おいしい食卓、楽しい給食、うれしいおやつ。
そんな日本の食を支えている農業だが、農林水産省によると、農業就業人口は2008年の298.6万人から2018年には175.3万人となり、10年間で約4割減少している。

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このように農家離れが進む中、救世主が現れた。それがSNSだ。

タマネギを使ったユニークなこの写真は、インスタグラムに投稿されると「おもしろい」「かわいい」と話題に。

これはタマネギ農家がPRのために開設したアカウントで、SNSで注目されると売り上げに変化があったという。

2525ファーム代表取締役・迫田瞬さん:
毎日投稿やり始めた4年前からは4倍の売上になっています。


徳島県の阿波ツクヨミファームでも約4倍、沖縄県のかんな農園では約2.4倍、沖縄県の熱帯果樹園小池さん家では約2倍へと、実はいまインスタやラインなどのSNSを活用して売り上げを伸ばす農家が数多く現れているのだ。

そこで、今回のココ調は、スマホを「農具」として儲けを倍増させる“SNS農家”を徹底調査した。

【事例1】インスタで売り上げ約3倍に!ブランドロゴも作成

最初にやってきたのは北海道石狩市。インスタグラムで売り上げを大幅アップさせた只野夢子さん(23)に話を伺った。

7月に出産予定だという只野さんは、2017年に両親の元で農業をスタート。
それと同時に親子3人でYUMEYASAIという自社ブランドを立ち上げ、ジャガイモやゴボウなどの根菜を中心に生産している。

藤井弘輝アナウンサー:
SNSで売り上げの変化は?

只野夢子さん:
約3倍上がりました。

なぜそんなにも売り上げが上がったのか?農作業の様子を見せてもらうと、お父さんとお母さんが作業する中、夢子さんはスマホを手にしゃがみ込んでいた。

藤井弘輝アナウンサー:
これ、遊んでいるワケではないですよね?

只野夢子さん:
そうです。インスタグラムにアップする用に撮っています。

これはPRのための重要なお仕事。
写真を撮影したら、その場で編集して投稿する。リアルタイムで新鮮な情報を投稿し、ファンを増やしているのだ。

さらに、ほかの農家と差別化を図るために、ブランドのかわいいロゴを作成。パッケージには、野菜の情報を伝えるLINEのQRコードも印刷している。 

そして、販売する野菜を 直売所に納品するところに行くと、 野菜がたくさん並ぶ中でも ピンクのロゴは目立っていた。
直売所でもスマホで撮影する只野さんにその理由を聞くと、「ストーリーを使って、今日の情報を発信していました」という。

24時間で動画が自動消去されるインスタグラムのストーリーズ機能を活用していた。
1日限定のセールやイベント、すぐ売り切れそうな商品のPRは24時間で消えた方が都合がいいのだという。

SNSのメリットは、生産者側からの情報発信だけではなかった。お客さんの投稿から、売った後の感想まで知れるのが魅力なのだ。

只野夢子さん:
お客さんにこうやって食べたらおいしかったよと聞いたりだとか、むちゃくちゃ楽しいです 。

【事例2】LINE×YouTubeで災害による“廃業の危機”に立ち向かう!

続いては、北海道・中富良野町へ。LINEとYouTubeで廃業の危機を免れた寺坂祐一さん(46)さんを訪ねた。

26歳で農業をはじめた寺坂さんは、社員5人でメロンを中心に生産している。2014年にYouTube、昨年にはLINEのアカウントを開設した。

SNS効果で、売上の変化はどれくらいあったのか?

寺坂祐一さん:
毎年、3%~4%上がっていっていますね 。


一見そこまで凄く見えないかもしれないが、この伸びは奇跡的な数字といえる。
実は昨年、北海道では長雨、干ばつ、地震、それに伴う2日間の停電があったため、農作物に深刻な被害が出てしまった。このままでは廃業の危機・・・というところで、窮地を救ったのがSNSだった。 

寺坂祐一さん:
SNSでつながっている人たちがたくさん購入してくれて。 前年と同じ売上で。

被害にあった小さかったり、出来が悪い作物もSNSで呼びかけるとたちまち完売したという。

そんな寺坂さんは、毎朝、農作業前の6時から8時に動画の編集や投稿を行っている。

寺坂祐一さん:
今やっている農作業の様子をお客さんやみなさんに伝えたいなと 思って、動画編集やっています。ただメロンじゃなくて、すべての物語こういうこともあったとか、毎日伝えていくことによって、食べた(時に)思い入れも伝わるかなと思って。

日々の作業や苦労を発信することにより、お客さんにもメロンを育てる気持ちを共有してもらっているという。
そんな寺坂さんにとって、スマホは欠かせない存在となっているようだ。

寺坂祐一さん:
これ(スマホ)僕、農具だと思っていて。

取材班:
農具!?


寺坂祐一さん:
天気予報も見られるし、農薬の計算とかアプリもあるんですね。

農薬の希釈濃度を計算して教えてくれる「農薬調製支援アプリ」や農園の管理をサポートする「アグリノート」など、さまざまな農業アプリが登場している。
そして、寺坂さんにはお客さんと繋がるために気をつけているポイントがあるという。

寺坂祐一さん:
売り込みはやらないです。「買ってくださいよ~」って、なんか友達にはなりたくないですよね。

宣伝色が強い告知を極力出さないようにしたところ、売上アップにつながったのだという。
SNSで売上アップしたことよりも、直接お客さんとコミュニケーションが取れるようになったことが、一番の喜びだと話してくれた。

寺坂祐一さん:
楽しいんですよ。コメント欄に「ありがとうございます」とついた時には、よっしゃーって! 

【事例3】Facebook×インスタグラムで“無農薬”をアピール!売り上げは約10倍に

最後は、千葉県松戸市の農家へ。Facebookとインスタグラムで販路を拡大した花島綾乃さん(25)を取材した。

無農薬野菜をウリにして年間約40種類の野菜を作る、生後半年の赤ちゃんのママである綾乃さんは、3年前に夫婦で農業を始めた。
気になる売り上げは・・・?

花島綾乃さん:
以前より10倍くらい上がりました。


当初は、無人販売所だけで野菜を売っていて、月の売り上げは約5万円。
夫の隼さん(34)は「正直、派遣とかのアルバイトで生計をたてていました」という。それが、今では約10倍に売り上げがアップしたというのだ。 

何とか農業だけで生計を立てるため、あることをウリにして野菜をSNSで販売したところ大ヒットした。

花島綾乃さん:
ウチは農薬不使用なので虫食いがあるところは、あえて(写真に)載せたりして。

大きさがバラバラだったり、見た目がB級品でもありのまま投稿したところ、無農薬だというセールスポイントが強調され人気に。売り上げは、約5万円から約50万円になった。

「もっとみなさんに農業の良さを知ってもらって、若い人にも 就農してほしいなって思いますね」と笑顔を見せた花島綾乃さんの農園には、SNS投稿を見て農業に興味を持ち、ボランティアとして働く人もいるという。

日常を記録するためや趣味としてだけでなく、今や仕事にも活用されているSNS。生産側からの情報発信とともに、直接交流する機会の少ない消費者とのつながりを生む有益なツールとなっていた。

(「めざましテレビ」『ココ調』4月17日放送分より)

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