バス運転手のスキルをAIで点数化

近年、バスやトラックなど運送業界のドライバーの減少や高齢化が問題となっているという。

そうした中、神戸市がこの問題を解決するために、新たな取り組みを始めた。NTTドコモとドコモ・システムズと共同で、AI搭載のドライブレコーダーを活用した、市バスの運行状況をリアルタイムにモニタリングする実証実験を実施しているのだ。

(画像提供:神戸市企画調整局つなぐラボ)
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ドコモ・システムズのドライブレコーダー活用サービス「docoですcar」を活用し、どのような運転操作があったのかなどのバスの運行状況を即座に可視化することで、リアルタイムな運行管理を目指す。

合わせて、バス車内に設置されたドライブレコーダーのセンサーから、ドライバーの動きをリアルタイムで感知し、運行終了後、ドライバーの運転スキルをAIが点数化。運転手や管理者が気付きづらい運転のクセを見える化することで、運転技術の向上にもつなげるという。

(画像提供:神戸市企画調整局つなぐラボ)
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取り組みは、まずは実証実験として10月12日から来年の1月31日まで、神戸市内を走行する市バス、5営業所 6台で実施する。

神戸市では昨年、市営バスが暴走し、8人が死傷する事故が起きた。このような事故を少しでも減らせるのであれば、有効なシステムとなるのではないだろうか。

それでは、バスドライバーの運転スキルはどのように点数化されるのか? この点数化は事故防止にどうつながるのか? 神戸市企画調整局「Be Smart KOBE」事務局の担当者に話を聞いてみた。

先進的技術を活用して社会課題を解決する取り組みの一環

――なぜ、今回の取り組みを行うことになった?

神戸市では、「Be Smart KOBE」として先進的な技術を活用して社会課題を解決する取り組みを推進しています。本実証実験は「Be Smart KOBE」の採択事業としての取り組みとなります。

「バスやトラックなど運送業界の運転手減少」という社会課題に対し、安心安全な公共交通の提供が求められるなか、常務経験の浅い運転手への指導や高齢運転手を含めた運行品質の担保に向けた指導業務の効率化、および運行管理を精緻化していくためのソリューションとして「AI搭載通信型スマートドライブレコーダー」の検討・検証を実施します。神戸市バスとしては実証フィールド提供に協力しています。

※「Be Smart KOBE」…世界が将来直面する人口減少や高齢化、エネルギー転換などの課題を、「先進」的な技術を活用しつつ、人間中心の目線で解決することを目指し、「Human×Smart」な都市づくりに取り組むプロジェクト。

――今回はどんな検証をしている?

今回の実証実験では、公共交通である一般乗合バスに対し、加速度センサ・位置情報・通信機能が備わった「ドライブレコーダー」と、取得したデータを集積・分析する「クラウド」を組み合わせたシステムで安全運転のサポートを行うものです。

NTTドコモは、神戸市バスの協力を受け、乗合バスの運行状況をリアルタイムで確認するとともに、加速度センサによるバスの挙動を検知し、警告による安全運転のサポートや、運行終了後に安全運転評価を作成するなどして運転習慣・技術の見える化など運行管理のデジタル化の検証を行います。

この取り組みと並行して、NTTドコモがオープンデータや環境データ(天候や場所、時間帯)などの外部データも組み合わせて分析することで、より安心安全で快適な公共交通の実現ができないか検討・検証を実施します。

運転手自身が気付いていない運転のクセを可視化

――どのようにして運転手のスキルを点数化する?

「docoですcar」では、急ブレーキ・急ハンドルなどの「非日常の運転」だけではなく、ドライブレコーダーから取得される運転中のすべての運転挙動を分析し、「日常の運転」における運転状況を診断しています。

ドライバー自身が気付いていない「運転のクセ」を分析・可視化し、本システムが神戸市バスとしての運転操作を正確に評価しているか、神戸市バスとしてはその検証のため実証フィールド提供に協力いたします。

管理画面イメージ(画像提供:神戸市企画調整局つなぐラボ)
管理画面イメージ(画像提供:神戸市企画調整局つなぐラボ)

――実験に参加するのは市バスの運転手全員?

全員が対象ではありません。一部の営業所に所属する運転手が実証実験の対象となります。


――どうすれば点数が上がる?下がる?

今回の実証実験では、各種センサ情報などを取得しながら、安全運転を再定義するところからアプローチしていきます。点数の高低を見える化するのは主目的ではなく、あるべき運転・あるべき公共交通を見える化していくことが目的です。

例えば、あるドライバーで急ブレーキが多発している場合、点数としてはそれを踏まえた結果が表示されます。しかし、これはただ点数が高い・低いという話だけではなく、例えば、急ブレーキの多発が通学路付近で起きているのであれば、普段からその付近は注意して運転するようドライバー間で情報共有し予防的な対策も議論できます。

このように、最適な公共交通の運営を実現するために検証を実施していきます。


――点数が低いドライバーはどうなるの?

NTTドコモとしては、まず前提として、ドライバーやその管理者でも気付きづらい運転のクセをデータによって見える化し、明らかにしていくことがポイントです。点数が高い低いということだけでドライバーを評価するのではなく、場所や時間帯、交通環境なども踏まえて、どのような運転の仕方が適切なのかを把握することが、日々変化する交通状況に対応していく上で重要であると考えています。

(画像提供:神戸市企画調整局つなぐラボ)
(画像提供:神戸市企画調整局つなぐラボ)

より安全で快適な公共交通を実現へ

――点数化は運転技術のみとなる?乗客への接し方は含まれない?

現時点では、点数化は運転技術のみであり、乗客への接し方は含まれておりません。


――バス利用者にはどんなメリットがある?

今回のプロジェクトは、「Be Smart KOBE」の一環として、神戸市民の皆さまに対し、より安全で快適な公共交通を実現するためにICTを導入してデジタル化を推進していきます。


点数で運転手のスキルを判断するのではなく、どのような運転の仕方が適切なのかを把握することが目的だという今回の実証実験。取得したデータを可視化することで、運転手にどんなクセが見つかるのかも気になるところだが、データを活用し、今後、さらに安全な公共交通を実現してほしい。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

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