神奈川県最大の暴走族「川崎宮軍団」のリーダー・藤井敏容疑者(43)が再逮捕された。少年2人を、無理矢理、暴走族に加入させた「強要」と、脱退しようとした少年を脅した「脅迫」の疑いだ。この再逮捕は、まさに、神奈川県警による「頂上作戦」とも言える。

43歳のリーダー 18歳少年を強引にスカウト

藤井容疑者は、去年6月5日ごろ、横須賀市在住の専門学校生のA男(18)と会社員のB男(18)をスカウトし、その5日後、強引に「川崎宮軍団(以後、軍団と記載)」に加入させたという。県警によると、2人は、藤井容疑者を相手に、何らかのトラブルを抱えていたそうだ。

藤井容疑者は、トラブルを「解決してやる」と提案し、その代わりに、2人を軍団に加入させたとのこと。想像の域を出ないが、「許してやるから、軍団に入れ」という流れなのではないか・・・。県警は、どのようなトラブルだったのかを明らかにしていない。この強引な加入行為が「強要」容疑となった。

神奈川県警が捉えた川崎宮軍団の「暴走行為」の様子(去年10月30日)
この記事の画像(5枚)

渋々とは言え、軍団の仲間入りをした2人。しかし、まもなく、2人のうちのA男が、脱退の意向を持つようになる。それもそのはず、当サイトでも既報のとおり、軍団には、今どきの若者には受け入れがたい、2つの掟(おきて)があった。

2つの掟「脱退の禁止」「会費3000円」

その掟とは「脱退の禁止」と「会費」。藤井容疑者から声をかけられた少年少女らは、事実上、そのスカウトを断ることができなかったという。そして、いったん軍団に入ると、脱退することも許されなかった。上下関係を強いる、昔ながらの暴走族”気質”とも言える。

また軍団では、メンバーから毎月3000円の「会費」を徴収していたそうだ。軍団は、横浜市や川崎市の暴走族や旧車會など19グループから構成され、中学生から40代ぐらいまでの男女およそ400人が所属していたとみられる。

「川崎宮軍団」には「脱退の禁止」と「会費3000円」という2つの掟があった(提供:神奈川県警)

それぞれのメンバーは、毎月3000円を取り立てられ、その金が藤井容疑者に渡っていたという。まさか暴力団の「上納金」のように、会費を集める暴走族があるとは・・・。少年少女にとって、月3000円の出費は、大きな負担だったはずだ。

A男が、この2つの掟を理由に、脱退を決意したのかは分からない。ただ、このままではダメだと思ったのか、県警に相談を持ちかけたそうだ。当然、藤井容疑者からの連絡には無視を決め込んだA男。すると、藤井容疑者から、1通のメールが届いた。

「既読無視とかなかなかやってくれるじゃん」「ケンカ売ってんの?」「ハッキリ言って探し出して捕まえるとか簡単だから」「大人をあまり怒らせないほうがいい」等々。よもや43歳の大人が、18歳の少年に送ったメールとは思えない内容だ。ただ、これが動かぬ証拠となり、逮捕容疑に「脅迫」も加えられた。

「川崎宮軍団」全体像をつかんだか

藤井容疑者は、今月1日、すでに神奈川県警に逮捕されていた。仲間ととともに、大規模な”ハロウィーン”暴走に及んだ道路交通法違反(共同危険行為)と、17歳のC男が軍団から脱退しようとするのを妨害した神奈川県暴走族追放条例違反(離脱の妨害)の疑いだ。

前者のハロウィーン暴走については、今月21日付けで、略式起訴された。起訴内容は、「去年10月30日川崎市内から横浜市内の道路で、複数名らと自動二輪59台を並進させ、道路における交通の危険を生じさせた」というもの。

藤井容疑者が、18歳の少年に送ったメールが動かぬ証拠となった(提供:神奈川県警)

当初、軍団のハロウィーン暴走に参加したのは、およそ150人・バイク100台程度とされていた。その後、県警は、詰めの捜査を進め、ある程度、現場に居合わせてメンバーらを突き止めたようだ。合わせて、軍団の全体像をもつかんだ可能性がある。

「頂上作戦」へ 県警が使った”奥の手”

一方、暴走族追放条例違反については、処分保留となった。今後、今回の「強要」「脅迫」と合わせて刑事処分されるだろう。ここで、ポイントとなるのが「強要」が適用された点だ。実は、この強要罪は、罰則が懲役3年以下と「思った以上」に厳しいのだ(なお、脅迫罪は懲役2年以下)。

軍団VS県警「上作戦」の奥の手は「強要罪」だった

過去のケースを見ても、暴力団絡みの事件で、量刑を重くするために、あえて「強要」容疑で逮捕することもあった。また、社会問題化した悪質なあおり運転に、「強要罪」が適用されたことは有名だ。

今回の藤井容疑者に当てはめると、併合罪になれば、懲役3年の1.5倍に当たる懲役4年6カ月まで”重くなる”計算だ。これまでも、暴走行為などで、繰り返し検挙されてきた藤井容疑者。懲役4年6カ月を言い渡されたら、出所してくるのは50歳近くになる。

その年齢で、暴走族のリーダーを気取るのは無理があるだろう。軍団の全体像をつかんだ県警が、あえて「強要」容疑で逮捕したのは、「頂上作戦」に向けた”奥の手”とも言える。いずれにしろ、横浜地検が、藤井容疑者を、何の罪で起訴するかにかかっている。なお、県警の取り調べに対して、藤井容疑者は、一環して「黙秘」を貫いているという。

記事 930 社会部

今、起きている事件、事故から社会問題まで、幅広い分野に渡って、正確かつ分かりやすく、時に深く掘り下げ、読者に伝えることをモットーとしております。
事件、事故、裁判から、医療、年金、運輸・交通・国土、教育、科学、宇宙、災害・防災など、幅広い分野をフォロー。天皇陛下など皇室の動向、都政から首都圏自治体の行政も担当。社会問題、調査報道については、分野の垣根を越えて取材に取り組んでいます。