高齢者約5万人を追跡調査

自宅近くに「食料品が手に入る店」が「全くない」と答えた高齢者は、「たくさんある」と答えた高齢者に比べて、“認知症のリスク”が1.7倍という調査結果を4月10日、東京医科歯科大学の谷友香子助教らの研究グループが発表した。

研究グループは、2010年から3年間、全国15市町村在住の65歳以上の高齢者4万9511人を追跡調査。

「あなたの家から1キロ以内に、新鮮な野菜や果物が手に入る商店・施設はどのくらいありますか」との質問に対し、「たくさんある」「ある程度ある」「あまりない」「全くない」の4つの回答グループに分類。

各グループ内で約3年間の追跡中に認知症となった人がどれくらいいるのかを調査した。

その結果、3年間で認知症になったのは、「たくさんある」と答えた高齢者が4.8%だった一方、「全くない」と答えた高齢者は9.9%。

年齢や性別、教育歴、経済状況などの影響を調整した後の認知症リスクは、「たくさんある」に比べ、「ある程度ある」が1.2倍、「あまりない」が1.4倍、「全くない」は1.7倍となった。

「飲食店」や「コンビニエンスストア」、「公民館」の数についても同様の調査を行ったが、「食料品店」のような認知症リスクの差はみられなかったという。

なぜ自宅近くに「食料品店」がないと、認知症リスクが高まるのだろうか?
東京医科歯科大の谷友香子助教に話を聞いた。

様々な刺激が認知機能に良い影響をもたらす

――自宅近くに食料品店が「たくさんある」ことは、認知症予防にどのような関係があると考えられる?

近くに食料品店がたくさんあることで、外出頻度や歩行時間が増え、その結果、認知症のリスク因子である運動不足、高血圧、肥満、糖尿病、社会的孤立となるリスクが下がることで認知症のリスクが下がる可能性が考えられます。

また、近くに食料品店がたくさんあることで生じる様々な刺激(店を選ぶ、食べ物を触る、選ぶ、献立を考える等)が直接、認知機能に良い影響をもたらす可能性も考えられます。

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――「飲食店」や「コンビニ」、「公民館」についても類似の調査をしたが、大きなリスク差は見られなかった」。この理由としてはどのようなことが考えられる?

高齢者の外出の目的として、「食料品店」への買い物が大きな割合を占めています。
このため、近所に「食料品店」があることは外出頻度などの増加につながりやすいのです。

また、食料品店での買い物は自炊につながり、自炊は外食に比べ、健康的な食生活につながることがわかっています。

近所に「食料品店」があると、認知症リスクが下がる理由は分かったが、そもそも「食料品店」が近所にない高齢者はどうすればよいのか。
そして、「食料品店」自体が少ない地域ではどのような対策が必要なのかについて聞いてみると、「人の集まりやすい場所に移動販売などを行い、高齢者が外に出て、実際に目で見て買い物ができる環境をつくること、食料品店が少ない場所に店を出す場合にインセンティブをつけるなどの対策が有効かもしれない」と東京医科歯科大の谷友香子助教は語った。

プライムオンライン編集部
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