「たけのこの里」といえば、株式会社明治を代表する人気のチョコレート菓子の一つ。この菓子の形状が今年、立体商標として登録されたことをご存知だろうか。

それも、通常は“商品の形状自体”は立体商標として登録できない中、「たけのこの里」はある証明ができたことで“特例的”に認められた。

たけのこの里(提供:株式会社 明治)
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その証明が「長年の使用により、その形だけでどの商品であるか認識できる」こと。

明治は商標出願の際に、テレビCMや新聞広告のほか、アンケート調査で回答者の89%が「たけのこの里」の形状だけで商品名を回答した結果を提出。これにより全国的な知名度が認められ、例外ケースとして登録に至った。

そして、この立体商標を審査した特許庁が、12月にこの事例を「特例的に認められたもの」としてTwitterで紹介したことで、再び話題となった。

たけのこの里が歩んだ立体商標登録への道

そもそも「たけのこの里」とは、円すい型をしたクッキーに2層のミルクチョコレートがかけられた、1979年誕生のチョコレート菓子。姉妹品である「きのこの山」とともに、明治のロングセラー商品。

1979年発売当初の「たけのこの里」パッケージ(提供:株式会社 明治)

この「たけのこの里」の商標登録への挑戦は、立体商標制度が導入された1997年に「きのこの山」と共にしたのが始まり。しかし、この時は共に拒絶される結果となった。

改めて挑戦したのが2015年。当時、発売40周年を迎える「きのこの山」で、まず出願した。しかし、他社の事例もほとんどなく全くの手探りの状況。結果は、またも著名性を証明することができず登録には至らなかった。

しかし諦めずに3度目の2017年の挑戦で、「きのこの山」の形状だけから約90%が商品名を回答したアンケート結果が証明の資料となり、ようやくの登録となった。

立体商標登録された「きのこの山」形状の一部(提供:株式会社 明治)

この経験を活かし、2018年5月に「たけのこの里」の立体商標を出願し、今年の7月21日に登録になったという。

「やっと登録に!」愛されるお菓子だと実感

たしかに、“野菜”であるたけのこの形に独自性を証明するのは難しい。それを認知度という例外での登録となったことには、それこそ長年にわたって親しまれた歴史がなしたものなのだろう。

しかし、最初の出願から20年以上もの期間がかかった「たけのこの里」の立体商標登録はどういったことに生かせるのだろうか?また、どういった反響があるのだろうか?

明治・知財戦略部の長尾美紗子さんに話を聞いた。

ーー「きのこの山」では2回、「たけのこの里」でも1回の出願拒絶。その時の心境を教えて。

正直、悔しかったです。本当にたくさんの証拠資料を準備していましたので、「これでもダメか」と思いました。ですが「登録になるまで絶対頑張るぞ」という気持ちにもなりました。きのこの山は1997年、2015年、2017年と3回出願して、3度目の正直というか、ようやく!という感じです。

たけのこの里の立体商標は、1997年の出願の後、2度目の出願ですが、2018年5月に出願してから登録まで、3年以上とかなりの時間がかかりました。登録が決まった時には「やっと登録に!」という感じで、本当にうれしく思いました。

立体商標登録された「たけのこの里」形状の一部(提供:株式会社 明治)

ーー「たけのこの里」の立体商標において、特に苦労したことは?

著名性の証明方法が明確でなかったため、手探りで証明に取り組んだことです。登録拒絶の理由は、「商品の形状のみの場合、取引者・需要者は、単に商品の一形態を表示するにすぎないものと理解するに止まり、自他商品の識別標識として認識し得ない」という判断をされました。

つまり“普通の形状にすぎない”という事です。例外的に「長年の使用により、一般の取引者・需要者が、その形だけでどの商品であるか認識できるような状態になっている場合、登録が認められます」が、こちらを証明するための資料の準備がとても大変でした。

幸い、きのこの山立体商標登録の経験から、何を準備すれば良いかは分かっていましたが、それでもその準備には相当な時間と手間がかかりましたし、広報部門、マーケティング部門、開発部門や調査部門の方々など、さまざまな部署の方の協力が必要でした。

具体的には、著名性を証明するための資料として、CM資料や新聞広告資料、パッケージ変遷図、アンケート調査などを準備し、意見書と共に提出しました。また、提出資料の内容に問題がないかどうかについては、事前に担当審査官と面談して確認しました。

立体商標登録された「たけのこの里」形状の一部(提供:株式会社 明治)

ーーアンケート調査で回答者の約9割が「たけのこの里」を形状だけで認識。それに対してはどう思った?

自社商品に対するアンケート結果に対して、こんなことを言うのもあれですが、これは結構すごい数字だと思います。実は私は以前、マーケティングリサーチ部門の経験もあるのですが、純粋想起(選択肢などが何もない状態で、自由回答形式で回答してもらう方法)でこれだけの結果は、なかなか出るものではありません。

きのこの山立体商標のアンケート調査の際にも9割程度の認知率が出てはいましたが、たけのこの里でも同じ程度の結果が出るかどうかは分かりませんので、結果が出るまでは、正直不安な気持ちもありました。ですので、結果を見てほっとしました。

また誤答の中には、「たけのこの山」「たけのこの森」のような正答に類似する回答もあり、それらも合わせると、9割以上の方が認知している事になります。「たけのこの里」の形が、非常に多くの方から認知されていることがわかり、改めて国民的なお菓子として愛されていることを実感しています。

きのこの山はアメリカでも立体商標登録済み

ーー「たけのこの里」の立体商標が登録されて、反響はあった?

そもそも商標の話題が、こんなにメディアで取り上げて頂く事は滅多にありませんので、これだけ色々と話題にしていただいている事に、驚きつつも嬉しく思っております。業界の方だけでなく一般の方からのコメントも多数あり、普段商標に馴染みのない方にも興味を持って頂けたのかな、と思っております。

アンケート調査画面(提供:株式会社 明治)

ーー登録された立体商標を今後どういったことに生かしていく予定?

「きのこの山」「たけのこの里」という文字商標登録の場合、もちろん商品名も大事ではありますが、形状には権利は及びません。ですが立体商標が取れたことで、形状も権利として守れるようになったと考えております。

「きのこの山」「たけのこの里」は、板チョコが主流だった時代に、カタチが特徴的な商品として大ヒットし、ロングセラー商品となりました。形状を守れるようになったのは大きいと思います。

また、弊社では、将来的なブランド展開を想定し、かつ第三者による先行登録権利化を防止するために、複数の商品区分での広範囲にわたる商標登録権利化もしています。例えば、文房具やおもちゃ類では既に展開済ですが、「きのこの山」「たけのこの里」のライセンスビジネスも視野に入れております。海外では、アメリカでは「きのこの山」の立体商標登録をしておりますし、海外商品名についても商標権利化に取り組んでいます。


ーー改めて、「たけのこの里」の立体商標が登録された事をどう思う?

そのカタチが消費者に響き、大ヒットとなりました。この可愛らしくて特徴的な形は、皆さまから長きにわたって愛されてきており、今ではこの形だけで、多くのお客様が何の商品か分かるようになっています。この度、立体商標として登録されたことで、これからも商品の形を守り、末永く皆さまに愛されるブランドとして成長していきたいと考えています。

特許庁も“商標制度を知ってもらうため”SNSで発信!

特例的な「たけのこの里」の立体商標登録の嬉しさが、取材から伝わってきたが、審査した特許庁が、12月にこの登録についてTwitterで改めて紹介したのだ。
その際「たけのこの里」の正面がどこかを我々は知ることになり、そのことも話題となった。

知財にまつわる注目の最新ニュースを解説!
明治「たけのこの里」の形状が立体商標として登録されました。特例的に認められた理由は全国的な知名度にあり!
その経緯とは?!

では特許庁としては今回の登録をどのように思っているのだろうか? そして、なぜSNSに投稿することにしたのだろうか? 特許庁のSNS戦略に関して、特許庁・広報室・松浦安紀子さんに話を伺った。

ーー商品の形状であっても、なぜ高い知名度が認められると登録できるの?

“商品の形状自体”が、特定の会社の商品の形状として全国的に知られるようになると、消費者は、商品の形状を見るだけでその会社の商品であることを認識できるようになります。このような状態は、“商品の形状自体”が、商標の機能でもある「商品の出所表示機能」を果たしているということになりますので、商標法第3条第2項の規定の適用により、例外的に登録できることになっています。


ーー特許庁としては「たけのこの里」の立体商標登録に関してはどう感じている?

提出された資料を精査し、審査基準に基づいた判断の結果、登録に至ったものになりますが、特許庁広報室としては、この件をSNSで発信した後の予想以上の反響に驚いています。

特許庁公式Twitterアカウントに投稿された「たけのこ」の里の画像

ーーなぜSNSで「たけのこの里」の立体商標登録を投稿したの?

今回のツイートは、特許庁の広報誌「とっきょ」の記事紹介のツイートになります。“例外としての登録”(商標法第3条第2項の規定の適用)が認められた事例としては、炭酸飲料「コカコーラ」の瓶、乳酸菌飲料「ヤクルト」の容器などがあります。

「自他商品識別力を獲得している」というのは、多くの人が「あの会社の商品ですね」と想起できるということなので、必然的に話題性が期待できます。商標制度を理解していただくためのわかりやすい事例でもあることから、広報誌で取り上げることにしました。

なお、広報誌「とっきょ」では、2018年の記事で、株式会社明治の“商標を武器にしたブランディング戦略”について紹介しており、その中で「きのこの山」が立体商標として登録されたことに触れていました。今回の「たけのこの里」情報の発信は、そのアップデートという意味合いもありました。


ーー今後は、どういったことをSNSで発信していく?

特許庁の最新の施策情報に加えて、特許・意匠・商標といった「知的財産権」の制度や手続を、これから利用していただく方々にも易しく理解していただけるようなコンテンツの発信を行ってまいります。

直近では、農林水産省YouTubeチャンネルBUZZ MAFFとコラボし、「農業」の切り口から知的財産権について紹介する動画を公開しました。幅広い層に知財を身近に感じていただけたらと思っています。
 

商標制度について、まずは関心を持ってもらうために、高い認知度がある「たけのこの里」の投稿をしたのだそう。普段の投稿に比べ、たけのこの里のツイートには多くのいいねやリツイートが押されているのを見ると、多くの人が商標に触れるきっかけになったのではないだろうか。

また、先に立体商標が登録されて海外にまで広がる「きのこの山」と合わせて、「たけのこの里」の今後の展開が楽しみだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。

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