マスク着用を緩和する動きが進む中、大量に残ったマスクの在庫に悩む企業が増えている。

”脱マスク”で事業終了も残ったマスクが64万枚…

店舗や倉庫で売れ残った商品を売買する「オークファン」という会社では、2022年3~5月の3か月間で”マスク売却”についての問い合わせが約3倍に増えているという。

オークファンの倉庫
オークファンの倉庫
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オークファンでは、主に大手ECサイトなどで在庫になってしまったパソコンや大型家電を一度買い取り、必要とする企業に売り渡す。埼玉県にある自社の倉庫には製品が山積みになっていて、出荷を待つ。

大型トラックには不織布マスクの入った344箱の段ボールが積み込まれていく
大型トラックには不織布マスクの入った344箱の段ボールが積み込まれていく

この日、大型トラックの荷台にせっせと積み込まれていたのは344箱の段ボール。中を開けると…32万枚もの未使用の不織布マスクが入っている。

今回、マスクを売却したのは都内の美容コンサルティング会社。2020年夏、深刻化していたマスク不足を受けて不織布マスクの生産、販売を開始したが、このところの“脱マスク”の流れを受けて5月に事業終了を決断したという。

しかし、頭を抱えたのは、在庫として残ってしまった計64万枚ものマスクをどうするか。そんな中、オークファンのサービスを見つけ、買い取ってくれる先を見つけたという。

「布マスク」参入企業は多くが撤退、「不織布マスク」も…

「全国マスク工業会」の高橋紳哉専務理事は、マスクを生産する企業について「正確な数字は把握できないが、2021年12月~2022年1月の時点で1500~2000社あったものから数百社減っているのでは」と分析する。
コロナ禍で布マスクに参入した企業はほとんど撤退していて、不織布マスクについても、生産を終了し在庫を処分するという企業の話はすでにいくつも耳に入ってきているそうだ。

在庫として抱えるマスクを処分できるのは“今がラストチャンス”と考える企業は多いと、オークファンの担当者は話す。

オークファン・尾藤紅音さん
オークファン・尾藤紅音さん

オークファン・尾藤紅音さん:
これから夏になってくると余計にマスクをしたくないという人が増えてくると思うので、それより前になるべく売りさばきたいという企業のニーズがあった。ノウハウや販路を活かして、世の中の要らなくなってしまったものを、需要のあるところに届けられるビジネスに展開していきたいと思っています

「一定の需要ある」約5分の1の価格で販売

今回、オークファンを通じて64万枚のマスクを購入した岩手県のリサイクルショップ「再販」は、平均価格の約5分の1の値段で販売する予定だという。

再販・西國礼人社長
再販・西國礼人社長

マスクを買い取った再販・西國礼人社長:
まだマスクを外している方を見かけることはなかなかなくて、みんな慎重になっているのかなと、マスクの需要があるのかなと思い、購入しました。ずっと新型コロナと付き合っていくということは視野に入れて、一定の需要はあるかと

店頭に並ぶマスク(提供:再販)
店頭に並ぶマスク(提供:再販)

オークファンによるとマスクのほかにフェイスシールド、アルコール消毒液などの”コロナ関連”の在庫を売りたいという相談も増えていて、ますます再流通させる取り組みが加速しそうだ。

経済部
経済部

「経済部」は、「日本や世界の経済」を、多角的にウォッチする部。「生活者の目線」を忘れずに、政府の経済政策や企業の活動、株価や為替の動きなどを継続的に定点観測し、時に深堀りすることで、日本社会の「今」を「経済の視点」から浮き彫りにしていく役割を担っている。
世界的な課題となっている温室効果ガス削減をはじめ、AIや自動運転などをめぐる最先端テクノロジーの取材も続け、技術革新のうねりをカバー。
生産・販売・消費の現場で、タイムリーな話題を掘り下げて取材し、映像化に知恵を絞り、わかりやすく伝えていくのが経済部の目標。

財務省や総務省、経産省などの省庁や日銀・東京証券取引所のほか、金融機関、自動車をはじめとした製造業、流通・情報通信・外食など幅広い経済分野を取材している。

井出 光
井出 光

2023年4月までフジテレビ報道局経済部に所属。野村証券から記者を目指し転身。社会部(警視庁)、経済部で財務省、経済産業省、民間企業担当などを担当。