内閣府の推計によると、2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人がなるとみられている「認知症」。

誰にとっても他人事ではないわけだが、明治安田総合研究所が40~64歳の男女を対象に意識調査を実施し、「認知症になったとき、家族や親族で介護してくれるのは誰か」と尋ねたところ、未婚者の約5割が「誰もいない」と回答したことが分かった。

この調査は、明治安田総合研究所が2018年6月、「人生100年時代の生活」をテーマにインターネットで12,000人を対象に実施したもの。

認知症になった場合、家族や親族で誰が介護をしてくれると思うかを尋ねたところ、未婚者では男性56.9%、女性54.3%が「誰もいない」と回答。
配偶者と離婚や死別をした離別者は「誰もいない」が男性47.3%、女性32.5%だった。

認知症になったとき、「介護してくれる家族は誰もいない」というのは切実な悩みだが、未婚者の5割超がこのように回答した背景は何なのか?そして、今後どのようなサポートが必要になるのか?

明治安田総合研究所の担当者に話を聞いた。

背景にあるのは「生涯未婚率の上昇」と「単身高齢者の増加」

――認知症になったとき、「介護してくれる家族は誰もいない」と回答した未婚者が男女ともに5割を超えた。この背景として考えられることは?

認知症の高齢者数は、団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年には約700万人と、65歳以上の高齢者の5人に1人となると予測され、さらに軽度の認知障害まで含めると、高齢者の3人に1人となると予測する研究者もいます。

一方、50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合である「生涯未婚率」の予測をみると、男性23.4%・女性14.1%(2015年)から、2040年には50歳になる男性の約3人のうちの1人、女性の約5人のうち1人が生涯未婚であると予測されています。

これまでの単身高齢者の多くは配偶者に先立たれた妻や夫でしたが、今後は未婚の単身高齢者の増加が見込まれます。

未婚者には子どもがおらず、配偶者と死別した単身高齢者よりも社会的に孤立しやすい状況にあります。
近年は大都市だけではなく、地方においても近所づきあいが希薄化しており、このような面からも単身高齢者の社会的孤立の問題は深刻化しつつあります。

こうした状況が背景にあると考えられます。


――現時点においても、単身高齢者は増えている?

実際、単身高齢者は1990年には162万人でしたが、2015年には593万人に増加。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年には896万人にまで増加する見通しです。

また、2015年の高齢者の独居率は男性が13.3%、女性が21.1%ですが、2040年には男性が20.8%、女性が24.5%に上昇する見通しです。

「見守りネットワークを再構築することが必要」

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――こうした切実な状況に対し、今後、どのような対策が必要?

大都市だけではなく、近年は地方でも近所づきあいが希薄化しており、単身高齢者の社会的孤立や認知症をはじめとした介護の問題は全国的な課題と認識すべきです。

対策としては、民間企業の協力を得ながら、見守りネットワークを再構築することが必要。
 
さらには、単身高齢者の社会的孤立を回避し、できるだけ元気に生活し、介護を予防するためにも、地域社会に居場所を作ることが重要であり、「通いの場」(サロン)にもその役割が期待されます。
 
とはいえ、未婚の認知症高齢者数が増加するのは確実なので、今後、社会的には受け皿施設の整備を、危機感をもって進めるべきであり、未婚者としても現役のうちに介護施設入居も見据えた介護費用の計画的な資金準備が避けられないでしょう。

以前編集部でも、“認知症の新たな治療薬”を世界の製薬会社が開発を進めているが、“治験の中止”が相次いでいる背景をお伝えしたが、特効薬の“開発の壁”が高い中、人生100年時代に向けて社会全体でどのような受け皿を構築できるかは早急に考えなければならない課題だ。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。