肺がんの50%は、タバコの影響少! 

社民党の又市征治党首が、肺がんの切除手術を受けることを明らかにしました。又市氏は、「4月末の検診で見つかった。早期の発見だったと思う」とし、療養等に1ヶ月程度を要すると話しました。

肺がんは、がんの死亡原因の中で、男性で第1位、女性でも第2位で、年間で7万4000人以上が亡くなっています(2017年)。早期発見できたのは、何よりのことだと思います。

今でも多くの方が、肺がんの原因といえば、タバコ(喫煙)を第一にあげるのではないでしょうか。ところが最近は、タバコを喫わないのに肺がんになるケースが増えていて、何と肺がん全体の50%に達しているんです!男性の肺がんの40%、女性においては、実に70%にまで及んでいて、「どうして私が肺がんに!」と驚く方が少なくありません。

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実は、肺がんには、喫煙の影響が非常に大きいタイプ(扁平上皮がんなど)と、影響はあるもののそれほど大きくないタイプ(肺腺がんなど)とがあるのです。

タバコの値上げや喫煙場所の限定など、タバコに関する規制が厳しくなったこともあり、喫煙者の人口は徐々に減少。その結果、「扁平上皮がん」の罹患率は下降傾向に転じています。一方で、肺腺がんは増加しているのです。

肺の奥にあるため、早期発見が困難!

さらに、肺腺がんは早期発見が難しいというやっかいながんです。肺の中では、細い気管支が木の枝のように広がっていて、その末端の肺胞という部分で、二酸化炭素と酸素の入れ替えがおこなわれます。

肺腺がんは、その肺胞のある末端部付近にできるのです。肺の奥深くにできるため、咳や痰などの初期症状が出にくく、早期発見も難しいのです。見つかった時にはかなり進行している、ということも少なくありません。脳や骨に転移し、頭痛や腰痛、背中痛などがひどくなってようやく検査を受け、発見されるケースさえあります。

肺腺がんの原因とは?!

タバコの影響が少ない肺腺がんですが、では原因は何なんでしょうか?近年のさまざまな調査研究から、「エストロゲンの過剰分泌」と「汚染大気」の2つが原因として有力視されています。

「エストロゲン」は女性ホルモンの1つです。初潮が早く、閉経が遅い、月経期間の長い女性ほど、過剰分泌のリスクが高まります。しかも、喫煙しない女性の方が、エストロゲンの影響が大きいことも指摘されています。

意外で手軽な予防法!

早期発見が難しい肺腺がん。何か予防法はあるんでしょうか?エストロゲンが肺腺がんに影響を与えることから、化学構造が似ている「イソフラボン」の働きが注目されています。

イソフラボンは、大豆食品に多く含まれる、植物性ホルモンの1種です。普通は、エストロゲンに「似ている」イソフラボンを摂取すれば、体内でエストロゲンに似た作用をするので逆効果では・・・と思えますが、不思議なことに、肺がんについては反対なのです。しかも、その効果は男性にも大いにあるのです。

国立がん研究センターの調査によれば、イソフラボンを1日48mg摂取するグループは、9mgのグループと比較して、はっきり予防効果がみられました。

罹患リスクが、非喫煙女性では約67%に、非喫煙男性では半分以下の約43%となったのです!何と、男性のほうが予防効果が高いというデータが出ました。もちろん、女性も発症リスクは減少しています。

ただし、喫煙者の場合には、イソフラボンを摂っても効果はみられません。ですから、予防のためにはまず禁煙すること。そして、イソフラボンを一定以上、摂取することが大切です。

では、イソフラボンをどのくらい摂ればいいのでしょうか。イソフラボン48mgとは、豆腐なら160g、1丁の半分弱。納豆なら、1パック+3分の1ですから、1日に2パックで十分おつりが来ます。これなら無理なく続けられますね!

食生活の中で、他の食品と共にバランスよく食べることをお勧めします。

かなまち慈優クリニック 院長
高山 哲朗( 医学博士 )

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高山哲朗
高山哲朗

日々の診療では患者さんの健康維持・増進により深く貢献できるよう努めております。的確な診断、共に疾患をコントロールすること、日々の健康を管理し病気にならないようにすることは内科医の責務と考えています。常に学ぶこと、根拠に基づく説明を分かり安く行うことを心がけてまいります。
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、平成29年 かなまち慈優クリニック院長。医学博士。日本内科学会認定医。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本医師会認定産業医。東海大学医学部客員准教授。予測医学研究所所長