笑いの殿堂が異様な警備に!安倍首相「ヨシモト」サプライズ出演の “2つの狙いと不安”

【リアル首相動静】

カテゴリ:国内

現職総理で初!吉本新喜劇に出演 

4月20日、安倍首相はこの6月に日本初開催となるG20サミットが行われる大阪府を訪れました。そして、サミット開催を自らPRすべく、大阪で大人気のお笑い劇団「吉本新喜劇」の舞台にサプライズ出演しました。

吉本新喜劇の登場した安倍首相(4月20日 大阪市・なんばグランド花月)

安倍首相の出演は、観客には事前に知らされておらず、首相が舞台に現れると、観客からは「うえー」という大きなどよめきと歓声が上がりました。出演者のすっちーさんから「ホンマに本物?」と聞かれた安倍首相は、「ホンマに本物です」と関西弁で返し、観客の笑いを誘いました。

さらに安倍首相は、出演者の池乃めだかさんから日本の経済について話題を振られると、すかさずG20開催について説明を始めました。そして「世界の首脳が大阪に集まり真剣勝負をするが、大阪ならではの解決方法もある」と強調。「食べ物もおいしいし、人情もいいし笑いの文化もある」とした上で、「四角い仁鶴がまあるく収めまっせと。解決策を見出したい」と、バラエティー番組でおなじみのセリフを使って笑いをとりました。

安倍首相のサプライズ出演は5分間でしたが、この舞台に同席した政府関係者によると「事前に台本は見ていたけど、相当アドリブで変えられていた」ということで、実は吉本芸人たちは安倍首相に対してもそれなりにアドリブを繰り出していたようです。

 去り際にはすっちーさんから「もういっぺんちゃんと話を聞きたいんでこんどお家行ってもよろしい?」と迫られ、人気ギャグの「乳首ドリル」をしに行くと予告されましたが、安倍首相は「ぜひどうぞ」と笑顔で対応しました。

異例の厳戒態勢・・・SPとまさかの“共演”も!?

さて今回、現役の総理大臣としては初めて吉本新喜劇の舞台に立った安倍首相ですが、迎え入れる会場「なんばグランド花月」、人呼んで「笑いの殿堂」は異様な雰囲気に包まれていました。

この日は、1日で3回の公演が行われましたが、安倍首相が出演したのは3回目の公演です。この回だけ、入り口ではSPがにらみを利かせ、観客には手荷物検査が実施されました。

さらに、会場内でもステージ付近には立ちはだかるSPたちの姿がありました。安倍首相の出演は事前には一切知らされていなかったので、観客もいつもと異なる様子に戸惑っていたのではないでしょうか。

さらに、安倍首相が舞台に登場すると、その後ろからSPも舞台上にあがりました。すっちーさんが「SPの人がものすごい勢いでにらんでる」と話題にすると、笑いだす観客とは対照的に、表情一つ変えることなく立ち続けるSP。そのプロ意識が垣間見えました。

安倍首相と一緒にSPも舞台へ

必死のサミットPR・・・その背景は 

今回の安倍首相のサプライズ出演はわずか5分間でしたが、G20にも協力している吉本新喜劇の関係者は「反響がすごい。周りからの反応も上々」と、その効果を感じていました。しかし、異例ともいえる吉本新喜劇の出演で盛り上げようとする安倍首相の真意はどこにあるのでしょうか?

政府関係者の一人は、G20に関して「実は地元が全く盛り上がってないんだよね…」と、不安の声を漏らしていました。安倍首相も舞台で「ひとつお願いがあるが交通規制をさせていただきたい。どうかご協力をお願いしたい」と呼び掛けたように、大阪の住民にとっては、開催中ある程度不便を強いられるのも事実です。

サミット成功には、地元の理解と協力は不可欠だけに、住民から不満の声が噴出する事態は避けなければなりません。開催まで2か月ほどに迫る中、「吉本新喜劇サプライズ出演」という“奇策”に打って出たのは、政府そして安倍首相の不安の裏返しかもしれません。

G20関連行事が行われる大阪迎賓館を視察する安倍首相(4月20日)

大阪と沖縄の衆院補選で自民候補が維新に敗北 

こうしてG20成功に向け自らPRした安倍首相ですが、今回の大阪訪問にはもう一つ大きな目的がありました。4月21日に投開票が行われた衆議院大阪12区の補欠選挙です。自民党の北川知克氏が死去したことに伴い実施された、いわゆる「弔い選挙」と呼ばれるもので、北川氏の甥・北川晋平氏を擁立した自民党にとっては、負けられない戦いでした。

これに対したのは、先日行われた大阪W選で勝利を挙げ、勢いに乗る日本維新の会の藤田文武氏、民主党政権時代に総務大臣などを務めた樽床伸二氏、共産党に所属しながら野党統一候補として異例の無所属出馬となった宮本岳志氏です。4氏による戦いとなりましたが、投開票日が近づくにつれ、徐々に北川氏の劣勢が伝えられるようになっていました。

衆院大阪12区の自民党候補の応援演説をする安倍首相(4月20日 大阪・寝屋川市)

そうした中、安倍首相は、投開票前日になって応援に入りました。ただ、自ら選挙区入りするということは、負けた場合には「首相が応援に入ったのに負けた」と言われてしまいダメージも大きくなります。

ある政府関係者は「大将っていうのは戦の最前線に入らないといけない」と勝敗に関係なく、安倍首相が選挙区入りする意義について語りましたが、結果は日本維新の会の藤田氏が当選を決め、安倍首相の応援むなしく北川氏は敗れ去りました。

衆院補選の結果について取材に応じる安倍首相(4月22日)

投開票から一夜明けた4月22日、出邸時に総理番記者らからの、いわゆるぶら下がり取材に応じた安倍首相は、「大変残念な結果になった」「参議院選挙に向けて、自民党として一人一人が今回の選挙を胸に刻み付けて、今一度しっかりと身を引き締めていかなければならない」と険しい表情で語りました。
安倍首相はその日のうちに、ヨーロッパやアメリカへの外遊へと旅立っていきました。

外遊に出発する安倍首相(4月22日 羽田空港)

帰国すればまもなく、天皇陛下が退位して新天皇が即位し、令和の時代が訪れます。沖縄の衆院補選でも敗れたため、「平成最後の国政選挙」を連敗で終える形になった安倍首相は、「令和最初の国政選挙」となる夏の参院選で巻き返せるのでしょうか。

大臣・副大臣の相次ぐ失言による辞任や、側近による消費税の増税凍結発言などで足下も揺らぐ中、不安を払拭し、政局を「まあるく収める」ことができるか否か注目されます。

(フジテレビ政治部 総理番記者 梅田雄一郎)

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