公園で無邪気に遊ぶ、中村けんたくん(仮名)7歳。埼玉県在住の小学2年生だ。

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鬼ごっごをする姿は一見、どこにでもいる小学生だが、ひとたびペンを握ると…。

中村けんたくん(仮名):
引いたらマイナス3でしょ。あっ、x=1?

中学生レベルの問題をスラスラ解答。実は彼、生まれつき特定の分野で優れた才能を持ち、英語で「授かった人」を意味する「ギフテッド(Gifted)」と呼ばれる子どもなのだ。

一番好き・得意なのは数学 両親へ出題も

中村けんたくん(仮名):
5✕5=25、5✕5✕5=125、625、3125、15625、78125

母親:
答え見ていい?正解

5の7乗をスラスラと計算
5の7乗をスラスラと計算

中村けんたくん(仮名):
いぇい!

5の7乗をスラスラと計算。小学生離れしたけんたくんのIQ(知能指数)は、平均の100を大きく上回る141。家族で散歩をしていても…。

散歩中、母親に出題「これはなんでしょうか?元素記号でお答えください」
散歩中、母親に出題「これはなんでしょうか?元素記号でお答えください」

中村けんたくん(仮名):
デデン!これはなんでしょうか?元素記号でお答えください。

母親:
これは…酸化鉄?FeO

中村けんたくん(仮名):
正解!

けんたくん、いきなり両親に出題。これが日常の姿だそうで、取材中のスタッフにも。

取材ディレクターには漢字の問題
取材ディレクターには漢字の問題

中村けんたくん(仮名):
「強ち」、強(つよい)に“ち”ってなんて読む?

と、今度は漢字を出題。

ディレクター:
いいの、正解言って?「強ち=あながち」。

「強ち=あながち」と正解
「強ち=あながち」と正解

中村けんたくん(仮名):
正解!すごいね!

大人でもなかなか難しい知識を披露。中でも一番好きで得意なのが、数学だ。

これはけんたくんが作った夏休みの自由研究。かわいいサンタのイラストの下には、細かい計算式が並ぶ。そのテーマは?

中村けんたくん(仮名):
サンタがいると地球は滅亡してしまうと思います。

驚きの主張を披露した、けんたくん。なぜサンタがいると、地球が滅亡するのか?

中村けんたくん(仮名):
なぜならサンタ、トナカイ、プレゼントには「質量」があるからです。

大量のプレゼントを積んだ120人のサンタが世界中を飛び回った場合、とてつもないエネルギーが生じる
大量のプレゼントを積んだ120人のサンタが世界中を飛び回った場合、とてつもないエネルギーが生じる

けんたくんの計算はこうだ。大量のプレゼントを積んだ120人のサンタが世界中を飛び回った場合、とてつもないエネルギーが生じ、衝撃波により地球が滅亡してしまうという。まさに大人顔負けの知識を持つけんたくんだが、いつからこうした能力が花開いたのか。

母親:
(教えてないのに)勝手に出来るようになってるんで、本当にびっくりします。いつ?いつ?って。自分の興味あることを、楽しく遊ぶ感覚で学んでるんだと思います。

幼稚園のときにはすでに漢字を覚え、小学校に入ると、両親が教えていないのに数学もできるようになっていったという。

しかし、その優れた能力を持つ一方で、「ギフテッド」であるがゆえの悩みを抱えていた。

周囲になじめず不登校に “支援本”を執筆

母親:
(2022年1月)1年生の3学期からです。「学校に行きたくない」「学校辞めたい、つらい」と言ってきました。

1年生の3学期から不登校に
1年生の3学期から不登校に

飛び抜けた能力がありながら、この半年は不登校が続いているという。その理由をけんたくんに聞いてみると…。

「それに合わせるのが苦しい」と話す
「それに合わせるのが苦しい」と話す

中村けんたくん(仮名):
入学する前は、小学校はいろんなことを学べるとこって思ってたけど、いざ入ってみると簡単な内容を何回も繰り返してやってるし。僕がやってることがいま星5だとしたら、(学校の授業は)星1ぐらい。それに合わせるのが苦しい。

周囲となじめないことに両親は不安を感じ、けんたくんを病院にも連れて行った。そこで受けた知能検査で驚きの結果が。

不安を感じた両親は病院へ そこで知能検査を受けた
不安を感じた両親は病院へ そこで知能検査を受けた

母親:
(先生に)「お子さんが学校生活苦しいのは、人口の上位2%の知能の持ち主だからです。だから学校が合わないのも、仕方のないことなのかもしれませんね」と言われました。

父親:
そんな高いとは思わなかったですね。正直驚きました。

検査結果は、全人口の上位2%に入るIQ141。平均は100前後といわれている中、けんたくんは小学校で…。

「なるべく皆からはみ出ないように、隠れようとする場面が多かったみたいで」
「なるべく皆からはみ出ないように、隠れようとする場面が多かったみたいで」

母親:
なるべく皆からはみ出ないように、隠れようとする場面が多かったみたいで。わざと1年生の頃に100点をとらないようにしてて。「勉強はできるだけじゃ、いじめの対象にもなるんだよ」みたいなことを言ってた。

こうした中、最近、けんたくんが“ある本”を書き始めたという。その内容は…。

「小2の自分が本を書いてみた。ギフテッドしえんかつどうブック。この本は、ギフテッドの生きづらさや困りごとを本にまとめたものです」

母親:
自分の生き苦しさっていうのを、やっぱり知って欲しいのかなって。

そこに書かれたけんたくんの願いは…。

中村けんたくん(仮名):
みんなに自分が受け入れられる、僕みたいな人を受け入れてほしい。受け入れられる人が側にいて欲しい。

両親は“誰一人取り残さない教育”を強く願う。

母親:
本当に学びたいことを学べる環境だったりとか、好きなことを学べるような学校があったらいいなとは思います。

けんたくんと同じような子ども時代を過ごした“大人たち”もいる。

大人も抱えた悩み「浮いちゃう」 孤立防止へ国も支援

ここは、東京・新宿にあるバー「サロン・ド・ギフテッド」。けんたくん同様、全人口上位2%のIQを持った人しか入れないサロンだ(毎週火曜開催・完全会員制)。

そのメンバーには、IQが高い人が集う国際的グループ「MENSA」の会員もいる。このサロンが作られた理由は?

発起人 立花奈央子さん(30代):
IQが高い人たちって、人生観であったりとか倫理観とか、そういったものが一般常識からかけ離れていることが多いんですね。リミッターを設けずに自分が思うがままに話せるっていうのが、この場所のいいところですね。

そして、ここに集う人たちも、子ども時代に「ギフテッド」ゆえの悩みがあった。

外資系コンサル 晴子さん(43):
試験勉強とかもしなくても大体90点はいってたし。退屈って授業に対して言っていいのか、ずっと子供の頃うまく言えなかった。

ホスト 霧夜さん(30):
国語のテストでよくあるじゃないですか、「筆者の気持ちを答えなさい」とか「筆者が言いたいことは」とか。「そんなの筆者にしかわからないです」って書いたら、0点にされました。

経営者・アーティスト 原田さん(38):
もうずっと浮き続けてきました。幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と、基本的に浮いちゃうんですね。「あの人変な人」ってなっちゃって、なんとなく寂しさみたいなものを感じていました。

周囲と分かりあえなかった過去。こうした孤立を防ぎ能力を伸ばすため、海外では特別な教育プログラムを用意する国もある。一方、日本では、教育現場での支援がまだ進んでいないのが現状だ。

ディレクター:
どんな学校だったら行ってみたい?

中村けんたくん(仮名):
ギフテッドクラスとかあったらいいなって思う。

ディレクター:
今の学校じゃ出来ない?

中村けんたくん(仮名):
うん…要するに飛び級かな。

幼い子供が悩みを抱える現実に、文部科学省は来年度から「ギフテッド」の子どもたちへの支援に乗り出す。           

(「イット!」11月25日放送)