吸に意識を優しく戻していきます。その繰り返しです。それがせわしく動く脳の休息にもなりますし、普段無意識のなかでどんな思考をしているのか気付くことに繋がります。その気付きが、不安やストレスを解放していく第一歩になるんです。さらには、自律神経のバランスを整えることにも繋がっていきます」

「スマホを見続けることは、交感神経を高める行為なんですよね。自律神経は交感神経と副交感神経からなっていて、どちらかに偏り過ぎると自律神経のバランスが崩れてしまい、いろんな病気の原因にも繋がると言われています。呼吸を意識することは、自律神経にも働きかけることができるとされています。どんな瞑想も呼吸が大事だと言われますが、マインドフルネスも呼吸に意識を向けるのが基本なんです」

呼吸を整えるような時間を作るなんて、普段はなかなかないことだ。ただ、やってみる価値はあるという。

「忙しくてゆっくり時間を取るのは難しいかもしれませんが、自分のパフォーマンスを最大限に発揮するためには、ぜひ試してほしいと思います。どうしても忙しいなら、呼吸を整えてみるだけでも落ち着きを感じられるでしょう。現代の生活においてスマホを手放すわけにはいかないと思いますが、それは仕方のないこと。こうして呼吸を整え、自分を客観視していくことで、目まぐるしく移り変わるものごとに振り回されにくい柔軟さや落ち着きが身に付いていくと思います

言い換えれば、「自分の本質をかえりみる時間を作る」ということだ。

思考や悩み、焦りや不安は、すべて一過性のもの

「マインドフルネスには宗教性はありませんが、もともと禅をルーツにしています。我々の頭にはいろんな思考が浮かんでくるわけですが、浮かんでは消え、を繰り返す一過性の思考は、実態のないものなんですよね。ひいては仏教の教えである『諸行無常』、つまりすべてのものごとは絶えず移り変わるということがわかると思います

マインドフルネスとは、マインド(精神)がフル(満たされた)状態にあるということ。それは心の持ち方次第。オンラインであらゆる情報に繋がれる利便性をそう簡単に手放すことはできないし、情報そのものの質を変えることはできない。しかし情報に接する自分自身の“ものの見方”を変えることは、きっとできるはずだ。

葛 文世
1979念生まれ。駒澤大学仏教学部卒。2003年大本山永平寺に修行、岩手県鷲連寺副住職として壇務をしながら、お悩み相談サイト「hasunoha」回答僧としても活動。現在、坐禅やマインドフルネスを広めるべく、セミナーなどを積極的に開催している。https://kakurai.wixsite.com/kakurai-project