「辞めたい」職員6割…死亡事故で准看護師に有罪判決!介護現場の過酷な実情

カテゴリ:国内

  • すべての入所者が「要介護3」以上の高齢者の特別養護老人ホームに密着取材
  • 介護福祉士の過酷な仕事ぶり…左手で車いすの利用者、右手で認知症の利用者に対応も
  • 2035年には介護従事者が79万人不足する恐れ「賃金など労働環境の改善が必要」では

長野県安曇野市の特別養護老人ホームで2013年、入所していた85歳の女性がおやつに配られたドーナツを喉に詰まらせてその後死亡した。

食事を介助した50代の准看護師が業務上過失致死の罪に問われた事故について、今年3月25日、長野地裁松本支部は准看護師の過失を認定し、罰金20万円の判決を言い渡した。

この事件後「一個人が全責任を負う」という判決に介護現場は萎縮しているという。

“大介護時代”を前に人手不足が叫ばれる昨今、この事件をきっかけに未来の介護業界を心配する声も上がっている。

さらに先日、全国労働組合総連合が発表した介護労働実態調査報告書によると、施設介護ではたらく人に「こんな仕事やめたいと思うことがあるか」という質問をしたところ、「いつも」と答えた人が10.8%、「ときどき」と答えた人が53.7%と、6割を超える人が介護の仕事を辞めたいと思うことがあるというのだ。
 
実際に現場の声を聞くため「直撃LIVEグッディ!」は東京・世田谷区にある特別養護老人ホームで働く介護福祉士の新田正伸さん(36)に密着取材した。

24時間の全面的介助にも「大きなやりがいを感じる」

新田さんが勤める特別養護老人ホームとは、入所する全員が「要介護3」以上の高齢者だ。
24時間、立ち上がったり歩いたり、食事やトイレの際に全面的な介助が必要な人ばかり。
 

新田さんは、他の10人のスタッフとともに24人の入所者を24時間、毎日介護している。
この日の新田さんは、午前7時に出勤。この時間帯は夜勤と早番の2人しかおらず、出勤すると怒涛のように仕事が舞い込んでくる。

まずは、部屋から食堂への移動。1人では移動させるのが難しい人もいるため、2人で移動させることもあるのだが、介助をしている最中にも容赦なく呼び出しコールが鳴る。
 
起床から朝食までの間は、排せつや移動の介助などの繰り返しだという。

朝食が到着すると、利用者の状態によって食べやすく加工された食事をそれぞれに配る。
1人で食べられる人もいれば介助が必要な人もいるため、食事中も常に細かく気を配らなくてはならない。
 
朝食後も落ち着く暇はなく、薬を飲む人の介助や、片付けなど、常に利用者に付き添っていく。

利用者の中には認知症の人もいるため、少し目を離すと徘徊してしまうこともある。左手で車いすの利用者、右手で認知症の利用者の手を取り対応している場面も見られた。

ーー気を使わなければならない部分は?

新田正伸さん
認知症の方が多いので、否定してしまうと、より混乱してしまうので。
否定せずにできる限り相手の気持ちに寄り添うっていうのが一番気を付けないと…そこが一番難しいんですけど。

この日の新田さんの勤務時間は16時まで。しかし、常に利用者から呼び出される状況のため、事務作業が滞ってしまうことも少なくないという。

新田正伸さん
終わりではないんですけど、記録がまだちょっと残っているんで。少し休憩してからやります。


人手も少なく、仕事に追われる多忙な日々。しかし、新田さんは介護の仕事に大きなやりがいを感じているという。

新田正伸さん
はじめは認知症と言っても右も左もわからなくて。
いろんな資格を取る上で勉強していくと仕事が面白くなっていって、認知症の人の対応がうまくなってくるんですよね。
自分の中の成功体験じゃないですけど、どんどん増えていって、やる気というか、やりがいにつながっています。

介護の現場は、ヘルパー一人一人の頑張りで支えられているのが実情だ。

2035年には介護従事者が79万人不足?

安藤優子:
私の亡くなった母親が高齢者施設にいたんですが、複数の人たちが全介助でご飯を食べないといけないんです。
2人の介助の方が一口入れたら次の人、一口入れたら次の人って、本当に忙しいんですよ。
目まぐるしい忙しさで、こっちで物をこぼす人もいれば、こっちで奇声を出したり怒りだしたりする人もいる。
長野県のこの判決は、現場に対して理解のないものだと感じます。こんな判決が出てしまうと、そんなリスクを背負ってまで介護の現場に就職しようとする人が少なくなってしまうんじゃないかと、懸念してしまいます。

大村正樹フィールドキャスター:
今後の担い手の問題が懸念されますよね。経産省はこのような試算を出しています。

【介護関連 従事者数の予測】

2015年:
必要となる人材数187万人に対し、従事者人数は183万人⇒4万人足りないが、何とか回っていた状態

2035年:
団塊の世代が85歳を超え307万人の人材が必要とされる中、従事者人数は228万人ほどになり、79万人もの人材が不足する恐れも

大村正樹フィールドキャスター:
今回の判決が影響を及ぼすと、若い人がこの職に就きたいと思うかどうか、という問題も出てきますね。

安藤優子:
新田さんのように、現場を見ると“善人頼み”のようなところがあるじゃないですか。
その人のやる気と熱意におんぶと抱っこのようで、これでは気の毒でしょうがないです。

岩永徹也(俳優):
とても責任のある仕事なのに、新田さんの職場は朝2人しか働いていなくて、こんなに少ない人数でいいのかなと感じて…高齢者の数もどんどん増えていくじゃないですか。
国の大問題だから、もっとお金をかけていい分野じゃないのかなと思いました。

高橋克実:
老人ホームの話が出ると必ず賃金の話になりますけど、私もすぐに取り掛かるべきだと思います。どんどん国が力を入れていかないといけないと思いますよ。

安藤優子:
介護士さんに聞くと、結婚して所帯を持てないような賃金だという方もいらっしゃいますからね。
そこはいの一番に、自分たちの仕事に本当に誇りを持ってやっていただけるような、相応の対価にしてほしいですね。

(「直撃LIVE!グッディ」4月25日放送分より)

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