「粛々と準備を進め、厳粛な儀式が静かな環境の中で行われることを実現したい」

平成から令和へ。今月30日には天皇陛下の退位に伴う退位礼正殿の儀が行われ、翌日の5月1日には新天皇の即位に伴う剣璽等承継の儀が行われる。
4日には新天皇即位後初となる一般参賀があり、皇居周辺では警視庁による警備が実施される。
首都東京の警備を担う警視庁警備第一課長がFNNの単独インタビューに応じ、一連の特別警備について語った。

記者:
今月30日は平成最後の日。来月1日は令和最初の日になります。
一連の皇室関連行事に関して、皇居周辺、都内各地ではどのような警備を予定していますか?

重久警備第一課長:
誤解のないようにしたいのですが、今回の一連の皇室関連行事で、警視庁は物々しい警備をするつもりはありません。
4月30日の御退位の儀式、それから、5月1日の御即位の儀式、いずれも厳粛な国家的な行事ですが、これらの行事を静かな環境下で行われるようにする。
5月4日の一般参賀については国民全体で心からご即位を祝福するような行事にする。
そのために必要な警備を粛々とするということです。

そのためまずは新たに即位される天皇皇后両陛下のご身辺の安全確保、これはその他、皇族の方も含めて、しっかりと確保していく、これは警視庁だけでなく皇宮警察本部と連携してやっていく。
それから、両陛下のお道筋を中心として皇居、赤坂御用地の周辺エリアをしっかり警戒警備をしていくということです。

警視庁警備部 重久真毅警備第一課長
警視庁警備部 重久真毅警備第一課長
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記者:
平成が始まった時に比べ、令和が始まるに際して、国民はお祭りムードであったり、新元号になることを楽しんでよいという思いが若い世代を中心にあると思います。
こういったムードは警視庁警備にとって、懸念事項になるのでしょうか?

重久警備第一課長:
懸念というのはないですが、厳粛で静かな中で儀式を始めるということ、それと同時に国民全体で心から、ご祝賀、祝福を申し上げるということ、これに対して、水を差すような行為が起こらないようにするということが警備の目的と考えています。

記者:
やはり、この30日、5月1日というのは警視庁警備にとって特別な2日間であるという認識はありますか?

重久警備第一課長:
儀式自体が特別な儀式だということは当然ですが、冒頭に申し上げた通り、だからと言って警視庁警備部が物々しい警備をやるとか、特別な前代未聞の警備を行うというわけではありませんので、そこはどうかご理解頂きたいと思います。

「平成」から「令和」へと変わる夜 繁華街では臨機応変な警備で臨む

“若者の街”渋谷はどんな様相を見せるのか
“若者の街”渋谷はどんな様相を見せるのか

記者:
渋谷はこれまでハロウィーンや、大みそかなどに若者が集まって騒ぐ場所と捉えている人もいると思います。
30日、平成最後の夜に、渋谷や、新宿、六本木などの繁華街で警視庁は警備を考えているのでしょうか?

重久警備第一課長:
今のところそういった繁華街で大規模な行事が行われることは聞いておりません。
ハロウィーンや、大みそかのカウントダウンというイベントは欧米の文化も色々入っていますし、毎年の恒例のイベントでもありますから色々予測がしやすいですが、この改元の瞬間というのは我々もほぼ初めての経験ですし、極めて日本的な行事ですから、中々予測がつかないところがあります。

ただ、今のところはそのような具体的な大掛かりな行事があるという話には接していませんから、ハロウィーンや大みそかのような大規模な警備、交通規制をかけることは予定していません。
ただし、万が一にも人が沢山出てきたりとか、雑踏事故の危険性が高まるなどの事態の前に、警察官の配置は考えていきたいと思います。

繁華街で警戒にあたる警備広報
繁華街で警戒にあたる警備広報

記者:
30日夜に繁華街対策として、DJポリスや外国人対策として、電子掲示板などの配置予定はあるのでしょうか?

重久警備第一課長:
私たちは「警備広報」という言い方をしていますが、警察の警備にご理解、ご協力を頂くために、必要な情報をその場にいる方にマイクを使ったりして、効率的にお伝えするということです。

今回、繁華街などで万が一そういった多くの人が出るようなことがあれば、待機させている警察官を現場に出して、必要な警備活動を行うと思いますが、その際に警備広報も行うことは十分あると思っています。
外国の方に対しても、英語を使っての広報というのはあり得ると思います。

記者:
皇居周辺では、30日夜には警備を考えているのでしょうか?

重久警備第一課長:
繁華街同様に、皇居周辺でも万が一のことが、起こった場合に対応できるような備え、対策を講じていきたいと思っています。

新時代の“新たな脅威”とは? ドローンや車両突入テロへの対策

首相官邸の屋上に落下させたドローン遠隔操作事件(2015年4月)
首相官邸の屋上に落下させたドローン遠隔操作事件(2015年4月)

記者:
最近の警備の新課題として、ドローン対策について伺います。
これまでは地上の警備をしっかりとやっていれば防げるようなものも、ドローンによって空中にも警戒をしなければいけなくなりました。
皇室関連行事に際してはドローン対策をどうお考えですか?

重久警備第一課長:
おっしゃる通り、ドローン、小型無人機による不法行為や、また、自動車を利用した無差別の殺傷事案などは、昭和から平成にかけては必ずしも明確には想定されていなかった脅威だったと私も思います。
特に国内外で実際に事件も起きています。

今回の皇室関連行事でこれらの脅威が差し迫ったものということでは全くないわけですが、万が一にもそういったことが発生する可能性があるのであれば、我々警察としてはしっかりと対策を取らなければいけないと考えております。
色々な資機材を使って対処していきたいと思っています。

記者:
総務省と協力しながらジャミング(=電波妨害)で対応していくという報道もありましたが、警視庁として新たな対策の仕方のようなものはありますか?

重久警備第一課長:
基本的には地上からの警戒、上空に対する警戒、そういったものに注力していくということです。
具体的にどのような資機材を使っているかという点については、差し控えさせていただきます。

記者:
交通規制に関して、検問などはどう計画していますか?

重久警備第一課長:
基本的には皇居と赤坂御用地の周辺において、警戒警備の観点から車両に対する検問などをやらせて頂く予定です。
その際、ドライバーの皆様にはご負担をお掛けすることがあるかもしれませんが、どうか警備のためにご理解、ご協力を頂ければと思っています。 

記者:
警備第一課長として、今回の一連の警備に関して、都民、国民の皆さんにお伝えしたいことはありますか?

重久警備第一課長:
警備というのは国民、都民の皆様の理解と協力がなくしては成功しません。
平素の生活の中でけっこうですから、不審なもの、いつもと違う事があれば遠慮なく、警察に通報して頂きたい。
それから我々が行う警備であったり、交通規制であったり、一部の方々にはご負担をお掛けすることもあるかもしれませんが、どうかご協力、ご理解を頂ければと考えています。

(聞き手:フジテレビ社会部警視庁担当 河村忠徳)

河村忠徳
河村忠徳

「現場に誠実に」「仕事は楽しく」が信条。
FNN北京支局特派員。これまでに警視庁や埼玉県警、宮内庁と主に社会部担当の記者を経験。
また報道番組や情報制作局でディレクター業務も担当し、日本全国だけでなくアジア地域でも取材を行う。