海苔大凶作 なぜ?

お花見弁当に欠かせないおにぎりの「海苔」が大凶作だという。
競り価格は、5年前と比べ5割も上昇、食卓への影響に心配の声も多く聞かれる。

縦21cm×横19cm=1枚として取引される海苔。
2008年度はおよそ90億9000万枚あった生産量が、その後増減を繰り返し、2018年度は70億枚に届かない見通しだという。
これは、実に46年ぶりの低い水準だという。

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各地の海苔養殖場でトラブル続出

海苔の養殖現場で何が起きているのか。

2017年に生産量全国3位だった福岡県の「福岡有明海漁業協同組合連合会」境真秋指導部長によると「海の栄養塩・窒素とリンが低くなるという現象が起き、色が落ちて通常黒っぽいのが茶色くなった」と話す。

通常の海苔は黒々と光沢があるが、2018年度に収穫した海苔は栄養不足で2割程度が色落ちしているという。
実際、比べて見ると、確かに2018年度の海苔は赤茶けて見える。

また、全国1位の佐賀県も同様の被害があり、生産量は2017年度に比べ12%減少、金額にして12億円の減少となった。

また、全国5位の宮城県では、2019年1月思いもよらない出来事が起きた。
「宮城県漁業協同組合七ヶ浜支所」の渡邉敏支所長代理によると、仙台港で貨物船の油流出事故が発生し、漁場から養殖施設と海苔の全面撤去を行う事になったという。

事故後の海苔の養殖棚を見ると、重油が付着しているのが分かる。
海苔の最盛期だったこともあり、1月末までの時点で12億円の損失を被り、今シーズンの生産量は通常の4分の1にも満たない2500万枚程度の見込みだという。

「大凶作」要因は雨不足も

さらに「千葉県水産総合研究センター」の川津所長によると、今年度は海苔が大凶作になる条件がいくつも重なっているという。
その一つが天候不順だ。

国内最大の産地・有明海に近い2つの地域では、海苔養殖期の2018年11月から3月にかけて、平年に比べ雨が少なく、川からの栄養が十分に届かない状態だった。

海水温の上昇が及ぼす被害

さらに、異変は海でも起きていた。
「千葉県水産総合研究センター」の川津所長によると、海苔には適水温帯があるが、海面水温が上昇したため成長しなかったという。

また、海水温の上昇により、魚の活動が活発になって、餌として海苔を食べてしまうという影響も出ているという。

ついに海苔メーカーも値上げに踏み切った

こうした重なった為か、競りでの海苔1枚あたりの価格は10年前の8.8円に比べ、2018年度の2月末時点で13.77円。およそ5円高騰している。

贈答用の海苔などを販売している東京都内の海苔店では「この状況が続く場合、お客様には価格の値上げをお願いするかもしれません」と話す。
今のところ、贈答用の高級海苔では大きな価格変動はないが、家庭用海苔では値上げの波がきている。

都内のスーパー「アキダイ」関町本店の秋葉弘道社長によると、以前は「10枚で100円」だったものが、現在は「7枚で100円」の価格で販売しているという。

単純計算で5割程度の値上げだが、価格の変動は常にあるという。

近年まれにみる大凶作を受け、海苔のシェア全国有数を誇る「白子」は、白子のりの値上げを発表した。
海苔商品全般を、6月1日出荷分から希望小売価格を1~8%値上げするという。

(「めざましテレビ」4月3日放送分より)