資生堂は横浜のみなとみらい21地区に、一般客も入館できるの研究開発拠点「グローバルイノベーションセンター」を13日から新たにオープンする。研究所を都市部に設立することで、研究員と消費者が交流を深め、製品の開発に活かすほか、小売りなど異業種とのオープン・イノベーションも加速する狙いだ。資生堂はこの新たな拠点に約400億円を投じた。
この記事の画像(7枚)研究所としては異例の“オーダーメイド型”店舗の導入
入口近くに設置されているのは、客の目の前で研究員が化粧水や乳液の調合を行う「ビューティーバー」と呼ばれる製造スペース。この場所では、研究員が自社で開発した最新のデジタル機器を使って一般客の肌質や新陳代謝の状態などを解析する。
その場で一人一人に合わせたカスタム化粧品を作るまさにバースタイル。
資生堂はこうした過程で得られる詳細なデータを蓄えて、次の製品開発に役立てたいとしている。
研究所内に“カフェ”“ジム”併設の狙いは?
研究所にはビューティーバーのほか、スムージーや野菜を中心としたメニューを提供するカフェや、約150年の歴史を持つ資生堂が培ってきた技術を紹介するミュージアム、ランニングやウォーキングの運動プログラムを提供するジムなどが併設されている。美容に関連する幅広いサービスを提供することで、多くの一般客に足を運んでもらいたい考えだ。
一方、小鳥のさえずりが聞こえる中、キャンプのテントの中で会議をする光景も。
この一風変わったオフィススタイルは、研究に没頭しがちな従業員に「自由な環境」で新たな働き方を提案している。資生堂は世界で約1200人いる研究員を2020年度中には約300人増やす計画だ。また、現在売上高の4パーセントを占め、年間約300億円かけている研究開発費を、数年後までに4パーセントまで増やし、研究開発を強化することで世界でも通用する「主力の新製品」の開発を目指す。
世界を目指す資生堂の“課題”は?
競争が激しい、美容や化粧品市場において、今後も資生堂が勝ち抜いていくために必要なことな何か?
魚谷社長は、「グローバル化」を見据えるうえで多様な消費者に対応できる新たな開発力の必要性を語った。
資生堂 魚谷雅彦社長:
大きな視点で見ると、世界の戦いが始まっている。
本格的に海外市場での競争が我々にとって重要になってくる。そのうえではイノベーションというのがすごく重要な役割を果たすと思う…
グローバルに展開するということは我々が経験していないような市場やお客様もいるので“理解力”を増やさなければならない。多様性を価値として、文化として(我々も)持たないといけないと思う。
“メイドインジャパン”のブランド力向上
財務省の貿易統計によると、日本の化粧品市場は、2016年に初めて輸出額が輸入額を上回るなど、中国を中心にアジアにおける日本製化粧品の需要が高まっている。そんな中、資生堂はネット販売を強化するために中国アリババグループとの業務提携も発表。中国でのネット販売強化やビッグデータを活用した商品の共同開発も進める。
一方、年内にも日本国内で36年ぶりとなる新工場を栃木に新設、さらに大阪や福岡でも工場の増設などを計画していて、“メイドインジャパン”ブランドを生み出す工場にかける設備投資額は総額1700億円を超える見込みだ。
世界の事業所で68か国の国籍の従業員が働き、2018年から公用語を英語にするなど、グローバル化を急速に進めていている資生堂グループ。
今回の研究所設立で、その流れを加速させることになるのか、新たな試みに関心が集まっている。
執筆 :フジテレビ経済部 美容・コスメ担当 奥山 未季子