浅草から日光・鬼怒川エリアを結ぶ鉄道とその関連施設で、CO2の排出をゼロにする試みが始まった。

奥日光までCO2排出ゼロへ

栃木県を代表する観光地、日光に到着した特急列車の車内で流れるアナウンス…

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車内アナウンス:
お客さまにご案内いたします。この列車は、実質的に再生可能エネルギー100%で運行しています。

東武鉄道は4月から、一部の路線で使用電力を実質的に100%再生可能エネルギー由来の電力に置き換える取り組みを始めた。

再生可能エネルギーを示す「非化石証書」を電力会社から購入するほか、独自の取り組みとして約3分の1に当たるエネルギーを東武グループの太陽光発電所でまかなうなど、CO2排出量を実質ゼロにする。

対象は「浅草駅~栃木県・下今市駅」までの特急列車と、「日光・鬼怒川エリア」の区間を運行する全ての列車や駅施設など。

この取り組みにより、1年間で一般家庭約5000世帯分にあたる1万4000トン程度のCO2排出量が削減できるということだ。

東武鉄道 鉄道事業本部・遠藤航也電力課長:
(鉄道事業では)2013年度ベースで2030年度には50%削減の目標を掲げている。現状はそれに向けてスタートを切ったので、これからLEDや車両数削減をあわせながら目標数値を目指している。「エシカルトラベル」ということで、お客様を都心から日光までCO2排出ゼロで運びたいという思いがあり、こういった取り組みとなった。

東武鉄道が目指すCO2排出量ゼロの旅「エシカルトラベル」。その取り組みは観光地に着いた後も100%実質再生可能エネルギーの列車やEVカーシェアリングを使うことで、環境に優しい旅行が出来るという。

駅周辺には企業や自治体などと協働したEVのカーシェアリングやシェアバイクを配置。
2021年10月から運営を開始した環境配慮型のサイト「NIKKO MaaS」でその予約などが出来る。

今回の列車の取り組みと併用することで日光・鬼怒川観光エリアまで一体化した"脱炭素化"を後押しする。

東武鉄道 鉄道事業本部・遠藤航也電力課長:
日光・鬼怒川エリアにおいては「歴史・文化・伝統と自然が共生する国際エコリゾート」を目指しています。環境配慮をグループで取り組むことでアピールできると考えている。今回、日光・鬼怒川エリア限定となったが、東武鉄道全線でCO2排出ゼロを目指したい。

義務ではなくエシカルな活動に喜びを

三田友梨佳キャスター:
マーケティングや消費者行動などを研究されている一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。「エシカルな旅」を実現する試み、どうご覧になりますか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
これからの鉄道会社などは移動手段の提供にとどまらずに地域の持続可能な発展にも力を尽くさないといけません。今回の「NIKKO MaaS」もその表れの一つです。

いま、どこにでもあるサービスの提供よりも地域性を尊重した「おもてなし」が求められています。エシカルな旅を提供するためには地域に根ざしたお店や企業などとの連携が重視されるようになりました。

三田キャスター:
旅行業界がエコな取り組みを加速させる一方、私たちも訪れた旅先で地域や環境への配慮を持ちたいですよね。

鈴木智子さん:
旅をすることは好奇心を刺激し、人の成長にとって意義のある行動である一方、旅行者を受け入れる地域はいわゆる観光公害など負の側面もあります。

SDGs時代の旅行の在り方としては、旅行を楽しむためのエシカルな行動が旅行者の新たな責任として求められつつあります。

三田キャスター:
具体的にはどのような行動が求められるのでしょうか?

鈴木智子さん:
いま世界で、若者を中心にエシカルな旅行に対する関心が高まりつつあります。サステイナブルツーリズムと宇宙ツーリズムは旅行産業の中で成長機会が高い分野といわれています。

例えば、環境配慮の交通手段を積極的に使うこともエシカルトラベラーに求められています。また、旅行先からゴミを持ち帰ることも地域の負担を軽減することにつながります。

ただ、こうした事を責務として受け止めるよりもエシカルな活動に参加していることに喜びを見いだすことが大切です。これまでのように「何を見ようか」「何を食べようか」といった旅の満足だけを求めるのではなく、地域への環境の負荷なども考え、「何をしないか」ということもこれからは旅の一部になるのではないでしょうか。

三田キャスター:
自然があってこその旅行だということを忘れずに、旅先でも思いやりや配慮を大切にしたいと思います。

(「Live News α」4月4日放送分)