「ひざまずいて謝罪した日本の元総理」…韓国メディアに消費される“良心的日本人”とは?

カテゴリ:ワールド

  • “土下座”の鳩山元総理が韓国で「持論」を展開
  • 韓国メディアが「良心的日本人」の発言として大々的に報道
  • 日韓関係をこじらせる一要因になっていないか?

「ひざまずいて謝罪した日本の元総理」と紹介

「本日お話ししてくださる鳩山由紀夫元総理は、すでに2015年、西大門刑務所の跡地を訪ねられ、※柳寛順(ユ・グァンスン)の監房の前にひざまずいて敬意と心の痛みを表されました」
(※日本からの独立運動で象徴的な存在とされる女性運動家、運動後に獄死)

 「やはりこの話が出るのか…」と思った。

先月29日、韓国・ソウル市で「日韓関係に関する討論会」を取材した際、主催者側はこのように鳩山由紀夫氏を紹介した。

討論会には韓国側からソウル市長、大学教授、評論家など著名人が参加していたが、そこに「日本の元総理」として招かれたのが鳩山氏だ。

政界引退後もその動向が物議を醸している鳩山氏。主催者の紹介通り2015年、日本統治時代に独立運動家などが収容されたソウル市内の西大門刑務所の跡地で“土下座”をし、日本の朝鮮半島統治に対して謝罪した。この行為は当時、韓国内でも「日本の元総理がひざまずいて謝罪した」と大々的に報じられた


鳩山元総理の発言に「拍手」 

討論会での鳩山氏の発言を一部、紹介する。
 
〇植民地化や戦争によって苦痛や悲劇を与えた方々に対する心からの謝罪がなされていない
 
〇新天皇が平成天皇(発言のまま)と同じ気持ちで韓国国民に接される時、日韓関係は大きく前進を遂げることになると確信している

〇日韓合意:『最終的で不可逆的な解決』としたことは日本の上から目線の態度で二度と謝らないぞと受け止められ韓国民の感情を逆なでするのではないかと懸念した。案の定、その懸念はあたった

〇慰安婦問題:日本の哲学者の「旧植民地なりから『もうこれ以上の責任追及はしない』との言葉が出てくるまで責任は担い続けなくてはならない」という言葉が胸に響く。この気持ちを日本の為政者が持つことができた時に慰安婦問題は解決する
 
 〇「徴用工」問題:日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決しているのではない。被害者の方々の尊厳と名誉を回復させるために冷静に話し合うことが極めて重要
 
 〇レーダー照射問題:韓国軍は北朝鮮の漁船を救助している最中で、自衛隊機への攻撃の意図があったとは思えない。好戦的な雰囲気に一気に傾いてしまう日本の世論に問題があるように感じる

鳩山氏が上記の“持論”を述べると、参加者からは拍手がおこった。これだけの“韓国寄り”の発言がでれば自然に拍手したくなる気持ちも分かる。ただ日本側からすれば到底受け入れられない内容だ。さらに看過できないのは一連の発言が韓国内で「日本の元総理の発言」として大々的に報じられていることだ。


大手韓国メディアも鳩山氏の発言を大々的に報道 

2015年8月13日 西大門刑務所跡地でひざまずいて謝罪する鳩山元首相

大手通信社・聯合ニュースは早速「追悼碑の前でひざまずいて謝罪したことが語るように 過去の歴史認識面で安倍総理の対称点に立っている人物」と鳩山氏と紹介した上で、討論会での発言内容を伝えた。

さらに大手紙・中央日報は社説の中で、「ひざまずいて謝罪の意を表した鳩山氏は代表的な知韓派だ。史上最悪の韓日関係の突破口をどうにかして見いだすべきという切迫感から出てきた日本の知識人の苦言に韓日政府は耳を傾けなければいけない」と主張。


さらに鳩山氏は公共放送KBSの単独インタビュー取材に応じ、下記の発言をした。

「相手の方が(韓国) もうこれ以上謝罪する必要がないと言ってくださるまで謝罪する気持ちを続けることが大事だと思っている」

「強制徴用賠償判決、慰安婦強制動員問題なども日本がこのような姿勢を持たなければ解決されない」

「未来志向的な判断を今日本の政治が十分におこなえていないということは大変残念」


韓国メディアが多用する「良心的日本人」とは?

この「良心的日本人」というのは韓国のメディアが多用する言葉で、端的に言えば、日韓の歴史問題などで韓国の主張に賛同する発言をしたり、日本の現政権を批判する日本人のことを指す。歴史問題など日韓の対立の要因となっている話題を伝える際、「日本政府は間違っている」という自らの主張を補うため「良心的日本人」の発言を引用するのだ。

韓国メディアからすれば鳩山氏は「良心的日本人」の筆頭と言えるだろう。「日本の元総理」という肩書きを持つ鳩山氏ほど“韓国世論”に説得力を持つ人はいないからだ。

「元総理が韓国を支持している」という韓国メディアの報道を見た韓国国民は、日韓関係を巡る諸問題で、日本の国論が大きく分断されていると誤解しかねない。しかし、鳩山氏の持論が日本国内で多くの支持を得ていないのは、「韓国は信頼できない」との回答が77.2%に達した、今年2月のFNNと産経新聞の世論調査結果からも明らかだ。

日韓関係をさらに悪化させる問題が今後起こった際、韓国メディアは「良心的日本人」の発言を伝えるだろう。そして鳩山氏の「日本の元総理」という肩書きを消費し続ける。

「良心的日本人」の発言が日韓関係をこじらせている一要因となっていると感じざるを得ない。なお、幸か不幸か、韓国では日本政府を支持するような言動を取ると「親日派」というレッテルを貼られて社会的に抹殺されかねないので、「良心的韓国人」はほとんどいない。


【執筆:FNNソウル支局 川村尚徳】

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