地元で愛されるスパゲティ店「アル・デンテ」
多くの市民が行き交う長野駅前。その路地の一つを進むと店を構えて43年になるスパゲティのお店「アル・デンテ」がある。
男性客:
いい味だ、相変わらず。会社に(勤めて)いた頃から好きで好きで、大盛りばっかり。1回食べたら忘れられなくなる
スパゲティは全部で28種類。しめじやたらこを使った和風スパゲティが特に人気。
女性客:
(通って)20年くらいです。時間が経つに連れてマスターもだんだん大人の貫禄が出てきた(笑)
店主の中沢正博さん(71)。
変わらない太麺
常連客からは親しげに「マスター」と呼ばれている。店の名前にもなっているアル・デンテは「歯ごたえのある」を意味するイタリア語。中沢さんはアル・デンテまで12分という太めの麺を使っている。
店主・中沢正博さん:
かなり太めですよね。今のスパゲッティ屋さんの見ると細いので7分くらいであがってくるが、俺はああいうの好きではないから太さは変わらず40年
看板メニューの「あさりしめじ」はその太めの麺に、生姜とニンニクでソテーしたシメジとあさりのソースを絡めた逸品。
女性客からは「最初に来た時にこれを食べておいしかったので、大体これを食べています。しめじの食感がいい」と好評。
中沢さんが店を出したのは1976年。当時、駅前にはスパゲティの専門店はもちろん、洋食店も数えるほどしかなかったと言う。
店主・中沢正博さん:
店が少なくて良い時に始めましたよ。茹で上げのスパゲッティを食べさせるとこがほとんどなくて、「これだな」と思って、茹で上げのスパゲティなら炊き立てのご飯と同じで、ご飯にかけるものなら何でもおいしいのではと
ご飯にも合うたらこを使ったり、キノコや野沢菜など信州の食材を生かしたりとオリジナルメニューを次々と増やしていった一方で味付けは変えずに守っている。
代々語り継がれる味
もう1つ、変わってないのは当時は珍しかったというオープンキッチン。
店主・中沢正博さん:
オープンキッチンはお客さんと話が出来るから一生懸命話をするようにしていた。それが長く続いた理由かなと思う。開店した時は150円とかでやっていた。高校生が部活帰りで来て、その人たちが卒業して子どもができて、その子どもがまた一緒に来てとか。親子3代ですよ。長いですね。40年というと
こちらの女性2人は小学生の頃、親によく連れられてきたという姉妹。今では2人とも母親となりそれぞれの子どもを連れて訪れている。
妹:
小さい頃からずっと来ている。母と一緒に3世代です
妹の息子:
おいしい
姉:
(今月)1歳になるからね。食べれるといいね
この40年で街の風景は様変わりした。飲食店やホテルが建ち並び新幹線が開業してからはさらに多くの観光客が訪れている。
店主・中沢正博さん:
本当に変わった。前の人通りを見ているが前にあった古い家も壊れてなくなった。どんどん変わっていくのが目に見える。もっと自然を大事にする方向にいかないかなと思う。長野は東京になってほしくない
一方、アル・デンテは味も雰囲気もほとんど変わっていない。それが多くのファンに支持される理由となっている。
男性客:
アルデンテはおいしくて、量も多くて、それにマスターが気さくで面白い。ずっと通い通い続けている
店主・中沢正博さん:
食べ方で分かる。ちょっとまずそうだったかなとか。そういう時はすぐコーヒーを出してサービスして(笑)
夜の営業が始まるとオープン当初から通い続けている60代の夫婦が来店。
夫:
昔の味というか、懐かしいし。あまり冒険したくないもので、分かっている味を納得して食べるのが楽しみ
妻:
50周年目指して頑張って
店主・中沢正博さん:
50周年…犬飼いはじめた。一生懸命散歩して体力付けようと思って
夜の営業も忙しく多くの常連客が訪れた。
最後の客は仕事終わりに訪れた50代の男性。もう30年ほど通い続けているそう。
店主・中沢正博さん:
最近みんなと一緒に来ないね
男性客:
いじめられているので(笑)。1人で寂しく来ました。2、3人の時にはこちらの(カウンター席)。なるべくマスターの近くに
ーーどんな話を?
男性客:
マスターの趣味のゴルフが中心。共通の知人がいまして、県のトップアマがいてそんな話で盛り上がった
長野駅前に43年。10年ほど前からは次男の章博さんも一緒に働いている。
頼もしい2代目もできたが、中沢さんはまだまだオープンキッチンに立ち続けるつもりだ。
店主・中沢正博さん:
平成をずっとやってきたなんて考えられないくらい長い間ですよね。1週間に3、4回も来る。1ヶ月に何回も来る。そういう人がいるからやっていける
昭和、平成、そして令和へ。
変わらぬ味と「マスター」の笑顔がきょうも客を迎えそして優しく送り出す。
(長野放送)