国政政党として結党してから9年、日本維新の会が、次期衆議院選挙に向けた活動方針として、経済成長と格差解消に向けた政策「日本大改革プラン」を策定した。

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統治機構改革などと並ぶ重要公約と位置づけたこの新政策は、全国民に最低限の所得を国が保障する「ベーシックインカム」の実現を目玉に、「税制改革」「社会保障改革」「成長戦略」の三本柱で国民の可処分所得をアップすることを目指している。

では、具体的にどんな政策なのか?維新が目指す新たな道へのエンジンになるのか?結党当初から党を支える馬場伸幸幹事長に聞いた。

馬場伸幸幹事長

原点である「維新八策」で目指す国家像を振り返る

馬場氏は、2010年に当時の橋下徹大阪府知事を中心に「大阪維新の会」を結成し、2012年には国政政党の「日本維新の会」も結党して大阪都構想の実現を目指してきた党の歩みを次のように振り返った。

「維新は、大阪で今までできないと言われていた都道府県と市町村の合併というものをやって、それを全国に広げていくのが創生期の考え方だった。しかし、大阪都構想の住民投票は2回挑戦したけれども実現ならず。住民投票で統治機構改革を実現していくというのは非常に難しい登山ルートだとわかった」

日本維新の会は、「身を切る改革」、「統治機構改革」そして「既得権の打破」などを掲げ、橋下氏と石原慎太郎元東京都知事の二枚看板で2012年の衆院選を戦った。その際には自民党からも離党者が出た上に、当時与党であった民主党からも参加者が現れ、維新旋風を巻き起こした。

しかしその後、分裂や解党、再結成などの混乱を経る中で、2015年には大阪都構想実現のため住民投票を実施するも僅差で否決され、橋下氏が政界を引退した。2020年には公明党の協力も経て、再度住民投票を実施するも僅差で否決され、松井代表が任期限りで政界を引退すると表明、「維新は解体か?」と政界にも衝撃が走った。維新の国会議員内にも一時は重苦しい雰囲気が漂っていた。

馬場氏は、目玉政策である大阪都構想を失った維新の行く末について、様々な議論があったと明かす。

「大阪都構想を当面やらないということになった結果、『それなら維新は次に何をテーマに掲げるんですか?』という問い合わせがたくさんあった。実は今まで、国会議員の中で結党時の政策思想の原点である『維新八策』とそれぞれの関連性とか、どうやって実現していくかとか、そういう議論は今まであんまり行われなかった。本来住民投票があってもなくても、やっぱり国会はこういう活動をしていくべきやったわけやけど、全ての制度がやっぱり大阪都構想の活動に集中されとった。そういう意味でも余裕がなかったというのは現実」

そこで馬場氏らは、日本維新の会として国政で何を目指すかを、結党の原点に返って考えることにしたという。

「今の日本は、社会保障や税、働き方改革を含めて全ての分野で限界が来て、閉塞感を国民が感じている。それを、どうすれば維新八策の中からオールジャパンで通用する改革ができるかということを国会議員で議論し考え出されたのが新しい登山ルート、今回の日本大改革プランだ」

日本大改革プランとは

こうして打ち出された衆院選に向けての新政策「日本大改革プラン」。名称についても紆余曲折を経たものの、決定打となったのは「よく使う単語『日本大改革』で行きましょうよ」の一期生の一言だったという。

では日本大改革プランは具体的にどのような政策なのか。維新はこのプランを「経済成長」と「格差解消」を実現するグレートリセットと位置づけ、『税制改革』、『社会保障改革』、『成長戦略』を三本柱として一体的に取り組み、国民の可処分所得の増加を目指すのだという。

『税制改革』では、「フローからストックへの税体系一体での改革」を掲げ、消費の喚起と経済成長を重視し、消費税を2年間5%に減税した後、恒常的に8%に減税する。

企業の国際競争力強化に向け法人税を減税し、相続税は廃止する。一方で、固定資産税の適正化に言及するなど、資産への課税・増税の方向性をにじませている。

また所得税については、ベーシックインカム部分は非課税とし、残りの収入の700万円以下の部分については10%、700万円を超える部分は30%の税率を設定する。

さらに超富裕層への課税も含む総合課税を導入するなど、シンプルな仕組みに転換するとしている。

「社会保障改革」の目玉となる「ベーシックインカム」は、基礎年金、生活保護の一部、児童手当などを整理統合して導入する。0歳からの全国民に月額6万から10万円を一律給付し、高齢者には追加の給付を検討する。厚生年金は維持する。実現には年間約100兆円の財源を見込んでいる。

維新の試算モデルによると、社会保険料負担などを除けば、配偶者と子供1人の場合、年収300万円の世帯の手取り金額は約190万円アップ、年収500万円の世帯は約170万円アップするという。

ただ、今後他党などからの批判が予想されるのは、新政策の財源が明確でないことだ。

特に100兆円もの費用が必要とされるベーシックインカム創設の財源について維新は、統合に伴い廃止される基礎年金や児童手当の予算、資産への課税強化、行財政改革や経済成長に伴う税収増などで捻出するとしているが、どの程度可能かは不透明だ。党関係者は、数年間は国債発行に頼らざるを得ないとの認識も示している。

こうした懸念は抱えつつも、馬場氏は次期衆院選でこの政策を掲げて全国に100人の候補者を擁立して野党第一党を目指す意向で、「大阪から」ではなく、「全国から」うねりを起こす決意を強調した。

「国会は永田町の常識、前例慣例ばかりで、新55年体制みたいになっている。二大政党になって切磋琢磨して、国家国民のために成果物を出そうと全くなっていない。だから立憲民主党は日本に必要のない政党だと思うし、我々は日本大改革プランをツールとして、二大政党作りに挑んでいく」

国民民主党とは『新党』も!?

前回の衆院選で維新は希望の党と選挙協力をし、東京と大阪で候補者のすみ分けを行った。現在、前回選挙で希望の党から出馬し、立憲民主党との合流に加わらなかった衆議院議員の多くは国民民主党に在籍することなどから、維新・国民両党は議員立法を共同提出するなど、良好な関係を保っている。では、次期衆院選で維新と国民民主党はどのような協力体制をとるだろうか?

「最初の選挙で54議席をお預かりしたけど、結局54議席分のパワーは全く発揮されぬまま終わっていったという経験からしても、数も大事だけど質も大事。この両方のバランスをいかに取るかいうのが非常に難しいけど、現時点では他党との選挙協力という話はない」

馬場氏はこのように述べ、次期衆院選における選挙協力については否定した。しかし、その後に向けては興味深い見解を述べた。

「今国会で領域警備法関係で、法案を共同提出する予定だ(自衛隊法改正案などを2日に共同提出)。よく男女の関係に例えるが、いきなり結婚すると『やっぱこんなはずじゃなかった』となるから、お付き合いは徐々に深めていって、十分わかるようになった上で、『新党』とかいう話がその先に出てくる可能性はゼロではないとは言えると思う」

国民民主党との「新党」について含みを持たせたのだ。馬場氏が語る日本維新の会としての目標はこうだ。

「いろんな課題に対して、自民党が持ち出してくるA案と我々が考えるB案と、それを国会で議論し合って、国民の皆さんに見ていただいて、どっちが正しいでしょうかと。我々はそのA案Bを議論する中でより良い形での法案を作っていくことが本来の使命だ。そういうことを目標に、理想として、これからも本腰入れて活動していく」

自民党と真正面から政策を議論する野党第1党を目指すという日本維新の会。新たな登山ルートを開拓し、次期衆院選では真っ向勝負に出る姿勢だが、政策に国民の納得が得られるか、実現可能だという説得力を持たせられるかが、党の盛衰を左右しそうだ。

(フジテレビ政治部 大築紅葉)