西日本豪雨の爪痕

住み慣れた岡山県倉敷市真備町で自宅の再建を望みながら踏み出せない男性がいる。豪雨から間もなく1年。例年になく苗が青々と見える。

この記事の画像(13枚)

須増国生さん:
2018年に植えただけで収穫のところまで行ってないんで不思議なもんですね。今まではそんなこと余り思わなかったです。2019年は特に1年できないだけで気分が変わりますね

ブルーシートが痛々しい岡山県倉敷市真備町箭田地区。小田川と高馬川の堤防に囲まれた場所に須増国生さんの田んぼはある。
6月22日、買い直した田植え機が働く日が来た。

2018年7月に撮影した須増さんの自宅がある箭田地区。
西日本豪雨で高馬川が決壊し3世代7人家族が暮らしていた家も農家にとっては欠かせない農機具も奪い去った。

生まれ育ったこの場所で自宅を建て直しもう一度、コメ作りを望む須増さんだが、家族の思いは違った。

須増国生さん:
家内とか子供は水害があって怖いと、元に戻っただけでは不安は取りされないということで安全な場所になりましたよっていう言葉が出れば「ここに住みたいです」ということになるんではないかなという思いでどうしようかなどうしようかなと

西日本豪雨の現状に国も動き出す

古くから水害に見舞われてきた真備町。小田川の流れが緩やかなために大雨になると高梁川の水が逆流し氾濫の引き金になっていた。

こうした問題を解決するため国土交通省は6月、小田川と高梁川とが合流する地点を下流に付け替える工事に取り掛かった。
この工事で流れをスムーズにし水位は最大5メートル下げられる計算だ。
さらに小田川の堤防7.2キロにわたって拡幅する工事や川底の土砂を取り除く工事が行われる。

須増さんが暮らす倉敷市内のみなし仮設住宅。西日本豪雨から約1年。国の大規模な治水工事が始まったがどこに家を再建するか結論は出ていない。

須増国生さん:
堤防のすぐ下に住居を構えることに子供が恐怖心を覚えている。恐怖の無い堤防の直し方でこういう風に直していれば真備町は安全だから家を建てようと自分たちで判断できるぐらいの直し方をして欲しい

6月25日、須増さんは倉敷市役所にいた。箭田地区11世帯の声を市に届けに来た。

須増国生さん:
水より高い位置に家があれば家は浸からない。今後の将来を見据えて若い人がどんどん戻ってきてもらえる起点になる直し方を井領地区では水害があったのでやりたい

川底の掘削で出た土砂を使って地区の土地を小田川の堤防と同じ5mにかさ上げして欲しいというものだ。
範囲や高さなど細かな調整のため今後、市の担当者が相談に応じることになった。ほんの少しだけ前進だ。

農家を続けないといけないなと思いました。

須増さんの自宅は取り壊して更地になり自宅の裏で土砂にまみれた田んぼはいま水をたたえている。
約20キロ離れたみなし仮設住宅から30分かけて通いながらの田植えだ。

須増国生さん:
今年は植えられるという喜び。心の中でやった出来るという感じ。お米を待っているという人もいてくれたので農家を続けないといけないなと思いました

ふるさとに戻ろうかそれとも…
その答えはいまも出せないまま。それでも日常をひとつ取り戻した2019年の田植えだ。

(岡山放送)

【関連記事:日本各地の気になる話題はコチラ】

岡山放送
岡山放送

岡山・香川の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。