なんでも貸し借り&共有! シェアリングエコノミーに政府躍起のワケ

カテゴリ:国内

  • シェアリングエコノミーって何?
  • 阿波おどりでも“同じ阿呆なら貸さなきゃ損損?”
  • 政府が躍起になる理由と普及への課題

シェアリングエコノミーとは 

「シェアリングエコノミー」という言葉をご存じだろうか。
政府の「シェアリングエコノミー検討会議」の定義によると、「個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む)をインターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」とやや硬い表現となってしまうが、民泊(Airbnbなど)やUberなどの配車アプリを例として考えてもらえればイメージがしやすいだろう。
シェアリングエコノミーは、「シェアエコ」という略称が全国紙で用いられるなど認知度が上がっており、様々なサービスが登場する中で市場規模は約5000億円程度にまで広がった(2018年:内閣府調べ)。

シェエアリングエコノミーのイベント(3月22日)

シェアリングエコノミー推進の意義 

シェアリングエコノミーは、ともすればベンチャー企業などが各々独自に取り組んでいる事業と受け取られるかもしれない。しかし、実は政府においても内閣官房が旗振り役となって、日本の成長戦略の一環として推進している“政策”でもあるのだ。政府が考えるシェアリングエコノミー推進の意義をいくつか紹介したい。

1 一億総活躍社会の実現
 フルタイム勤務の難しい高齢者や専業主婦などが、「スキマ時間」などを柔軟に活用し働くことができる。

2 社会全体の生産性向上
 「空き駐車場」「空き家」などの「遊休資産」を活用することで社会全体の生産性が向上される。

3 地方創生の推進
 雇用確保や地域経済活性化、観光需要の喚起など地方創生のツールになる。
 
特に注目したいのは、地方創生の文脈におけるシェアリングエコノミーだ。地方に観光資源があっても、その需要が一時的な場合、追加投資が難しいためキャパシティーがなく観光需要を取りこぼしてしまっているケースが多々ある。
その一例が、徳島市の夏の一大イベント「阿波おどり」だ。「阿波おどり」には例年120万人近い観光客が訪れるが、市内の宿泊施設の収容能力は6,100人程度と明らかに足りない。そこで、徳島市は「阿波おどり」期間中に限った「イベント民泊」を認めることで約300人分(一般的なホテル1棟分)の宿を確保し、外国人旅行者を中心に好評を博した。

政府、地方自治体の取り組み 

政府は、こうした地方の先進的な取り組みを支援し、好事例を横展開すべく、シェアリングエコノミーを用いた社会課題の解決や経済活性化のための事例集「シェア・ニッポン100」を3月22日に公開した。現状では全国の計76事例の取り組みを紹介しており、今年度中に100事例にまで広がることを一つの目標としている。

政府が講評した「シェア・ニッポン100」

地方自治体レベルでも、域内におけるシェアリングエコノミーの取り組みを「見える化」する動きが広まっている。
来年に東京オリンピック・パラリンピックを控えた東京・渋谷区の観光協会は、一般社団法人シェアリングエコノミー協会と連携協定を結び、域内で提供される様々なシェアリング事業を取りまとめた専用ホームページやパンフレットを作成していくことで合意した。例えば、大会期間中はコインロッカーや駐車場が劇的に不足することが見込まれるため、シェアリングエコノミーを活用し観光振興につなげていく狙いがある。

シェアリングエコノミーのイベントで挨拶する渋谷区観光協会・金山代表理事(3月22日)

シェアリングエコノミーの課題

一方で、シェアリングエコノミーならではの課題も存在する。総務省の調査によると、日本は他国に比べシェアリングエコノミーの認知度はまだまだ低く、加えて「安全性・信頼性」への要求が高い傾向にある中、次のような点が課題として挙げられている。
 
1 安心・質の担保
 個人間、いわば素人同士でサービスを提供するのがシェアリングエコノミーの特性であるため、「どのような人がサービスを提供しているのか不安」「悪質な利用者に使われないか心配」「質にばらつきが出るのでは」などという懸念が出てくるのは当然だろう。

2 法整備の遅れ
 シェアリングエコノミーを想定していない既存の法律が、個人間のサービスに対しどこまで適用されるのか不明確で、法に照らした規制や取り締まりが難しい状況になっている。
 
安心の確保について、実は「シェアリングエコノミーの方が安心できる」という見方もある。業界関係者によると、ほとんどのサービスが事前登録制を取っているほか、利用者・提供者双方が互いに評価を行うレビューシステムを備えている。これにより悪質な利用者を排除できるほか、サービス提供者の信用も客観的に担保されることになる。
 
また、個人間のサービス提供ゆえ質にばらつきが出る点について、政府関係者は「シェアリングエコノミーはあくまで選択肢の一つで、『フリーマーケット』のようなものだ」と語る。すなわち、均一の質を担保することはそもそも難しく、例えば利便性やコストパフォーマンスを重視する人にとっての新しい選択肢となることを期待しているのだ。

内閣官房の入っている庁舎

そのうえで、政府はシェアリングエコノミー向けのガイドラインを定めることによる「質の担保」に乗り出している。内閣官房は基準となる「シェアリングエコノミー・モデルガイドライン」を制定、提供し、民間団体であるシェアリングエコノミー協会がサービスを認証審査する仕組みを取っている。

基本的には民間に審査を委ねつつ、基準などがいわばお手盛りにならないように、国がその質をしっかり担保するという構図だ。「法整備が一番確実ではないか」という指摘もあるだろうが、刻々と進化を遂げるシェアリングエコノミーのスピードに、何かと制定に時間のかかる法規制では追いつくことが難しい。加えて、法制化すると、ちゃんと法律を守るために顧問弁護士等を雇う必要が出てくるなど、小規模ベンチャーや個人事業主にとって、コンプライアンス(法令遵守)コストが課題になってしまう。これらの点から、政府は、まずはガイドラインの制定による質の担保を目指している。

シェアリングエコノミーのイベントで挨拶する平井IT政策担当相(3月22日)

今後に向けて

シェアリングエコノミーには多様な事業者が参画しているが、AirbnbやUberばかり有名となっている現状もあり、ともすればネガティブなイメージを持つ、半信半疑の人も多いだろう。そのため、政府は成長戦略の一環として、そのメリットをアピールしていくことに躍起だ。

平井IT政策担当相(3月22日)

IT政策を担当する平井大臣は「シェアリングエコノミーが一体何なのかほんとに理解している人はまだまだ少ない」と述べたうえで「東京や大阪に限った話ではなく、(2019年の)ラグビーワールドカップ、(2020年の)東京オリンピック・パラリンピック、(2025年の)大阪万博というスケジュールを視野に入れながら各地域で検討して欲しい」と強調した。シェアリングエコノミーをめぐる国、地方、そして民間における今後の動きに注目していきたい。

 
(フジテレビ政治部 首相官邸担当 山田勇)

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