50万人の観光客に医師1人

沖縄・竹富島。人口350人が暮らし、年間50万人の観光客が訪れる昔ながらの沖縄の原風景が残る島だ…。

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そんな竹富島の医療を、一人で支えてきた医師がいる。
島唯一の診療所に4年目に赴任した福岡県出身の石橋興介医師。

島を変えるために様々なチャレンジ

350人の住民と年間50万人の観光客が訪れるにもかかわらず、石橋医師が赴任するまでの2年間、竹富島には常駐の医師はいなかった。医療機関は海を隔てた石垣島にしかないため住民の受診率は低くなり65歳未満の死亡率は全国ワーストとなっていた。

 こうした状況を変えようと石橋医師は診察を予約制にし定期的に診療所に足を運んでもらうことから始めた。

4年前に体に異変を感じ診療所を訪れた上勢頭 同子(うえせど ともこ)さん。
石橋医師はその症状から心筋梗塞と即座に診断。この適切な判断により上勢頭さんは一命を取り留めることができた。

上勢頭 同子さん:
危機一髪のところを先生に助けていただいた。医者がいないと言うことは、命が救えないものもあるんじゃないかな…

さらに石橋医師は、島民に健康について考えるきっかけを作るための「医療講話」や運動をする日を設けるなど住民の意識改革を図ってきた。その成果は数字にも表れている。石橋医師が就任以降、脳卒中や心筋梗塞で搬送される人が減少したのだ。

未来への種まき

一年ほど前から石橋医師が力を注いできたことがある。それは研修医の受け入れだ。

石橋興介医師:
将来またここで働きたいと思ってくれる研修医の先生が一人でもいてくれたらなという思いでスタートしました。
未来への種まきという意味合いも、とても強いです…

竹富島を去るという決断

多忙を極める中で石橋医師が種まきをしてきたのは、ふるさとに戻らなければならない時期が近づいていたからだ。
2018年12月、石橋医師は定例の医療講話で住民にある決断を伝えた。

石橋興介医師:
お知らせがあります…。今年度をもって、竹富診療所を卒業することになりました。
本当に竹富島の方々に支えられた4年間でした。長い間ありがとうございました。

石橋医師に命を救われた上勢頭 同子さんは…
上勢頭 同子さん:
すごい寂しいです…。涙が出てきます…

なぜ、石橋医師は竹富島を去る決断をしなければならなかったのだろうか?

石橋興介医師:
心苦しいというか島民の皆さんに申し訳ないという気持ちの方が大きいのかもしれないですけど…
ただ、実家も病院を経営していて父親も高齢になったので、そこを引き継がないといけない時期に来ていますし…

と思いをこぼした。

未来への種まきは花開くのか

竹富島を以前のように医師のいない地区にしてはならないと石橋医師がまいた種が花開いた。
 
2018年の6月と12月に竹富島に研修に来た岩手医科大学の寺内貴廣医師。
石橋医師の大学の後輩でもある。寺内医師が5月から後任として常駐することが決まった。

寺内貴廣医師:
住民の声とかによく耳を傾けてそれを踏まえてた上で、日々の診療にあたっていけたらと思います。

石橋医師は寺内医師が着任後も1年間は隔週で応援に入り、岩手医科大学でもテレビ電話で寺内医師をサポートする。

離島医療のモデルケースに…

こうした動きに 石橋興介医師は「全国の離島医療の一つのモデルケースになると思っていますね…」と話した。

医師の確保に苦労していた竹富町も石橋医師が確立させた医師や大学のネットワークを活用した「後任探しシステム」に期待を寄せる。

竹富町長の西大舛髙旬氏:
大学とつながりを持っていくことによって次の医者のことも恐らく考えてくれるでしょう…(継続的に)連携がとれるようなシステムを構築していくことが必要あるのかなと…思っています。

医師が島で得た宝物は…

この日は、石橋医師にとって島最後の診療日…

石橋興介医師はこの島で変わったことがあるという。

石橋興介医師:
今まで大きな病院で勤務していた時は、『患者』そのものを診るとというよりも『病気』を診ていたんですね…
竹富島に来て、“病気を診る”のはもちろんなんですけど、“病人”をちゃんと診るという姿勢ができたのは自分の医師生活にとっても、非常に大きなものになりました。

送り出す島民と石橋医師の想いとは...

石橋医師の送別会で島民たちは...
上勢頭 同子さん:
永遠の別れではないので、ある程度は気持ちは楽にしています…

大山栄一さん:
人生の中で一番大切な時期だったはずですけど、竹富にいらしてもらって本当にありがたいですね…

石橋興介医師は「心が通い合っているというか、そういう医療ができたのでそういった医療を福岡でも継承していきたいなと思います。」と
今後の抱負を語った。

島の人たちの見送られながら、石橋興介医師は「4年間、本当に良い経験をさせていただきました。宝物ですね…」と今の想いを語った。

(沖縄テレビ)

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