初の“原発マスクなし視察”首相同行記 散在する桜とナンバーなき車が物語る事故の影響

カテゴリ:国内

  • 首相が初めて福島第一原発をマスクと防護服なしで視察
  • 桜とノーナンバー車が物語る事故の爪痕
  • 新庁舎開庁とJヴィレッジ再開に見えた復興への歩み

記者も初めて「1F」に 

安倍首相が14日、5年7か月ぶりに福島第一原子力発電所を視察したのにあわせ、私も同行記者として原発内に入った。これまで首相の東日本大震災の被災地視察に2度同行したほか、個人的にボランティアで被災地を訪れたことがあったが、原発内に入ったことは当然ながら無く、ニュース映像を通してしか見たことの無かった内部の様子が非常に気になっていた。今回、首相が福島第一原発、通称「1F」を視察したポイントは、まさに以下の写真に表れている。

左:2012年12月、右:2013年9月 いずれも福島第一原発内
4月14日 福島第一原発内

初のマスクなし原発視察 

今回、首相は初めて、マスクや防護服などを着用せずに視察した。実際、原発構内の放射線量は大幅に低減され、政府関係者によると敷地の約96%が一般作業服で立ち入り可能となった。すなわち、全面マスクや防護服といった「物々しい」装備が必要なのは、建屋周辺など、ごく一部のエリアに限られるのだ。視察には、こうした廃炉作業の進捗を国内外に発信する狙いがあったのだ。

原発構内では、記者団も首相と同じルートで案内され、取材を行った。私がまず抱いた感想は「思ったよりも静かで整然としている」ということだった。詳細は言えないが、入構にあたっては空港に比肩する厳しいセキュリティチェックを通過する必要があり、得も言われぬ緊張感があった。
一方で、首相一行が最初に到着した「新事務本館」は大変綺麗な外観で、語弊を承知で形容すると工場見学のような雰囲気だった。内部にはローソンや食堂もあり、30~40年続くとされる廃炉作業において、1日当たり4000人を超える作業員らの仕事はここで日々連綿と行われているのだなと感じた。

散在する桜とナンバーなき車が物語る事故の影響 

福島第一原発内

日曜日だったということもあるかもしれないが、構内は非常に静かで、散在する桜の木々が、無味乾燥とした汚染水タンクが林立する敷地内に一筋の彩りを与えていた。関係者によると、震災前の原発敷地内には木々が広がり「緑の原発」と呼ばれていたが、発災後は地下汚染水対策のため、桜を含めたほとんどの木が伐採されたという。しかし、こうした桜が、少しは作業員の癒しになるということで、これ以上の伐採は行わないことになっているそうだ。

また、テロ対策のためとして記者団のカメラや携帯が回収されたため、写真は提供できないが、構内には「ナンバープレートのない車両」が大量に停まっていた。性能には問題がないものの、被爆してしまったために敷地外には出せない車両で、「構内専用車両」として現在も活用されている。こうした、外に出られない車両のために、専用の自動車整備場やガソリンスタンドが構内に設けられている。

福島第一原発内

安倍首相は、福島第一原発の主に1~3号機を見下ろす高台から、廃炉作業の進捗状況を視察した。ほぼ同じ場所を記者団も訪れたわけだが、各記者の個人線量計が示した約30分間の視察中の積算線量はそろって0.005ミリシーベルト未満(=歯のレントゲン1回分にも満たない値)だった。安倍首相は「現場のみなさんの大変なご努力によって廃炉作業が一歩一歩確実に進んでいる」「今後も廃炉、汚染水対策について国が全面にたって取り組みを進めていく」と強調した。

新庁舎開庁も…息の長い復興の取り組み 

福島第一原発の視察に先立ち、安倍首相は原発所在地である福島・大熊町内の大川原地区を視察し、同町の新庁舎の開庁式に参加した。大熊町の中心部は本来、JR常磐線・大野駅周辺だが、まだ避難指示が解除されていないため、大川原地区に役場が設けられることとなった。

4月14日 大熊町役場新庁舎開庁式のテープカット

そのため、開庁式では華々しいテープカットが行われ、首相も「本格的な復興に向けた第一歩を踏み出すことができた」と祝辞を述べた。一方で住民からは「帰還困難区域で特定復興再生拠点に指定されていない地域については、今も帰還の見通しが示されていない」との懸念が示され、首相は「町長、町民とよく相談しながら検討していきたい」と応じた。復興には息の長い取り組みが必要であることを改めて感じさせられた。

福島・大熊町

地元の農家も交えた車座での集会においては、安倍首相は地元産のお米で作られたおにぎりを試食し、「炭水化物ダイエットをやっている人も、思わずそのことを忘れて全部食べてしまう」と絶賛したうえで、首脳会談などにおいて「風評被害の払しょくに今後も努力していく」と強調した。実際、首相を含めた官邸スタッフやSP、また記者などが使う首相官邸内の食堂では、福島県産のお米が毎日、提供されている。

「まさか再開できるとは思わなかった」Jヴィレッジ 

同日、安倍首相は東京オリンピックの聖火リレーが出発するサッカー施設「Jヴィレッジ」を視察した。「Jヴィレッジ」は、東日本大震災の後、原子力発電所の事故対応拠点になっていたが、4月20日にサッカー練習場としての使用を全面的に再開する予定で、首相は地元の子供たちと交流したほか、楢葉町、広野町の町長らと会談し「地域が見事に復興を成し遂げた姿を皆さんと一緒に発信していきたい」と強調した。

4月14日 Jヴィレッジ

関係者との車座集会では、「まさかJヴィレッジが再開できるとは思わなかった」「再開を見届けたい思いで、東京での再就職が決まっていたものの、地元に戻った」という発言があり、安倍首相も「残っていただいてありがとうございました。皆さんがいなければ、いくら国が力を入れても町は復興しなかった」と応えた。

Jヴィレッジ

Jヴィレッジへの道中、「聖火リレーの出発地」であることを誇るのぼりが多く掲げられていて、まさに復興、活性化の象徴なのだろうと感じた。

被災地をめぐっては、とりわけ政治部においては、桜田前五輪相の復興をめぐる失言など、政局に絡めて報道されることが多くなっている。今回の視察に同行して、被災地の現状、また1つ1つの復興のステップそのものについて、被災地の目線に立って関心を持つ必要があると、改めて考えさせられた。

(フジテレビ政治部 首相官邸担当 山田勇)

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