厚生労働省によると、全人口の1~2%の人が、何らかの「食物アレルギー」を持っているものと考えられている。

この食物アレルギーの中で、ここ最近、クルミやカシューナッツなどの「木の実類」で食物アレルギーを起こす人が増えているという。

これまで、日本人の食物アレルギーの3大原因は「鶏卵」「牛乳」「小麦」だったが、最新の調査で、初めて「木の実類」が「小麦」を抜いたことが分かった。

調査は、国立病院機構相模原病院の海老澤元宏・臨床研究センター長らが2020年、全国の1089人のアレルギー専門医らを対象に実施した。

この調査で、食べて60分以内に症状が出た「即時型食物アレルギー」を発症したケースをみると、原因の1位は「鶏卵」(33.4%)、2位は「牛乳」(18.6%)、3位は「木の実類」(13.5%)、4位が「小麦」(8.8%)だった。

3位以内に「木の実類」が入ったのは、今回が初めてだ。

即時型植物アレルギーの原因食物・2020年調査(提供:国立病院機構相模原病院の海老澤元宏・臨床研究センター長)
即時型植物アレルギーの原因食物・2020年調査(提供:国立病院機構相模原病院の海老澤元宏・臨床研究センター長)
この記事の画像(5枚)

ちなみに、前回・2017年の実施調査では、1位「鶏卵」(34.7%)、2位「牛乳」(22.0%)、3位「小麦」(10.6%)、4位「木の実類」(8.2%)だった。

即時型植物アレルギーの原因食物・2017年実施調査(提供:国立病院機構相模原病院の海老澤元宏・臨床研究センター長)
即時型植物アレルギーの原因食物・2017年実施調査(提供:国立病院機構相模原病院の海老澤元宏・臨床研究センター長)

「木の実類」の内訳を見ると、「クルミ」が最も多く463件だった。

【「木の実類」の内訳】

クルミ:463件
・カシューナッツ:174件
・マカダミアナッツ:45件
・アーモンド:34件
・ピスタチオ:22件
・ペカンナッツ:19件
・ヘーゼルナッツ:17件
・ココナッツ:8件
・カカオ:1件
・クリ:1件
・松の実:1件
・ミックス・分類不明:34件

「クルミ」の件数は2017年実施調査(251件)の約2倍、2011年実施調査となる11年前(40件)の10倍以上に増加。

「クルミ」はアナフィラキシーショックになったケースが58件あり、こちらは11年前(4件)の約14倍に増加した。

「ここまで木の実類が増えてきたことに驚いています」

「クルミアレルギー」が11年前に比べて急増しているのだが、理由としてはどのようなことが考えられるのか? また、自分が「クルミ」のアレルギーかどうかはどのように判断すればよいのか?

国立病院機構相模原病院の海老澤元宏・臨床研究センター長に話を聞いた。


――「木の実類」で食物アレルギーを起こす人が増えている、という認識で間違いない?

3年ごとの調査で経年的に増加していますので、間違いありません。


――「木の実類」が「小麦」を抜いたこと、どう受け止めている?

ここまで、「木の実類」、特に「クルミ」と「カシューナッツ」が増えてきたことに驚いています。


――「木の実類」が「小麦」を抜いた。この理由として考えられることは?

「鶏卵」「牛乳」「小麦」は定常状態(=一定の状態を保っていて変わらないこと)にありますので、「木の実類」が急増してきたからだと思います。

イメージ(木の実類)
イメージ(木の実類)

――「木の実類」の食物アレルギーの特徴は?

他の食物アレルギーと同じように、皮膚、粘膜、呼吸器、消化器の症状があり、比較的、症状が重篤になりやすいのが特徴です。

「本質的な理由は未だに分かりかねています」

――「木の実類」の内訳をみると、「クルミ」が多く、11年前の10倍以上に増えている。この理由としては、どのようなことが考えられる?

「消費量の増加」が考えられます。この10年で2倍程度に増えています。ただ、本質的な理由は、未だに分かりかねています。

イメージ(クルミ)
イメージ(クルミ)

――自分が「クルミアレルギー」かどうかはどのように判断すればよい?

「クルミ」を食べて、何らかの症状が出たことがあれば、医療機関で「IgE抗体検査(血液検査または皮膚テスト)」をすべきかと思います。


――子どもに「クルミ」を食べさせるのが心配な人は、どうすればよい?

他の食物アレルギーがある方は、事前に「IgE抗体検査」をしてみるべきだと思います。問題のない方は、少量から与えてみてはいかがでしょうか。


近年、急増している「クルミアレルギー」。急増の確かな理由は分かっていないのが現状だ。「クルミ」を食べて何らかの症状が出たことがあるという方は、まずは、医療機関で検査を受けてみてほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。