【夫婦対談】常にパンチの効いた「チャレンジ」を与えてくれる<サイボウズ青野慶久夫妻・後編>

連載「あの人の夫婦関係」第2回。 サイボウズ株式会社代表取締役、青野慶久さんとその妻による夫婦対談、後編。

カテゴリ:話題

  • 料理を作ったら「負け」が「勝ち」に変化
  • 家族旅行も“修行”の一貫と考えやりぬく
  • プライベートの挑戦はすべて仕事で役立つ

彼女の繰り出すパンチすべてが仕事に活かされている

東証一部上場企業である、グループウェア開発で有名なサイボウズ株式会社。その社長である青野慶久さんご夫婦。イクメンになるまでの過程を追った前編に続いて、後編ではさらにお2人と家族で過ごす「実生活」に迫る。

——「絶対にやらない」と宣言していた料理を作ることになったそうですが、なぜポリシーを変えることになったのでしょうか。


きっかけは、子どもの習い事だったんです。私が習い事に連れていくから、「料理をしたら?」って提案したら、やるようになって。

慶久さん
世の中には、料理が得意でやってくれる人がいっぱいいるじゃないですか。しかも、そもそも料理って、何を作るかメニューを考える、材料を買う、片づける…どう考えても時間や労力の採算が合わない作業です。それにもかかわらず、僕が料理をするのは合理的ではないと思っていたんです。料理だけは、するのは「負け」だと。だから最初は、すごいストレスで、自分の心情を曲げてやっていました。


でも何でも挑戦すればできる人なので。今ではキーマカレーと豆乳スープが好評です。

慶久さん
やっと料理のメリットが分かるようになりました。自分や子どもの好きなものを好きな味で好きなだけ作れて。それに料理を作っている間はリフレッシュできるんですね。料理をすることで自分の引き出しが確実に増えました。料理をきっかけに人脈も広がりましたし。

ルーティンワーク化すれば簡単に

——青野社長はすごく「柔軟になった」と前編でおっしゃっていました。なぜなのでしょう。

慶久さん
それは彼女が次々とパンチを繰り出してくるからですよ。例えば最近だと僕は基本、家にいるのが大好きなんです。でも彼女は「旅行を企画して欲しい」とか突然要求してきます。そういうときは「また新しいパンチが来た!」って思うのです。

そこが彼女の魅力でもあると思うんです。それに、家事に関しては「夫はいないものと思っています」という働く女性の声をたくさん聞いてきましたので。でも彼女は「料理をしてほしい」と言う。次々とパンチが繰り出されてくるんですよ。もう彼女のお陰で僕はパンチドランカーのようですよ(笑)。


去年、家族5人でハワイ旅行に行ったのですが、「修行だ修行だ」と唱えていましたね。旅行に行くと仕事ができないことが苦痛みたいで。それでも旅行に出てくれるのはありがたいと思います。

彼は一度作業の流れを理解するとそれを進めるのが上手なのです。例えば彼は、お風呂上がりの子どもを受け取って寝かしつけまで滞りなく進めてくれるのです。お風呂に入れてくれるお父さんは一般的に多いですが、お風呂を上がってからのその後が大変なんですね。服を着せて、寝かせる準備をして…それが、彼は私がお風呂から上がったら、子ども達が寝ている状態にまでしてくれています。そこまでしてくれるお父さんってあんまりいないのではないかと。

慶久さん
ルーティンワーク化すれば、その通りにこなせばいいのです。とはいっても、仕事と違って育児は毎日が真剣勝負ですね。まったく言うことを聞かないどころか「その手を使ってきたか!」っていう行動をする。それに毎日驚かされます。

家庭の意思決定は難しい

——とても上手にお子さんを向き合っているようですが、家族円満な秘訣は何ですか。


ケンカすることもしょっちゅうありますよ。でも、うちは子ども達がいるので、時間が経つとどうでもよくなってきます。

慶久さん
そこが家庭の難しいところですよね。会社であれば、権限が明確で意思決定がシンプルです。けれども家庭では、子どもも含めてだれが意思決定者か明確ではありません。

僕の家庭の行動指針は「自由に生きればいいやん」で、目指すところは「みんなが幸福であること」。だからすごくこだわりがあるなら、僕もいろいろ引き受けてもいいよ、と譲ります。


まだ子どもが生まれる前ですけれども、「トイレのスリッパ事件」というのがありまして(笑)。自宅のトイレのスリッパを私はどうしても揃えられなかったんですね。それでケンカになってしまって。でもスリッパ自体の使用を止めることにしたら無事に解決したんです。XだYだと言い合っていてもZという選択肢があることに気がつきました。

慶久さん
イノベーションですね。やっぱり衝突する、というのは「お互いに大事だと思っているから」こそぶつかり合うわけですけれど。でも、子どもであっても、自分とは別人格なので、「こうしろ!」と一方的に言うことはできないです。自分で考えて自分で選択して。その結果引き起こされることにも責任を取れるようになって欲しいですね。例えばジュースをこぼすのは自由だけど、こぼしたら自分で拭くようにしてほしいです(笑)。

青野慶久さん
サイボウズ株式会社・代表取締役。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部卒業。松下電工(現パナソニック)を経て1997年愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年より現職。

青野社長の妻プロフィール
大阪大学在学中に慶久さんと出会う。関西の地方公務員を経て東京へ移住。現在団体職員として働く。

文=武藤徉子
写真=芹澤裕介


(執筆:editors room)