12月特集は「こんなはずじゃなかった…コロナの1年」。2020年は就職活動のシーズンに、新型コロナウイルスの感染拡大が直撃した。就活イベントも中止や延期となり、学生側も企業側も苦労が絶えなかったのではないだろうか。

21年卒の学生には、就職内定率などにそうした影響とみられる変化も起きている。

大学生の内定率は過去2番目の下げ幅

厚生労働省と文部科学省の調査によると、21年3月に卒業予定で、就職を希望する大学生の就職内定率が10月1日時点で69.8%にとどまった。

調査は就職内定の実態を把握しようと、1年で計4回(10月1日、12月1日、翌年の2月1日、翌年4月1日)行われていて、ここ数年の10月1日時点の就職内定率は、17年卒(71.2%)、18年卒(75.2%)、19年卒(77.0%)、20年卒(76.8%)と70%台で続いていた。

大学生の就職内定率(出典:厚生労働省・文部科学省「就職内定状況調査」より)
大学生の就職内定率(出典:厚生労働省・文部科学省「就職内定状況調査」より)
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21年卒の69.8%は、前年同時期から7ポイント減少していて、これは1996年の調査開始から過去2番目の下げ幅となる。ちなみに、最も下げ幅が大きかったのは、リーマン・ショックが前年に発生した、2009年の62.5%(前年同時期より7.4ポイント減少)だった。

高校生の求人数は前年比で約25%減少

また、高校生の就職市場も苦境が続いている。2020年は臨時休校などの影響もあり、12月7日時点では内定率が公表されていないが、求人数などは大きく減少しているのだ。

厚労省の調査によると、最新の統計である今年7月末時点で、高校生を対象とした求人数は33万5757人で、前年の同時期より約24.3%も減少している。特に、宿泊業・飲食サービス業(49.6%減少)などでは、下げ幅が大きかった。

求人倍率も2.08倍と前年同期比から約0.44ポイントの低下をしていて、前年から大きく減少したのは2009-10年以来となる。

企業の求人倍率(出典:厚労省「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」より)
企業の求人倍率(出典:厚労省「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」より)

21年卒の就活市場はまだ終了していないため、結論を出すのは早いかもしれないが、コロナ禍の影響を受けているのは間違いなさそうだ。

オンライン面接など不慣れな形での就職活動を強いられ、現在も就職先が決まっていない学生はどのような苦悩を抱えているのだろう。そしてこれからでもできることはあるのだろうか。

就職情報大手「ディスコ」のキャリタスリサーチ研究員・松本あゆみさんに聞いてみた。

“合説”中止など前例のない「手探りの就職活動」

ーー就職活動の現状をどう見る?

新型コロナウイルスの影響が強まる前は、売り手市場が続いていて、企業はインターンシップなど早期からの学生との接点づくりを強化していました。志望企業をしっかり選んでいた学生は就活を順調に進められた人も多いと思います。

その反面、コロナ禍の影響が強まった後は、合同企業説明会などが中止になり、学生が企業と出会える機会も極端に減りましたので、学生も苦戦を強いられたはずです。早期から動いていた学生とそうでなかった学生の差が開きやすい状況だと思います。

学生も企業側も前例のない、手探りの就職活動だったのではないでしょうか。


ーー学生から聞かれた、悩みや苦労は?

主に大学生からですが、「先輩の就活経験が参考にならない」という意見はありました。面接などの採用選考も急きょオンライン化したので、手探りの状態だったそうです。

内定をもらえた人からも「入社するか、就活を続けるか悩んでいる」という声がありました。緊急事態宣言下で採用活動を中断する企業が出たので、例年なら内定を持ちつつ、他社の選考を受けられるところ、入社するかどうかの判断をすぐにしなければならなかったそうです。

学生は手探りの就職活動を強いられた(画像はイメージ)
学生は手探りの就職活動を強いられた(画像はイメージ)

ーー大学生の内定率が低下した要因は?

学生が企業探しをするタイミングで、ウイルスの感染拡大が広まり、学内セミナー・合同企業説明会などが中止になったこと、会社説明会もオンライン化され、職場に足を運ぶことができず、企業・仕事を理解する難易度が上がったことが影響しているかもしれません。

思うように就職活動が進まないことに不安を抱えたりして、モチベーションを保てない学生も多かったと思われます。コロナ禍の影響で採用を中止したり、採用数を減らした業界を志望していた場合は就職活動半ばで、志望業界の変更を迫られましたが、その頃には応募を締め切っている企業もあったはずなので、苦労は多かったと思います。


ーー高校生の求人数も減少したが、こちらは?

求人数は減少していますが、求職者数に対しては十分多い状況だとは思います。ただ、厚生労働省が発表しているデータを見ると業界によって濃淡があるため、志望業界によっては厳しくなったと言えます。特に旅行やアパレル、飲食関係などは影響が大きいですね。

また、大学生は全国の企業に応募できますが、高校生は学校が企業と学生の間に入り、就職をあっせんする採用形式が一般的です。その分、地元就職が多いので、地域の主要産業の業績や地元企業の求人状況によって、大きな影響を受けているのかもしれません。

高校生は求人数が減少したものの求職者数に対しては十分多い状況だという(画像はイメージ)
高校生は求人数が減少したものの求職者数に対しては十分多い状況だという(画像はイメージ)

コロナ禍の就活は情報が入手しにくい

ーーコロナ禍での就活を成功させるポイントは?

就活関連の情報が入手しづらい環境なので、自ら積極的に情報を取りに行く姿勢が必要
になると思います。ただ、ネットの情報は玉石混交なので、取捨選択や振り回されないことも大切です。学校職員(大学のキャリアセンターや高校の進路指導)や家族・友人・先輩など、周囲の人を頼ることや、新卒向けのハローワークやエージェントも活用していいと思います。

また、学生からは、コロナ禍の就活だとオンラインが中心なので、企業の雰囲気が分かりづらいという声もありました。入社してからイメージと違った…ということがないよう、会社を訪問する機会や社員と話せる機会はあるのか、確認しておくことも重要だと思います。


ーー就活で学生が注意すべきことは?

学生自身が気付かないうちに、周囲から遅れをとる可能性があるでしょう。例年だと、友人の動向を見て就活を始める人が多いですが、学校に行く機会自体も減ってしまいました。

また、積極的に動いた学生も苦労する可能性があります。内定を焦るあまり、早期に企業と接点を持とうとしたり、志望業界を絞りすぎたりして、選考が進んでから自分と合わないことに気付くことも考えられます。視野を広く持つことが必要ではないでしょうか。


ーー企業側は学生のどこを評価する?

評価基準に大きな変化はないと思いますが、コロナ禍でビジネス環境も変化したので、適応力や順応性を評価ポイントにする企業はあると聞いています。オンライン面接だと、学生の熱意や志望が伝わりにくいという声もあったので、学生の視点で考えると、立ち振る舞いや志望度などを少しオーバーにアピールしてもよいかもしれません。

オンライン面接では少しオーバーにアピールした方がよさそうだ(画像はイメージ)
オンライン面接では少しオーバーにアピールした方がよさそうだ(画像はイメージ)

2021年春まで採用を続ける企業も多い

ーーいま就活に苦戦している学生はどう考えるべき?

コロナ禍で採用の進捗が遅れた企業もあるので、内定率などは低下していますが、悲観しすぎる必要はないと思います。当社の調べでも、春まで採用活動を続けていくという企業も多くあるの
で「もう無理だ」とあきらめるのではなく、まだチャンスがあると捉えるべき
でしょう。

不透明な状況で不安も大きいとは思いますが、できることを1つずつ実行していくことが重要だと思います。一人で抱え込まず、周囲から客観的なアドバイスを得てもらいたいと思います。


ーー最後に22年卒の就活生へのアドバイスはある?

就職活動は今後も、オンラインの活用が進むと思うので、学生には、面接対策や通信環境などを事前に準備しておいてほしいですね。企業の採用計画も大きく変わる可能性もあるので、志望業界を特定の業種、業界にこだわりすぎず、幅広い視野で就活に臨んでほしいと思います。

2021年春まで採用を続ける企業もあるので、諦めないでほしい(画像はイメージ)
2021年春まで採用を続ける企業もあるので、諦めないでほしい(画像はイメージ)

2021年卒の学生は合同説明会などが中止となったり、周囲の動向が分からなかったりして不安を感じている人も多いだろう。ただ、松本さんによると、採用活動を後ろ倒しにする企業も多いとのことなので、諦めずに続けてほしい。
 

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プライムオンライン編集部
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