PCデータ、SNS…死後に“黒歴史抹消”は神サービスか? 詳しく聞いた

カテゴリ:国内

  • 死後に“黒歴史”なデータを消去してくれるサービスが話題
  • きっかけは「死後、友人に処分してほしいものリスト」の投稿
  • 処分したいものを法的に相続財産の対象から外す

“黒歴史”を残したくない人たちへ…

以前、編集部では“オタク”向けの生前整理サービスとして、コレクションの価値を確認する「生前見積」のサービスを紹介したが、大切に集めたグッズ以外にも気がかりなものがあるはず。(「頼むから捨てないで… 「生前見積」で自分の“お宝”の価値を証明しておく“オタクの終活”が話題」
それが、SNSのアカウントやPC内のデータだろう。

近年、多くの人がSNSに登録しているが、自分の死後、更新されないままのアカウントが放置されるのはどうなのか…。
さらに、「これだけは見られたくないなあ…」という、家族にも秘密にしたい写真や動画などをPC内に保存している人もいるはず。

映画かドラマのように「このデータは自動消滅します」というシステムがあれば安心なのだが、現実はそうもいかないもの。
そんな人たちに朗報のサービスが、坂口司法書士事務所が2016年から展開している「オタクのための黒歴史抹消計画」だ。


このサービスは、依頼人の死後自宅へと赴き、グッズなどのコレクションやハードディスク内のデータ、SNSのアカウントなどの処分を代行するというもの。
PCやスマホ、SNSアカウントのパスワードなどは事前に事務所へ伝えておき、依頼人が亡くなった知らせを受けたのちに処分してもらう形になる。(不正アクセス禁止法に抵触しないため、契約書内でアクセスについて許諾する条項を明記する)
また、事前にメッセージを指定しておくことで「最期のメッセージ」をSNS上に投稿してもらうこともできるという。

さらに、「プロとはいえ、第三者に頼むのも気が引ける…」という人のために、これらのサービスを“戦友=オタク友達”に託す「戦友に託す黒歴史抹消計画」も2018年から展開。
誰の目にもさらしたくない“黒歴史”を仲間内で処分する選択もできるのだ。

家族に見られずにこれらの“黒歴史”を処分してもらえるのなら個人的にはぜひとも利用したいのだが、そもそもなぜ、このようなサービスを展開しているのだろうか?
坂口司法書士事務所の坂口誓哉氏に詳しくお話を聞いてみた。


きっかけは「死後に処分してほしいものリスト」

――「黒歴史抹消計画」を作ったきっかけは?

小職自身がオタク気質(と濁していますが、オタクです)ということもあり、オタク仲間との会話で死後について少々気になっていたところ、ツイッター等で自分の死後、友人に託すためにこんなものを作った等を目にしたことから、利益度外視でサービス内容を検討しはじめました。

インターネット等の検索を用いていろいろと調べてみると、潜在的に不安に感じている方が多数いらっしゃることを踏まえ、どのような方法を用いれば合法的にご本人の希望が叶うのか頭を悩ませました。


このサービス開始のきっかけは、「自分の死後、友人に“強引に自宅に入ってでも”処分してほしい」ものをリストアップした投稿だったという坂口氏。
SNSを見てみても、確かに「家族に見られたくない物の処分どうしよう…」などの声が多く、たくさんの人が同様の悩みを抱えている様子が見てとれた。

契約には法的効力あり

しかし、心配になるのは「“黒歴史”といえど、遺産なのだから勝手に処分していいの?」という点だろう。


――依頼人にとっては“黒歴史”でも、遺産を勝手に処分するのはいいの?

処分対象につきましては法的に相続財産(遺産)の対象から外れることが盛り込まれた契約となります。
遺言書などで同様のことを行うことも可能ですし、場合によっては遺言書を用いることも想定しています。

ご親族のご意向に反して、契約を遂行することも法的に問題はないことになります。
もっとも、そうならないためにもご親族の了解を得ることは大切です。(不要なトラブルとならないよう、事前にできる限りのことを行います)


――親族の同意は必須?

ご親族の同意・了解は、処分等を行う際に部屋の開錠をお願いすることも含まれております。
仮にご親族がいらっしゃらない場合は、管理会社等のから同意・了解を得ることになります。(ご親族からの同意は不要となります)

ただし、基本的に法定相続人不存在となることはかなり稀なケースとなります。
仮に、法定相続人がいらっしゃるときでも交流等が一切ないときにおいては事情を伺ったうえで総合的に判断することになります。



このサービスを利用する際は、依頼人と財産管理等委任契約と死後事務委任契約を結ぶ形になり、依頼人の死後、親族からの連絡・部屋の開錠をしてもらった上で“黒歴史”を処分する流れになる。

この時処分対象となったものは「遺産」の括りから外されることとなる。
仮に親族が「契約時には同意したが、やっぱり全てのデータや遺品を家族で管理したいから捨てないで」と言ったとしても、法的効力を持った契約のため、「黒歴史抹消計画」を遂行することは法的には問題ないという。

ある程度の“自己防衛”は必要

法的な問題がないことは分かったが、次に心配なのは「本当に家族に見られるよりも早く処分してくれるの?」という点だろう。


――本当に家族に見られる前に処分してもらえる?

戦友であれ小職であれ、ご親族の方よりも早く行動することが難しいのは想定しております。

そのために、小職が履行するケースにおいてはご親族の同意書を必要とし、ご不幸があった際は小職に連絡いただくよう手配することになっています。
戦友たる方が履行する場合については、基本的にご親族様が勝手に処分等を行わないようにする準備としていくつかの場合分けでご用意しています。(具体的な方法につきましては、企業秘密のようなものとなるため、回答を控えさせていただきます)

ただし、見られたくないグッズ等を誰の目にも留まる場所に置かれている場合(多少なりとも隠していない場合)は、困難が生じます。
また、ご家族が強引に遺品整理等を行ってしまう可能性については否定しきれません。この点についてはご本人様とご家族との関係性、ご家族の性格に依拠するものであり、事前のある程度の聞き取りを行ったうえで、ご選択いただくことになります。



目に付きやすい場所に“黒歴史”を置いておく人は少ないかもしれないが、坂口司法書士事務所の公式サイトでは、PC内のデータなどは家族が見てもOKな写真などのデータと紛れてしまわないよう、外付けのハードディスクなどにまとめて保存しておくことで処分がしやすくなるとのアドバイスをしている。
また、グッズなどは段ボールに入れてクローゼットに入れておくなどの自己防衛もしておく必要がありそうだ。

“戦友”に処分を代行してもらう場合は「遂行事務報告書」を事務所に提出してもらうなど、「本当に“抹消計画”が成功しました」という証拠が残されるという。
ちなみに、契約はいつでも解除が可能。
“永遠の戦友”と思っていた人とケンカ別れしてしまうかもしれない、というちょっと悲しいシチュエーションもしっかり想定しているのだ。
しかし、基本は「信頼関係で成り立つ」サービスのため、利用は自己責任で、ということになりそうだ。


――実際に利用した人はいる?

問い合わせやサイトの閲覧履歴はありますが、利用にまで踏み切った方は現在のところいらっしゃいません。


この「黒歴史抹消計画」の利用は総額は14万円、「戦友に託す…」の利用は契約書作成や報酬などを含め5万円。まだサービスを利用した人はいないというが、坂口氏は「生前見積」のサービスについても触れ、「多くのオタクがさまざまなサービスを選ぶことができるようになってきているのは、とても嬉しく思います」とコメントしている。