「音楽をもっと身近に」8年間で約130種類の楽器づくり

食器や廃材などで作った楽器で音を奏でる、2人組の演奏ユニットがいる。これまでイベントや学校などで演奏してきたが、コロナの影響でほとんどの活動の場を失った。

しかし、コロナの感染状況が落ち着いてきた今、徐々に出演依頼も回復。「ステージで人を楽しませるのが生きがい」と話す2人は、自作した楽器が奏でる音色で多くの人に笑顔を届けている。

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愛知県大治町に、日用品演奏ユニット「kajii(カジー)」の工房兼スタジオがある。工房には、これまでに作った楽器が所狭しと並んでいる。

日用品や廃棄されたもので楽器を作り、イベントで演奏をしている「kajii」は、アフロヘアーがトレードマークのクマーマさんと、モノ作りが得意な創(そう)さんの2人組。

クマーマさんはバンドのベーシストとして、創さんはプロのドラマーを目指して上京。そこで出会った2人は「kajii」を結成。当時はギターとパーカッションのユニットだった。

創さん:
今から8年ぐらい前に、リハーサルに食器を5個ぐらい持ってきて、音程が出るやつがあった

クマーマさん:
アットホームな空間が作りたいなと。家の中にあるもので音楽ができたら伝わるんじゃないかなと

ペットボトルで作った楽器「エアコーク」は、そのまま叩くと鈍い音だが、ポンプで空気を入れて叩いてみると美しい音色が響く。

「音楽と楽器をもっと身近に感じて欲しい」。2人は自作した日用品楽器で演奏を開始。ペットボトルや空き缶、食器などを素材に、8年間で約130種類の楽器を作った。

コロナ禍でイベントが激減…助成金や補助金で何とか食いつなぐ

食器を使うというアイデアから始まった「kajii」の音楽。イベントや学校などでの演奏が2人の主な収入源だったが、コロナ禍で出演依頼は激減。

クマーマさん:
2020年の手帳、バツがうってあるところが無くなっちゃったところで、5月がひどい。ぐちゃぐちゃですね

創さん:
助成金や補助金で何とか食いつないでこれたんですけど、かなり綱渡りというか…。廃業寸前

2人とも子供を持つ父親で、妻と共働き。10年前に結婚し、現在は介護施設で働いているという創さんの妻は、コロナ禍で収入が減った夫に対して…。

創さんの妻・麻里子さん:
経済的なところを彼に頼っていないので…。「一生やっていく覚悟がないなら今すぐやめて」って言った時があったけど、一生やりたいって言っているし。夫とクマーマは替えのきかない仕事だと思うので、かけがえのない素晴らしい仕事だなと思って

廃材活用にからくり人形まで 様々なアイデアで新作楽器を製作

コロナ禍で空いてしまった時間をチャンスと捉えた2人は、新しい楽器作りに挑んだ。歯車が好きな創さんが考えたのは、赤ちゃんの手押し車をヒントにした「からくり」楽器。

創さん:
腰に巻いて歩いていくと、後ろでカタカタと鳴ってついてきてくれる。カモの親子のような楽器を作りたくて

しかし、結構音がうるさく、改良が必要なようだった。からくり以外にも、ゴミや廃品を活用した楽器作りにも取り組みはじめた。

新作は、海に捨てられていたポリタンクと流木で作ったチェロ。

空き缶を使い、パイプオルガンの仕組みを取り入れた「オルカン」は、足踏みポンプで風船を膨らませる。

そこから出る空気を農薬散布に使われるバルブを通して、空き缶の飲み口に噴射することで、軽やかな音色を奏でる。

ステージに立ち人を楽しませるのが生きがい 再び動き出した2人の時間

自由に楽しく、日々楽器作りに打ち込んでいるように見える2人だが、コロナはそんな彼らにも大きな影をもたらしていた。

クマーマさん:
僕自身、うつ病になっちゃって。今も薬を飲んでるんですけど…。人に喜んでもらうのがもともと好きな性格で、その時間が持てなかったのがつらかった

心を痛めてしまったクマーマさん。しかし、イベントなどの出演依頼の方は、コロナの感染状況も落ち着いてきた今、徐々に戻ってきた。

この日、2人は住宅展示場で久しぶりのイベントへ。新作の「オルカン」と「ポリタンクと流木のチェロ」も初披露。客席と一緒に演奏する「流星群」というオリジナルナンバーで会場を盛り上げた。

クマーマさん:
最高に楽しかった、やっぱり“生”はいい。自分の精神がちょっと安定してきたこともあって、見てもらった人が「すごい」「よかったな」と思ってもらえればいいかな

創さん:
子供のとき、周りに好きなことばっかりやってる大人っていなかったので、こういう生き方もあるという事がちょっとでも伝わればいいかな

ステージに立つこと、人を楽しませることが生きがいと話す2人。「笑いあり涙なし」のエンターテイメントで多くの人に笑顔を届けている。

(東海テレビ)

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