日本人の2人に1人がなると言われている、がん。
早期発見が重要だが、早期発見につながる可能性がある、新たな研究が進められている。

それが「少量の血液で14種類のがんの有無を判定できる検査システム」だ。
研究を進めているのは、ディー・エヌ・エー(DeNA)と人工知能開発のプリファード・ネットワークスが共同設立したPFDeNA。

去年10月、この検査システムの研究開発をスタートし、2021年を目標に実用化する計画を発表。
そして4月24日、実用化に向け、「専用ラボ」を開設したと発表した。
「専用ラボ」の開設によって、検査システムの開発をより加速させる狙いがあるのだという。

がんの早期発見につながる可能性がある画期的な検査システムだが、一体どのようにして、がんの有無を判定するのか?

DeNAの広報担当者に話を聞いた。

血液中に含まれる「ExRNA」を測定することで判定が可能に

――なぜ少量の血液で、14種類のがんを判定できるの?

この検査システムでは、血液中に含まれる「ExRNA」と呼ばれる物質の種類や量を分析します。
「ExRNA」は非常に多くの種類が存在し、さまざまながんに対して複雑に関係しています。

血液中に含まれる様々な「ExRNA」の量を一括に測定することで、14種類のがん、それぞれの判定が可能になります。

――どうやって検査するの?

人間ドックや検診機関などの医療機関で通常行われる、検診用採血の一部を用いることを想定しています。

専用ラボで血液を解析用に処理したのち、次世代シーケンサー(遺伝子を読み取る装置)によって「ExRNA」を計測した後、ディープラーニング(深層学習)によって作られた解析プログラムで、がんの有無と種類を判定します。

現在は研究段階ですので、国立がん研究センターにて、提供者の同意を得て研究用に収集された血液検体を使わせていただいています。

次世代シーケンサー
次世代シーケンサー
この記事の画像(3枚)

――対象となるがん14種類は?

胃がん、大腸がん、食道がん、膵臓(すいぞう)がん、肝臓がん、胆道がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん、前立腺がん、ぼうこうがん、腎がんです。


――ディープラーニングは検査のどのような点で活用される?

「ExRNA」は非常に多くの種類が存在し、様々ながんに対して複雑に関係しています。
それぞれのパターンを深層学習することで、がんの有無と種類の判定につなげます。

実用化に必要なことは…

――こうした検査システムの研究を進める理由は?

日本人の多くががんに罹患する時代で、個別化医療などにより、治療法は飛躍的に進化しています。

しかしながら、がんを早期に発見するための検査は費用負担が大きく、10~15万円程度かかります。
さらには、膵癌のように癌の種類によっては検診手法が確立されていないのが現実です。

このため、がんを症状が出ないうちから発見するためのがん検査の受診率は依然として低く、がんの早期発見は大きな社会的課題の一つになっています。

また、がんの種類により異なる検査方法で体の部位・臓器それぞれを検査する必要があるため、身体的な負担もあります。

より多くのがん種を一括で、かつ高い精度で検査できるように、さらにはより手軽にがんの検診を受けられる検査システムの開発に取り組んでいます。

――実用化の目標は2021年。実用化するために必要なことは?

医療機関での使用を目指すため、適切な精度を実現して、薬事承認を得ることが必要です。

一刻も早く実現してほしい、この検査システム。
気になるのは検査費用だが、担当者は「現在開発中であるため、最終的な費用は決まっていないが、より多くの方に検査を受けていただけるような費用での提供を検討している」と話していた。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。