「どうせ苦しいならできるだけ楽しく頑張ろう」指導を受けた選手の心に残り続ける小出義雄さんの言葉

  • 「指導は世界一キツかったが、愛情を感じるものだった」松野明美さんが思い出を語る
  • 笑顔で冗談交じりに選手を励ました小出さんが怒った場面とは?
  • 同じく指導を受けた有森裕子さん・高橋尚子さん・千葉真子さんも哀悼

女子マラソン・オリンピックメダリストの有森裕子さんや高橋尚子さんなど、数々の名選手を育成した小出義雄さんが24日に亡くなった。80歳だった。

小出さんは2015年8月、アメリカでの合宿中に不整脈からくる心疾患で倒れ、病気と闘っていた。しかし、今年3月に勇退するまで指導者として第一線に立ち続けていた。

【小出義雄さんの主な指導実績】

1992年 バルセロナ五輪 有森裕子さん銀メダル
1996年 アトランタ五輪 有森裕子さん銅メダル
2000年 シドニー五輪 高橋尚子さん金メダル 

「直撃LIVEグッディ!」では、小出さんと親交のあった元マラソン選手の松野明美さんと電話をつなぎ、最近の小出さんの体調や思い出のエピソードなどを伺った。

「励ましの言葉や笑顔が父親のようだった」小出さんの指導

安藤優子:
今回の訃報、私たちは突然だったと感じたのですが、松野さんはいかがですか。

松野明美さん:
私は1年ほど前から、小出監督の体調が悪いとお聞きしていましたが…本当に今ショックで、びっくりしています。

安藤優子:
小出さんと言えば、豪放磊落(ごうほうらいらく)という言葉がぴったりくる印象がありますが、松野さんはどのような印象をお持ちでしたか。

松野明美さん:
長期の合宿を数回やったんですが、朝起きたらすぐ27キロ走を走らせるんです。
「マラソンは忍耐力が大事」ということで、7時間のウォーキングですとか…本当に苦しい内容の練習を思い出します。
ただ、練習以外の時の「今日はよく走れたな、今度は日本最高記録出るぞ」など励ましの言葉、そして小出監督の何とも言えない笑顔が、私たちにとっては父親のような感じで…苦しい練習も乗り越えることができたんだと思います。

安藤優子:
小出さんの指導は、厳しいものだったんですね。

松野明美さん:
本当に日本一というか、世界一キツかった思い出があります。40㎞走とか50㎞走とか、いきなり言うんですよ。
一生懸命走ってる中で、監督は一番後ろの選手についていくんです。並走されて「お前まだまだいけるぞ」とか「前の選手に追いつけ」とか。
そこが、遅くても頑張ろう、続けようという気持ちにつながっていたのかなと思います。ああいう指導は、小出監督しかできないんじゃないかなと本当に思います。

小出さんの指導は「世界一キツかった」と話す松野さん。そんな小出さんから愛情を感じる場面も多くあったようだ。

松野明美さん:
「松野、なんでそんなに小さいのに走れるんだ」とか、冗談交じりにおっしゃるんですよね。
指導者と選手を超えた、身内・家族のような一言一言が、震えるくらいありがたいというか、愛情を感じるんです。
だからみんな信じていけたし、強くなっていけたのかなと、いま振り返って思います。

宮澤智アナウンサー:
愛情たっぷりでたくさん励ましの言葉で指導してくれたんですね。逆に小出監督が怒ったりすることはあったんですか?

松野明美さん:
怒られるのは、「頑張れるのに頑張らないとき」。
もっともっと頑張れば記録が伸びるのに、なんでお前そこでやめるんだ、諦めるんだというところを見た時は、本当に怖い顔をされてましたね。

宮澤智アナウンサー:
それだけ選手の力を信じているということですね。

松野明美さん:
そうです。「お前はもっと走れるんだ、もっと頑張れば記録が伸びるんだ」と、それだけ選手を信じているところが、私たち選手にも非常に伝わってきたんですよね。
愛情いっぱいの指導方法だったんじゃないかなと思います。

木下康太郎フィールドキャスター:
松野さんは、バルセロナ五輪のマラソン女子代表ラスト1枠を有森さんと争ったという経験がありますが、当時を振り返って、小出監督からかけられた言葉やエピソードはありますか?

松野明美さん:
あの時は有森さんを憎んで、私だったら絶対に金メダルが取れると思ったんですけど。
その後に小出監督と少しお会いした時に、「まだまだやれるじゃないか」「有森よりお前の方が早いんだぞ」と言われて、「小出監督ってなんて優しい方なんだろう」と思ったことがありました。嘘でも言われるとうれしいんですよ…


グッディではさらに、放送中に行われた有森裕子さんの会見、高橋尚子さんと千葉真子さんのコメントを伝えた。

多くの教えを受けた恩師へ…3選手が感謝

ーー監督との思い出は?

有森裕子さん(バルセロナ五輪銀メダリスト):
山ほどありすぎて…ニコニコ話を聞いてくれた姿から、全然走れない私に困り果てた姿から、それでもメニューを一生懸命考えてくれていた姿から。
ケンカもしょっちゅうしましたし、相当手ごわい、手のかかるアスリートだったと思うのに…困っていた監督の顔がよく浮かびます。
(私が)故障して落ち込んでいた時に「有森、物事には“せっかく”というのがあるんだ」と。「物事には意味のないものはない。だからどんなことが起きても“せっかく”と思え」と言われたことは、どれだけ故障してもそれに意味があると立ち向かえた、監督からの一番の言葉ですね。

高橋尚子さん(シドニー五輪金メダリスト):
オリンピックでメダルが取れたのも、世界記録が出せたのも、今の自分があるのも、小出監督のおかげです。
弱い私を根気よく指導してくださって、一緒に走ってくださって、自信をつけてくださって、監督の大切な時間を費やしてくださって、オリンピックでメダルをとらせてくださって、ありがとうございます。と何度も言って、伝えきれないほどの感謝の気持ちでいっぱいです。
たくさんのことを教わりました。監督の笑顔をもっと見たかったし、お話ももっと聞きたかったです。
これからは大好きなお酒をたくさん飲んで思いっきりかけっこしてください。

千葉真子さん(オフィシャルブログより):
どうせ苦しいことをやるのだから、できるだけ明るく楽しく頑張ろうといつも太陽のように選手を照らして下さいました。
そして、苦しい練習も「ちばちゃん一緒に頑張ろうな」とポンと肩を叩いて、選手に目線を合わせて下さっていた(中略)監督から教わったことはこれからも私の中で生き続けます。

安藤優子:
小出さんは、こうやって指導を受けた方々の心の中に、いつまでも残る言葉をたくさんたくさんかけてこられたんですね。
小出さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

(「直撃LIVE!グッディ」4月24日放送分より)

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