『くまもとマーチングフェスティバル』の生みの親・森 義臣さん、80歳となった今もマーチングの普及に力を注いでいます。22日に控えた新たなイベントを前にマーチングや吹奏楽への思いを語ってくれました。

『明日を築く若人の祭典くまもとマーチングフェスティバル』。去年、3年ぶりに開催されました。

このイベントの「生みの親」が森 義臣さん、80歳。熊本県マーチングバンド協会の名誉会長です。

【森 義臣さん】
「49回、次が50回ですから、そんなに続いたんだなと、最初はマーチングのマの字も誰も知らなかったんだから。『マーチング』って何ですかって。今は『マーチング』は誰でも知ってるからですね」

1942年、熊本市に生まれました。

学生時代はコーラスに打ち込み、1965年から玉名女子高校に勤務。1年目は合唱部の顧問でしたが、2年目に突然、吹奏楽部の指導を任されるようになりました。

【森 義臣さん】
「4月から『吹奏楽を発足させるので、あなたは顧問』と言われて、がくぜんとして、やったことがないし、だけど新米教員ですから校長の言われた通り『分かりました』と言って、なるようになるさという感じで引き受けて」

部員26人のうち3年生は1人だけ。顧問も部員もみんな素人。手探りのスタートでした。

【森 義臣さん】
「5月下旬に楽器が届いて開けたけれど、クラリネットなんか組み立て方が分からないんですよ。トロンボーンも組み立て方が分からなくて、もうおたおたしたことを覚えてる」

【発足時の唯一の3年生 永杉(旧姓/武田)あつ子さん】
「すごく熱心な方でいろいろ努力をしていた。優しく、厳しく。1年生や2年生が私を盛り上げてくれて、みんなに助けられてきました」

楽器の購入費や修理費で足りない分は自分の貯金から出していたといいます。そのため、結婚が決まった時もお金がなく、学校の体育館で結婚式を挙げました。

試行錯誤の中、「もっと音を出せるように」と取り組んだのがその頃、まだ馴染みのない『マーチング』でした。

【森 義臣さん】
「福岡の楽器店の会社から『マーチングというのが関西でやっているから見に行きませんか』と。いいなと思って行ったんです。そしたら目からウロコです。学校に帰ってやり出したんです。最初はうまくいきませんでしたけれど、よその学校にも『マーチングしましょうよ』と呼びかけて、一緒に練習して」

そして1974年、開局5周年を迎えたTKUとともに、初めての『くまもとマーチングフェスティバル』開催にこぎつけました。

【森 義臣さん】
「マーチングは動きますでしょう。動くときにみんな一緒に心を合わせなきゃ、呼吸を合わせないといけない。合わせるのは実社会でも必要じゃないかと思う。思いやりとか、人の気持ちを考えながら行動するのは大事なことじゃないかなと思って。それがマーチングフェスティバルに集大成として出ている」

森さんは現在、崇城大学の吹奏楽団を指導しています。

【森 義臣さん】
「オーケストラはだいたいクラシックな感じじゃないですか。吹奏楽はジャズもできるし、演歌も楽しめるし、ジャンルが非常に広いんですよ。何でも楽しめるので
やってよかったと思います。大学生に言うのも、今を楽しむのもあるけど、生涯の財産として楽しんでもらわないとと言うわけです」

去年6月、玉名市で玉名女子高校・吹奏楽部の卒業生たちによるコンサートが開かれました。森さんに感謝の気持ちを伝えようと卒業生たちが企画したものです。

とても苦労した曲、コンテストでようやく賞がとれたときの曲など思い出深いものを演奏しました。

【森 義臣さん】
「一番年上は還暦を過ぎていますから(学校を)辞めて二十数年たっていますが、実際に指導していない最近の卒業生の方も一緒に入ってくれていますから、一堂に会するのは素晴らしいと思いませんか。(直接)つながりがなかったのが一つの曲を演奏するわけですから」

指導者として大切にしてきたのは演奏の技術だけではなく、まずは心構えです。

【森 義臣さん】
「どんな場面でも常に『演奏させていただく』という気持ち。それが基本。楽器と一緒に掃除道具をいつも入れていて、演奏したら演奏した所、控え室も掃除して帰ることは心がけました。それが上手になる一つの要因ではないかと思っているんです」

【森 義臣さん】
「みんなよく頑張っているから生涯、音楽を楽しんでほしい。『また機会があれば、みんな集まって楽しみましょう』と言いたいです」

1月22日(日)、熊本城ホールで『華麗なるステージマーチング&スーパートップコンサート』が開催されます。

第1部は、高校の吹奏楽部などがステージマーチングを披露。第2部は社会人で構成される『熊本ウインドオーケストラ』『熊工OBウインドアンサンブル』と世界で活躍するトランペット奏者が共演します。

世話人の代表として練習を見守る森さんの姿がありました。

【森 義臣さん】
「70歳、80歳、90歳の人の合唱団があるように、吹奏楽も生涯学習の一つの文化活動という位置づけで、これから私が役に立てたらいいなと思います」

吹奏楽やマーチングに触れたことがない人にもその楽しさを伝えたい。若い頃の情熱そのままに走り続けます。

記事 421 テレビ熊本

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