男子大学生が、知人らに暴行され、現金や高級腕時計などを奪われた事件。仲間内の金銭トラブルかと思いきや、容疑者の1人が、あの「工藤会」を名乗ったことから、警視庁に加えて、福岡県警まで捜査に参入する事態となった。

「借金120万円」が事件へ

被害者の大学生の男性(20代)は、元々、逮捕された荒井幹太容疑者(22)らと知り合いだったという。男性は、今年3月ごろ、同じく逮捕された渡辺晴斗容疑者(21)に、現金120万円を貸したという。

4月に入り、男性は、借金を返済するよう、”催促”を始めたとのこと。すると5月4日になり、渡辺容疑者が、被害者の自宅に現れ、こう告げたという。「荒井容疑者が金を出して返済すると言っている。話をするので一緒に来て欲しい」と。

逮捕された荒井幹太容疑者(26日 高輪署)
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男性は、渡辺容疑者とともに、ワンボックスのレンタカーに乗り、出発。すると、途中で車が止まり、他の容疑者2人が乗り込んできたそうだ。場所は、千葉県柏市内。車の中では、殴ったり蹴ったり、いわゆるリンチが始まり、挙げ句に、男性は、手足を粘着テープのようなもので縛られたという。

被害総額”800万円”以上

その後、車は、次の場所に移動。そこで待っていたのが荒井容疑者だった。場所は、千葉県白井市内。荒井容疑者が加わり、さらに暴行が加えられたという。結局、男性は、120万円の借金を”放棄”させられた上、持っていた現金2万円と、およそ420万円相当の高級ブランドの腕時計などを奪われたそうだ。

およそ420万円相当の高級腕時計も奪われたという(画像はイメージ)

そして、やっと解放されて、自宅まで送り届けられた男性だったが、さらに、車のカギを取られて、イタリア製の高級車=400万円相当を持って行かれたという。車は、共通の友人を介して、その日のうちに戻されたものの、男性は2日後、警視庁に被害届を提出。被害総額という意味では、車を含めて、合わせて800万円相当以上にのぼった。

男性は、顔に大けがをするなど、全治2カ月の重傷を負ったが、一連の経緯を振り返ると、仲間内の金銭トラブルから派生した傷害事件に見える。ところが、荒井容疑者が、男性をリンチしている際に発した”脅し文句”が事件の”性質”を変えた。

「ヤクザに金を貸して、カタギが金を回収するとか、何様のつもりだ。工藤会がどんな組織か知っているのか。殺されたいのか。きょうのケジメはどうするんだ。どうやって丸くおさめるんだ」荒井容疑者は、そう男性に凄んだという。

さらに荒井容疑者は「工藤会の仕事を手伝え」と迫ったそうだ。これに対して「分かりました」と答えた男性は、やっと解放されたという。そう、この工藤会とは、福岡・北九州市を拠点とする特定危険指定暴力団「工藤会」のことだ。

”最凶ヤクザ”工藤会とは

日本国内で、最も勢力が大きく、影響力があるのは、特定抗争指定暴力団「山口組」だろう。しかし、近年、警察当局を含めて、一番”注目”を浴び、最も警戒されたのは、工藤会ではなかろうか。

一般市民をも標的とする、その悪質性は、度々、暴力団排除に取り組む飲食店などにも向けられた。店の関係者が襲撃されただけではなく、手榴弾まで投げ込まれる事件が発生。利権に絡んだ殺人事件も起き、暴力団捜査を担当していた元警察官まで狙われる事態となった。

また武器庫からは、驚いたことにロケットランチャーまで押収された。2014年には、工藤会最高幹部のアメリカ国内の資産が凍結。その際、アメリカ財務省が、工藤会について、「世界最大の犯罪組織である『ヤクザ』の中でも、最も凶悪な組織」と認定したほどだった。

当然、日本の警察当局も、この状況を黙って見ている訳ではなかった。同じ2014年に、福岡県警が「頂上作戦」に乗り出し、工藤会トップの野村悟被告らの逮捕に踏み切った。その後も、組織壊滅に向けた捜査は続けられている。その野村被告に、去年、死刑判決が言い渡されたのは記憶に新しい。

工藤会、首都圏進出か

”最凶”と言われる「工藤会」を名乗る男が、都内で起きた事件に関与しているとなれば、警視庁にとっても”緊急事態”だったに違いない。暴力団捜査のプロである「暴力団対策課」が投入され、福岡県警との合同捜査本部を設置。

今月24日~25日にかけて、荒井容疑者ら4人を、逮捕監禁、強盗致傷、窃盗(自動車を持ち去った事件)容疑で逮捕した。単なる”仲間内の金銭トラブル”ではなく、”重要”案件として扱われたと言えるだろう。

荒井容疑者は、千葉県柏市在住だが、福岡市に拠点を置く工藤会長谷川組の組員だという。暴対課は、逮捕された4人の認否を明らかにしていないが、ある捜査幹部は「工藤会が千葉県に進出しようとしているのか、実態解明を進めたい」と語気を強めた。

荒井容疑者は千葉県在住だが、福岡市を拠点とする工藤会系の組員だという。
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