【副業儲かってますか?】依頼者の名字からルーツを探る!「あなただけの日本史」を作成

カテゴリ:ビジネス

  • 「自分のルーツは誰もが知りたいはず」大学での研究経験を活かして調査法を確立
  • 「ネット上でわかる範囲で完結」が特色ではあるが、平均30ページと読み応えあり
  • 必要な情報は「両親・祖父母の名字と本籍地」どんな本ができる?実際に依頼してみた

週6日の本業勤務と複数の副業

みなさんは自分の先祖について、どれくらい話せるだろうか?
両親・祖父母・曾祖父母とは、直接会って話をしたことがあるという人が大半だと思うが、それよりも前の世代となると、すでに亡くなっていたり、離れた場所に住んでいたりして、どのような人生を歩んだのかはおろか、顔や名前すら知らないということが多いのではないだろうか。

そんな先祖のルーツを名字から探るサービスを副業としている人がいる。
氏族の歴史や名字の成り立ちに注目して古代から現代までの通史を解説し、依頼者から得た情報をもとに関係が深いと思われる氏族の歴史と結びつけ、日本史の教科書風にまとめるというものだ。

兵庫県在住の大塚哲也さん(43歳)は、屋根瓦などの建築資材を扱う会社の役員でありながら、社員が少人数であるため、営業・販売・統括・経理とさまざまな業務を担当している。
その忙しい本業の傍ら勤務先の許可を得て、楽器製作や演奏指導など複数の副業をしている。中でも現在人気なのが、2014年から始めた「あなただけの小説 日本史」の作成だ。

副業のプラットフォームには、Webデザインの他、動画や画像の制作、翻訳、ビジネスサポート、美容や健康といった様々な分野の知識・スキル・経験を売り買いできるオンラインマーケット「ココナラ」を利用。

1週間のスケジュールを聞くと、副業をする時間は「休日の日曜日と祝日のみ」で、本業とのバランスをうまくとっていた。

本業は月曜日~土曜日の週6日勤務だという大塚さんは、毎朝7時に起床して7時半~18時半まで仕事に取り組む。休憩時間には、副業の新規依頼をチェックしたり、調査中の名字について進捗をメールで報告している。
帰宅後は、22時半から約30分ほど、これまでに調査して判明した名字と氏族のルーツを公開しているブログを更新し、24時には就寝するという生活だ。

本業と並行してスキマ時間に依頼者と連絡を密に取り、実際に調査をするのは休日である日曜日と祝日の夕方以降で、20時~22時の2時間ほどであることが多い。それまでの時間は、買い物に出かけるなど家族と一緒に過ごすという。

「名字のルーツ調査」は以前、テレビ番組の取材を受けたことをきかっけに依頼数が増え、現在は受注制限を設けているほどの人気ぶりで、ココナラでの実績は142件だが、直接メールで依頼を受けることも多く、それを合わせると1500件ほどになるという。
同時に複数の調査を行うこともあり、1冊が完成するまでには約1ヵ月を要する。
名字のルーツ調査の副業での収入は、月によってバラつきがあるが、1万8000円~2万4000円ほどだ。

大学では文学部に在籍し、日本文学を研究したという大塚さん。
名字調査の方法や教科書風にまとめる作業には、学生時代の経験が活きているのだろうが、どのようなツールを使っているのだろうか?副業に対するこだわりとやりがいを聞いた。

「自分の名字を調査してみて、需要があると思った」調査にはネットを駆使

大塚哲也さん

ーー名字調査の副業を始めたきっかけは? 

父の実家は九州なのですが、関西に出てきていたので、本来のルーツに触れる機会があまりありませんでした。
その後、社会人になってから改めて自分の名字に興味を持ち、調べ始めました。
父が60代という比較的早期に亡くなったため、話を聞けるチャンスが少なくなってしまったことも、自家のルーツを探ろうという気持ちのスピード感を速めました。
ずっと先祖代々の地元にいる人よりも、父や私のように、別の土地に移動した人たちのほうが、「どこからきたのか」という気持ちが強まる傾向があるように思います。

これをきっかけに、名字や家系のルーツ調査には需要があるのではないかと考え、副業のひとつに加えました。
ニッチなサービスであるように感じるかもしれませんが、「自分がどこから来てどこへ行くのか」という問いは人類すべてのテーマでもあり、潜在需要は日本人の数だけあると思います。
また、大学では江戸時代の演劇を研究していたため、「その時代の資料がどこに・どのようにあるか」を把握しているということもありますが、「どの名字に対しても、この方法であればある程度情報を探せる」という調査方法の目処がついたから、という点も大きな理由です。
「地縁血縁解析法」というオリジナルの方法ですが、その方法も電子書籍にまとめて販売しています。



「あなただけの小説 日本史」には、両親の名字と本籍地の情報から調査する「2系統」(2000円)と両親と祖父母の名字と本籍地から調査する「4系統」(3000円)の2種類があり、「せっかくなら」と4系統での調査を依頼する人が多いという。

完成品が依頼者の手元に届くまでの流れは、以下の通り。

(1)両親・祖父母の名字や本籍地の情報をココナラのメッセージツールで送る
(2)出身地や本籍地に関連する氏族の調査結果が次々に届く
(3)依頼者とのやり取りを経てさらに調査が進み、概ね氏族の歴史が確定したら、情報を教科書風の文体でまとめた“歴史本”がPDF形式で届く

依頼者は年齢・性別ともに多様で、「結婚して苗字が変わったけれど、本来の自分のルーツが知りたい女性」「子どもができて、自分の家の歴史をいつか息子や娘に伝えたい新米お父さん」「年老いた父にプレゼントしたい娘や息子」などが多い。
また、オンラインマーケットであるため、海外に移住した移民の子孫からの「先祖がどのような人たちだったか知りたい」という依頼も度々あるという。

(左)副業に欠かせない資料が並ぶ本棚 (右)有名武将の家紋

ーー「両親や祖父母の名字と本籍地」という限られた情報から、どうやって調査をするの?

実際のやり方については、ある意味企業秘密のような感じですが、「まずここを調べて、これを調べて、これを読む」という3ステップくらいで、おおよその傾向は絞り込めます。その後、その家の実態にあった情報を探していきます。
ツールとしては、主にグーグル検索と「○○町史」「△△市誌」などの地方誌(地方史)、  武士の場合は「分限帳」「藩士名簿」など、苗字辞典の記述も参考にします。国立国会図書館のデジタル資料では、古地図まで調べられます。

個人的に集めた資料は九州方面が多いです。実際には全国どの資料でも探しますが、書籍購入や現地調査はしません。
安楽椅子探偵のように、パソコンの画面の前からは離れないので、旅費・宿泊費・日当が発生せず、比較的安価に調査ができます。
家系調査事業を行っている民間会社に依頼すると、最低でも数十万円~数百万円の費用が発生しますが、私は行政書士の資格を持っておらず戸籍の代理取得ができないため、文献から名字の成立を追いかけ、「ネット上でわかる範囲だけで完結する」ことを特色としています。


ーー有益な情報が見つからない場合はどうする?

9割方は、ある程度納得のいただける回答が出せます。しかし、残りの1割は、どうしてもわからないことが出てくる場合もあります。
2系統もしくは4系統で「あなただけの日本史」を作っているのは、そのための担保でもあります。1つの系統がしっかりわかれば、もうひとつは「こうではないか?」と仮説を立てることができるからです。

直線的に調べても出てこない場合には、「木を見て森を見ず」とならないように、違う角度から調べることになります。
例えば、ある土地で災害があったため多くの村人が移住した、ということが多々ありますが、名字で調べていてもわからないものが、地域の歴史を調べているうちに理由が判明したりすることは珍しくありません。
また、富山県の能登半島の名字には変わったものが多く、由来がわからないものが多いのですが、このようにルーツがわからない場合は、「苗字調査結果」という資料を代わりにお送りしています。答えが出ない理由からある程度の仮説まで、すべて説明しますので、依頼者の方にもご満足いただいています。

"歴史本"の中身が見たい! サービスを体験

では、「あなただけの小説 日本史」にはどのようなことが書かれているのだろうか?
筆者の名字「大須賀」で特別に調査していただいた。

届いた本の中を見てみると、まず気になったの特徴的なオレンジ色の表紙だ。サブタイトルに「~大須賀氏編~」と自分の名前が入っていて、わくわくする。

これは山川出版社の教科書「詳説 日本史」のパロディで、大塚さんが作成する本のタイトルにある「小説」も「詳説」をもじったものだという。

最初の項目「はじめに」では、「ひとつの推定・仮説としてお楽しみください」としながらも、自分の名字がどのように受け継がれてきたかの歴史を知ることの意義を説明している。
 第1章「古代の国家形成」では神話の時代と大化の改新、第2章「律令国家の変化」では藤原氏の台頭と貴族の時代、武士の出現と源氏・平氏の解説が続き、第3章「武家社会の到来」の鎌倉幕府の成立までは、どの名字のルーツを説明するにも必要な情報であるため共通の内容だ。

それ以降は、依頼者オリジナルの展開となる。
大塚さんとの事前やり取りで、「本籍地が愛知県額田郡幸田町の大須賀氏」の調査結果として、次のようなメールが届いた。

桓武天皇の子孫で、千葉に拠点をもった千葉氏の分家です。本来の拠点は下総。下総大須賀氏とも呼ばれます。愛知にくるのは後代ですが、額田郡幸田町野場字城にて城主となります。世が世であればお姫様ですね。

「あなただけの小説 日本史」では、これをさらに掘り下げた名字の歴史が江戸時代までをメインに書かれている。個人の事情が異なり、氏族としての動きがわからない近現代は、詳細な記述を省略しているという。
絵や図などは載っていないが、依頼者の名字にまつわるコラムが数ヵ所挿入され、平均して約30ページと読み応えのある内容だ。

14ページの下「徳川家康のコンプレックス」がコラム

依頼者との密なコミュニケーションが調査のカギ

自分につながる名字や氏族の歴史が、わずか数千円でオリジナルの歴史本という形で手元に届くというサービスは珍しい。
報告の段階から 、自力で調査することが困難な情報を知ることができてうれしいし、丁寧な調査と考察による記述には引き込まれる。
何より、自分の先祖が登場するというのは、一般的な歴史書にはない魅力だ。
これをきっかけに家族から思い出話を聞くことができたり、歴史を勉強する人にとっては学びへの意欲が高まることだろう。

しかし、複数の依頼を並行して調査しながら本にまとめるというのは簡単なことではない。副業を円滑に進めるにあたり、大塚さんはどのようなことを意識しているのだろうか。


――副業をする上で大切にしてることは?

途中経過として、何かわかるたびに報告をしています。
依頼者に納得していただけるような調査をするためであるのはもちろん、こちらから情報を提示すると、「そういえばこんな話を聞いた事がある!」と新たな情報を得て、どんどん真実に近くなっていくことが多いです。
また、複数の依頼を並行していると混乱してくるので、依頼者とのメッセージページにこまめに書き込んでいくと、それがカルテのような記録になるという利点もあります。
 

ーー副業をして楽しいこと、反対に苦労することは?
 
基本的に、すべての依頼は楽しいです。依頼者とのやり取りを通じて歴史上の名家とのつながりが見えてくることも少なくないので、みなさん驚かれます。
「自宅のすぐ近くに先祖の武将に関する史跡があることを知って、住む町に対する気持ちが変わった」とか、「長い歴史を経て自分が今ここにいると、生きる実感を得た」という感想をよくいただきます。
このように喜んでくださると、調査にも充実を感じてやりがいがあります。
また、どの名字調査でも毎回ドラマチックで、大河ドラマがより楽しめるようになります。
 
一方で、好評をいただいているため常に空き待ち状態が発生しており、心苦しい限りです。
複数の依頼に対して、調査とまとめの執筆作業を行うことは大変ではないのですが、これ以上は物理的にさばけないので、自分自身があと3人くらいは欲しいです。
かといって専業でやるとなると、今の価格を維持することは難しいので、悩ましいですね。

「あなただけの小説 日本史」より一部ページを抜粋

今後は、情報がまとまった氏族のルーツを解説しているブログの本数を増やすとともに、「個別のおうちに寄り添いながら事情を読み解いていく活動を続け、本業引退後には実地調査も含めて名字の旅がしたい」と目標は広がるばかりだ。

最後に、複数の副業を持つ大塚さんに副業を成功させる秘訣を聞いた。
「副業は、誰にでもできます。自分の好きなことを、『仕事』に変えるだけです。言ってみれば、大人になってからの部活動のようなものかもしれません。私も名字調査に限らず、好きなことを何でも副業にしてしまったという感じです。もらえるお金は100円でも、500円でもいいです。そこから全てがはじまります!」

令和という新時代に変わったのを機に、これから副業を始めてみようと考えている人は、大塚さんのアドバイスを参考に、自分らしさを活かした副業にチャレンジしてみてほしい。


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