日本人は米国人より野菜を食べていない! 肉食化?白書から見える生活の変化と課題

カテゴリ:国内

  • 食育白書の議論で見えてきた興味深いデータ
  • 朝食を食べない子どもは増加、日本人の肉食化も?
  • G20に向けた世界的な課題“食品ロス削減”

白書から見える日本人の生活の変化 

“白書”というものをご存じだろうか?“白書”とは、政府の役所が編集した刊行物であり、政治や経済、社会の実態、政府が講じる施策などを国民に周知することが目的で作成されている。また、“白書”という名称自体は、イギリス政府の議会に対する報告書の表紙が白い紙だったことに由来している。

4月10日に行われた自民党の「農林・食糧戦略調査会」「食育調査会」「農林部会」の合同会議では、国民が健康な心身を培い豊かな人間性を育むための“食育”を推進する『食育白書』や食料・農業・農村に対する国民の理解と関心を高めるための『食料・農業・農村白書』などについて議論が行われた。そこで見えてきたものは、我々日本人の生活様式の変化だった。

自民党の合同会議(4月10日)

朝食を食べない子どもが増加傾向に転じる 

「食育白書」の中でまず目を引いたのは、朝食を食べない子どもの割合が近年増加傾向に転じていることだ。朝食を毎日食べることについて白書では、「基本的な生活習慣を身に着ける観点から非常に重要」と記載し、政府は2020年度までに朝食を食べない子どもの割合を0%にすることを目標としている。

しかし、実態は厳しいものがある。小学6年生を対象にした調査では、2007年度に朝食欠食率は8.3%だったが、徐々に減少に転じ2013年度には6.2%まで減少した。しかしそこから再び上昇傾向となり、2016年度6.6%、2017年度6.8%、そして2018年度には8.0%にまで上昇してしまっている。中学3年生を対象にした調査でも、2007年度の4.8%から2013年度に3.7%に減少したものの、2018年度には5.5%に増加してしまっている。

2018年度「食育白書」(案)より

白書には、文科省による調査で、朝食を食べない事情としては「食べる時間がない」「食欲がない」といった理由が上位を占めていることや、毎日同じくらいの時間に「起きる」「寝る」をしていない子どもほど朝食欠食率が高い傾向があることも示されている。
子どもたちが健やかに成長していくためには、適切な運動、調和のとれた食事、十分な睡眠が大切との観点から、2006年より「早寝早起き朝ごはん」国民運動が、文科省と民間の全国協議会の連携のもと推進されている。

2018年度「食育白書」(案)より

2007年度からの朝食欠食率の減少傾向はこの運動のある程度の効果があったとみられる。しかしながら近年の再上昇傾向は、日本人のライフスタイル、家庭環境が大きく変化したことが要因だといえる。
女性活躍や女性の就業増加も影響がある一方、働き方改革や、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)という面も重視される現在において、子どもたちの問題は、大人一人一人の意識の問題でもある。個々の家庭から社会全体でも、こうした問題に取り組むために、意識の改善が必要な状況だと言える。

アメリカ人より野菜を食べない日本人 

「食育白書」の中では、日本人1人あたりの年間野菜消費量も記されている。日本人1人の野菜消費量は1968年の137キロをピークに2013年には102キロと年々減少傾向にある。さらに、面白いデータ比較として、アメリカと日本の野菜消費量の推移が記されているのだが、アメリカ人は近年、日本人よりも多く野菜を消費しているのだ。

アメリカの1人あたりの年間野菜消費量は1965年に91キロだったが徐々に上昇し、1990年には、減少傾向の日本とほぼ同じ水準にまで上昇し、2013年ではアメリカ114キロ、日本102キロと逆転される状況となっている。

2018年度「食育白書」(案)より

「食料・農業・農村白書」には日本人の肉食化を裏付けるデータも掲載されていて、総務省の「家計調査」からの引用になるが、生鮮肉の食料消費支出が2008年に比べ、2018年には全世代で増加している。

2018年度「食料・農業・農村白書」(案)より

さらに2018年の食品別に見た食料消費支出額を、10年前と比べてみた数字でも、1位の外食、1位の調理食品に続いて、3位が豚肉(2008年は4位)、6位に牛肉(同6位)、10位に鶏肉(同14位)とトップ10に3つの肉類が入っていることも明らかになっている。

アメリカ人はなぜ野菜を食べる習慣をつけたのか?

話は脱線するが、アメリカ人の野菜消費量の増加の背景にも触れてみたい。1960年代のアメリカは世界一の医療費に対して、平均寿命は世界26位。膨大な予算を使ってもガンや心臓病が一向に減らないことに頭を悩ませていた

アメリカ政府はその原因調査に乗り出し、アメリカ人の食生活や、病気や死因の変化、さらにはヨーロッパやアジアとの比較も調査対象とした。その結果、1977年「マクガバンレポート」という5000ページの膨大な調査結果がまとめられ、食生活と病気の関係が非常に重要だという点が発表された。(※ちなみに日本食はこの時に高く評価されている)

この中では、ガンや心臓病などの病気と食事の因果関係が示されていて、病気を未然に防ぐための自然治癒力の向上にも栄養バランスの取れた食生活が重要であること、野菜や果物を多くとる必要性などが指摘された。
これを受けて、アメリカ政府は、肉食中心の食生活を改める栄養政策を推進していく。さらには1991年には政府と民間団体が協力し、ガンの予防のために「野菜や果物を1日5皿以上食べよう」というシンプルなメッセージを訴える、「ファイブ・ア・デイ運動」を開始。全米35000店以上のスーパーマーケットが参画するなど、国民運動を巻き起こした。

その後は、1992年にピラミッドのイラストで1日に必要な食品群を示した「食品ピラミッド」を発表。
2011年にはオバマ前大統領夫人により「お皿の半分を果実及び野菜に」とのスローガンで「マイプレート」が発表され、4色のお皿で栄養バランスを表現し、バランスの良い食事を視覚的に理解できるようにした。

その他、例えば今ではコンビニなどでもおなじみの「カット野菜」の普及を企業主導で推進したことも、野菜消費の増加に繋がっている。こうした官民一体の取り組みの結果、米国内では野菜や果物の摂取量が増加し、生活習慣病での死亡率が減少するなど大きな成果を挙げたのだ。

国際課題“食品ロス削減” 

今年は日本初開催となるG20サミットが大阪で開かれるが、環境問題は1つの重要なテーマになると言われている。その環境問題の観点からも、食育白書に記されている重要な課題として「食品ロス削減」がある。

白書によると2015年度の推計では、日本で本来食べられるにも関わらず廃棄されている食品ロスは646万t国民1人当たり1日130g(お茶碗一杯分)、年間51kgにもなる。これは日本人1人が年間に食べるお米の量(年54kg)に匹敵するという驚きの結果なのだ。

2018年度「食料・農業・農村白書」(案)より

恵方巻の大量廃棄防止に政府が動いたことも記憶に新しい。世界で今、積極的に取り組みが進められている政策に、SDGs(持続可能な開発目標)というものがあるが、この中でも「2030年までに小売・消費レベルにおける1人当たりの食料の廃棄を半減させる世界目標」が掲げられている。まさに問題は待ったなしの状況となっている。こうした食品ロス削減についても、白書には記述がある。G20で日本がどのように世界を主導し、この社会的課題への解決策を示すことができるのかも問われている。

“白書”というと、なんだか読むのをためらう人も多いかもしれないが、意外に興味深いデータが目白押しとなっている。それぞれの白書は省庁のHPでも公表されている。今回記述した白書も5月に閣議決定された後、随時公開されていく予定だ。ぜひ一度興味を持って、手に取ってもらえればと思う。

(フジテレビ政治部 与党担当キャップ 中西孝介)

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