「菅総理自民党総裁選に出馬せず」の一報に永田町と霞が関に激震が走った。

総裁選で菅総理の支持を早々と表明し、最近では菅総理と面談を重ねていた小泉進次郎環境大臣がこれを聞いたのは、午前の閣議後会見が終わり大臣室に戻った直後だったという。

直前の会見では政局に質問が集中

速報が流れた直前の閣議後会見では、小泉氏に政局に関する質問が集中していた。

まず菅総理へ党内で反発が広がっていることに対して、小泉氏はこう答えた。

「近くで見ていて、総理ではなく一部の周辺が考えていることが、あたかも総理が考えていることのように報じられ、総理に対する反感に繋がっている。きのう『総裁選に勝ったものが衆院選の日程を決めるのは当然だ』との想いを私に伝えたのは、そういった党内の疑心暗鬼に対して『そんなことは考えていない』という総理の明確なメッセージです」

閣議後の会見に応じる小泉環境相
閣議後の会見に応じる小泉環境相
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さらに菅総理に対して国民からコロナ対策などで批判が集中していることについて質問されると小泉氏はこう庇った。

「総理が朝早く起きて仕事に没頭する姿を私は近くで見ていて、多くの国民の方にわかってほしいと思います。総理は既得権を突破する力、そして周りから無理だと止められても決断ができる覚悟、それが総理の強みだと思う」

誰もが疑わなかった重要幹部への抜擢

そして総理が苦手とされる国民への発信力について聞かれるとこう続けた。

「総理が強みを発揮していけるような環境をどうやって周りが整えるか。苦手なところは周りが支えればいい。きれいに読まなくていいのでご自身の言葉でお話して頂くことを国民は待っていると伝えています。苦手なところは周りが必死に支えます」

この会見の中で小泉氏は何度も「支える」という言葉を使い、菅総理支持を鮮明にした。

会見に参加したどの記者も、小泉氏が週明けの自民党人事で重要幹部に抜擢されることを疑わなかっただろう。

「こんなに仕事をした政権はなかったと思う」

しかし電撃的な総理の不出馬表明。この決断は閣議後会見後、大臣室に戻った小泉氏にも届いた。のちに小泉氏はこの時初めて総理の決断を知ったと語った。

そして夕方官邸に出向き菅総理と会った小泉氏は、記者団に悔しさを滲ませながらこう答えた。

「私としては総理が批判されてばっかりでしたけど、(環境問題等で)こんなに仕事をした、結果を出した政権は無かったと思う。そのことが正当な評価を受けるような環境をつくりたい。その想いで総理を支えてきました。総理のご判断が今日ありましたが、最後まで菅内閣の環境大臣として総理と仕事をしたいと思います」

菅首相と会った後、悔しさを滲ませる小泉環境相
菅首相と会った後、悔しさを滲ませる小泉環境相

不出馬も選択肢として意見していた

小泉氏はここ数日菅総理と何度か話し合いの場を持ってきた。その中で菅総理に対して総裁選不出馬も選択肢だと進言したこともあったという。

「現職の総理総裁が総裁選に突っ込んでぼろぼろになってしまったら、やってきたいいことすら正当な評価を得られない環境に総理をおいてしまうのではないか。本当にそのことが総理を支えるということなのだろうか。私はそういう想いを持っていたので、総理にあらゆる選択肢を含めてご意見していました。常に総理は耳を傾けながら率直に向き合う時間を取ってくれました。最後は総理のご判断です」

一方野党からの批判に対しては語気を荒げる場面もあった。

「野党から無責任だ、コロナから逃げたと批判あるが全く逆です。総理としてコロナに本気に向き合って最優先をコロナにしたいから引く判断をされた。無責任なんてとんでもない。逃げたなんてとんでもないです」

「菅総理を支持してきた立場で言うべきでない」

総裁選は河野太郎行革担当大臣が立候補を検討している。河野氏を支持するか問われると小泉氏は「閣僚として菅総理の支持を鮮明にしてきた立場で、きょう言うべきことではないと思います」と明言を避けたうえでこう強調した。

「総理から引くという判断があったのがけさでしたから、いま考えたいのは残された時間を国民の皆さんに評価頂けるような、花道を作ることが出来るように考えていきたい」

そして自身の出馬について問われると「総理をずっと支えてきたので、総理がやってきたことが評価されるように取り組みたい」と語った。

「感謝しかないですね」と言葉を詰まらせる

最後に小泉氏は、時に言葉を詰まらせながらこう語った。

「私がすごく悔しいのは、総理が人間味のない方だと思われている節があることです。全く逆で暖かい方ですね。懐の深い方で、息子みたいな歳の私に、引くという選択肢まで含めて話をする私に対して常に時間を作ってくれて・・感謝しかないですね」

目に涙を浮かべた小泉環境相
目に涙を浮かべた小泉環境相

そして小泉氏はあらためて菅総理を最後まで支えていく決意を述べた。

「思い出すとたくさんの言葉が浮かんできます。批判されるべきことはたくさんあると思う。だけど菅総理でなければできなかったこともたくさんあります。そういう仕事をしてきたのが菅総理だということを1人でも多くの方にご理解いただきたい」

小泉氏が今後総裁選でどのような選択肢を選ぶのか注目だ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。