「令和の社会保障改革」へ3つの“壁”破壊を! 小泉進次郎氏ら若手提言への賛辞と冷や水

  • 小泉進次郎氏らのチームが令和時代の社会保障改革を提言
  • 「発想」「年齢」「制度」の壁破壊を提唱に賛否の声
  • 若手研究会は「百年健幸」の国目指すも課題は財源

令和時代の社会保障構築へ自民若手が議論活発化 

30年以上続いた平成の時代がこの4月で終わり、5月からは新たに令和の時代を迎える。そして少子高齢化が進展し、人口減少が進むこの時代の大きな課題となりそうな社会保障改革について、自民党の若手議員による議論が活発化している。

進次郎氏ら 3つの「壁」を壊して社会保障のリバランスを! 

自民党は今年2月、小泉進次郎氏が部会長を務める厚生労働部会の中に、若手議員らを中心とした「全世代型社会保障改革ビジョン検討プロジェクトチーム(ビジョンPT)」を立ち上げた。

全世代型社会保障改革ビジョン検討プロジェクトチーム初会合(2月)

初会合の冒頭、小泉氏は「人生100年時代を想定すると、年齢を基準とする制度の見直し、そして、多様な働き方の壁となっている制度の見直し、個人の行動変化を支える革新的な技術の導入などが必要と考えています」と述べ、「新しい社会保障の創造」が必要だと強調した。

小泉進次郎氏(2月)

そしてビジョンPTは、雇用・年金・データヘルス・若者の支援などテーマごとの議論を経て「令和の時代の社会保障改革」として提言案をまとめた。
小泉氏らは、現在の社会保障制度改革は給付削減か負担拡大かの二者択一的な議論だとし、第3の道を進むべきだと主張した。その第3の道とは、「発想」・「年齢」・「制度」という3つの壁を壊し、経済社会の担い手を増やすことで社会保障における受益と負担のバランス、支える側と支えられる側のバランスを回復すること(=リバランス)だとした。

平成モデルから令和モデルへ、年齢から能力へ 

「発想」の壁とは、日本人が20年学び40年働き20年の老後という一般的な人生モデルにとらわれていることだとし、生き方や働き方の多様化が急速に進む現代社会では、この人生モデルを前提とした社会保障制度改革の議論は避けるべきで、令和時代の人生モデルに基づく社会保障制度を目指すべきだとした。

「年齢」の壁とは、年齢を基準に現役世代と高齢者の線引きをすることだとし、このことが高齢者の就労意欲や活躍の幅を奪っていると指摘した上で、社会保障における負担の割合を年齢ではなく負担能力(所得や資産)で決めることで、全ての世代が公平にお互いを支え合うべきだとした。

「制度」の壁とは、たとえば社会保障制度が医療・年金・介護と分野別に整備されていることだとし、この縦割り型の制度が必要な支援を見つけにくく手続きを煩雑にしていると指摘した。そして、個人の多様な生き方に対応し、選択できて、その選択を支える社会保障制度を整備していくべきだとした。

提言案をまとめた会合(4月16日)

その上でビジョンPTは、短時間労働者や兼業・副業、さらにはフリーランスな職業など多様な雇用形態や働き方を前提とした「勤労者皆社会保険」の実現や「選択できる年金制度」「雇用制度改革」「医療・介護の提供体制改革」「健康づくりの抜本強化」「子育て支援」「厚生労働行政革命」など7つの改革案も合わせて提示した。

出席した若手議員からは「よくまとめられた提言案だった」と自賛する多数の声のほか、「社会の意識を変えるべくもっと突っ込んだ書きぶりを期待したい」との声も聞かれた。

その一方で、自民党内で社会保障や財政問題などを長く議論してきた議員からは「ただの言葉遊びだ(閣僚経験者)」と冷や水が浴びせられたほか、「経済や社会保障を本当に理解しているとは思えない内容だ(中堅議員)」などの厳しい見方も挙がった。

小泉進次郎氏(4月16日)

こうした反応を知ってか、小泉氏は「理解がずいぶん浸透してきている状況ではないか。ただ、いざ具体的な各論というものに入ってきたとき、少し総論的なリアクションとは変わるというのは政治の世界では常にあることですから、社会保障改革というのは万国共通の難しさがあるということをよく理解をして向き合わなければならない」と、提言の実現に向けて、今後厳しい意見にさらされることも覚悟しているかのような発言をしている。

「百年健幸」の明るい社会保障制度改革を! 

また、自民党の若手議員ら16人が昨年立ち上げた研究会、「明るい社会保障改革研究会」は令和時代の社会保障制度について、「『百年健幸』の国づくりを目指す」とする報告書をとりまとめ、4月11日、世耕経済産業相と根本厚生労働相に申し入れをした。

申し入れについて説明する「明るい社会保障改革研究会」の議員(4月11日)

彼らは、人生100年の安心の基盤は「健康」だとし、現在の医療・介護制度は、病気や要介護になってからの対応を中心とした制度であり、これを未然に病気を予防し健康づくりを促進する制度に移行すべきだとした。

病気の予防と健康促進を年金・医療・介護・子育てに続く社会保障の「第5分野」と位置づけ、制度として健康分野への財源や給付を得ようというのである。そのためにも、「個人の健康を増進すること」「社会保障の担い手を増やすこと」「成長産業の育成を図ること」の3つを同時に実現する「『3方良し』の明るい社会保障制度改革」の推進を優れた民間サービスを積極的に活用しつつ目指すとした。

実際、先進的な地方自治体では、優れた民間サービスを導入することで病気予防や健康増進に取り組む動きも見られる。また、いまや「健康」は一大ビジネスでもあり、健康のためにジムに通う人も相当数に上る。社会保障制度改革における民間サービスの関与は今後ますます欠かせなくなるだろう。

交付金の創設を提唱も課題は財源 

こうしたことを受けて報告書では、具体的な施策の1つとして「予防・健康交付金(仮称)」が掲げられている。地方自治体が「健康」に投資できるよう交付金を数百億円単位で創設し、実際に医療費が減ったなどの成果に応じて交付金を増額するという考えだ。成果報酬型とも言うべきこの施策により、民間企業の競争を促し、より優れた民間サービスを自治体が導入するという仕組みだ。

ただ、これらの実現には財源が大きな課題となる。報告書では交付金の財源については「地方創生推進交付金の活用のほか、新たな財源のあり方も含めて検討すべき」とあるが、高いハードルであることは間違いないだろう。

しかし、研究会メンバーの1人は「経産省と厚労省も巻き込んで早期にとりまとめることができた」と自負する。なぜなら、小泉氏が部会長に就任したことで話題となった厚生労働部会では、働き方改革や児童虐待対策など広範囲を扱うため、各分野の政策とりまとめには比較的時間がかかってしまうからだ。

さらに「これまではある程度、年配の政治家でないと改革はできないと思われていたが、そうではないということを示したい」と、若手議員で構成された研究会こそのこだわりも聞かれた。

こうした提言をもとに、令和の時代に相応しい社会保障制度改革が本当に実現するのか、それとも数多くある提言の1つにとどまってしまうのか、若手議員への期待をこめつつ、今後を注視したい。

(フジテレビ政治部 自民党担当 福井慶仁 寺田晃子)

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