7月に入りもうすぐ訪れる夏休み。
多くの小学生にとって楽しみな一方で、憂鬱なものといえば「夏休みの宿題」に違いない。

友達や家族と長い休みを満喫し、新学期目前になって先延ばしにしていた真っ白な宿題の山に青ざめ、「どうしてもっと計画的にやっておかなかったの!」という親からの小言に泣いた記憶を持つ人もいるのではないか。

親子向けの外出情報サイト『いこーよ』を運営するアクトインディが、そんな夏休みの宿題にまつわる調査結果を発表した。こちらは、12歳以下の子どもを持つ全国の保護者768人を対象として実施されたものだが、夏休みの宿題の必要性について、気になる結果が表れている。(調査期間:2019年5月7日~6月3日)

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「総合的に夏休みの宿題が必要だと思うか」という問いに対し、「絶対必要だと思う」が32%、「どちらかといえば必要だと思う」が53%を占める一方で、「まったく必要だと思わない」が2%、「あまり必要だと思わない」が13%となり、不要派が合わせて15%いた。

遊んでばかりいる子供を心配する保護者にとって、宿題はあった方がいいもののように思えるが、調査では15%の保護者が「不要」だと考えている理由についても聞いている。

「結局な親が手伝うことになり意味がないと思うから」というあるあるな回答もあったが、上位を占めたのは「自分の関心のあることに時間を使ってほしいから」が69%、「外出や旅行など、休みだからこそできることをしてほしいから」が48%、「遊びなど、勉強以外のことをしてほしいから」が44%となった。
いずれも、夏休みという貴重な時間を“学校から与えられた勉強”以外のことに使ってほしいという思いで共通している。

夏休みの宿題については、脳科学者の茂木健一郎氏ら有識者を巻き込んでたびたび聞かれる「宿題不要論」がある一方で、夏休みという機会を利用して学力もしっかり身につけてほしいという声もまた、根強い。

そこで今回は、不要論者も納得するような、夏休みの宿題の理想的な形はないか考えてみたい。石川教育研究所代表にして教育評論家の石川幸夫さんに意見を聞いた。

「宿題そのもの」の否定も出てきた

ーー今回のアンケート結果の背景には、親の事情や社会の変化もある?

「宿題不要」と考える親の中には、子供の教育に無関心で、宿題に対して「面倒くさい」という考え方を持つ方、今の形骸化した宿題のあり方に疑問を持ち、普段できない体験や経験を積ませたいとの考え方を持つ方の両方がいます。

したがって、子供の宿題の面倒を見られない共働き家庭だから、宿題不要と考えているとは言い切れません。共稼ぎゆえ、一定の宿題がなければ子供の行動に不安を抱く方も中にいます。

また、 驚異的な技術革新は、今ある知識や技術を役に立たないものへと追いやります。そこで教育は、新たな社会に適応する子供達を育てなければなりません。定番化して画一的な宿題を与えるだけでは、今後変化する社会に対応できる能力を育てることは難しいでしょう。

ーー宿題不要の声は今後も増えそう?

すでに、千代田区立麹町中学校(東京都)では、宿題を実際に全廃しています。夏休みの宿題に限らず、「宿題そのもの」を否定する考え方が出てきたのです。

同校の校長、工藤勇一さんの著書「学校の『当たり前』をやめた。」(時事通信社)による影響は大きく、小金井市立前原小学校の松田孝 前校長も「意味があるのか考えないといけない」と、夏休みの宿題不要論を後に公の場で示されています。学校の中にも、夏休みの宿題について見直すという傾向が出ています。

また、親子間のライフスタイルの変化により、宿題不要の考え方が増えることも予想されるところです。

ーー一方で、今の宿題の量が教師に負担を与えることは?

最近では、保護者でドリル形式の宿題を採点し、 先生が後に確認するだけの場合もあります。

ただ、保護者側が「学校からの強制的な学習であるから、子供も勉強をしなければならない」と考え、学校側に強く要望する場合、先生は多くの宿題を出さざるを得なくなり、当然の結果として負担は増えると思います。

夏休みの宿題が形骸化してきている

ーー宿題のラインナップは、ドリルや自由研究など、定番のものとなっている。これに対してはどう思う?

そもそも「宿題の目的」とは何でしょうか。それは間違いなく「子供の学力を上げること」、そして最も重要な「学習習慣をつけること」の2点になります。しかし、現実的には、この2つの目的は達成されていません。

今挙がった例は昭和から平成にかけてそう変わっておらず、夏休みの宿題が形骸化してきていると思います。目的が「宿題をこなすこと」 「宿題の提出」という義務的手段になっており、宿題の持つ意味や目的から少しずつ離れ、先生や生徒も半ば義務的に行っているように見えます。

本来は、「自身ができていないところ、理解していないことを理解し、長い休みの中で克服する」という方向が望ましいのではないでしょうか。

ーー夏休みの宿題のメリットとデメリットについてどう考える?

メリットですが、学習習慣のない子供には、一定の課題として宿題を課すことの意味が考えられます。

加えて夏休みは、原則的に学校で授業を行いません。そのため、 子供自身が積み残した学習、理解できなかった学習を補う絶好の時期だといえます。 しかし、この後の話にも重なりますが、全員が同じ宿題では意味を持たないでしょう。

デメリットに移ります。現在では、学力差や能力差に関係なく、一律のワークやドリルを渡されています。

そのため、学力の高い子にとって、ただ“こなす”ことが宿題の目的になっているほか、学力の低い子は先の「できないところを改めて履修し直す」というピンポイントの学習ができず、「やらされ感」が相当強まるかと思います。

ーー「夏休みの宿題が必要」だとする理由の上位が、「勉強する習慣がなくなるから」「習ったことを忘れてしまうから」となっているが?

まず「習ったことを忘れてしまう」ですが、これは事実です。調査によれば、長期間の休み明けのテストでは、以前に比べ10%程度の低下が確認されています。脳のおかれた学習環境が長期の休みで途切れるため、学習記憶も薄れていくと考えられています。

現在、大多数のご家庭で、我が子の学習の習慣づけに悩んでいます。8時から15時まで勉強する学校から1カ月以上離れるわけですから、親としては危機感を感じるはずです。ただ、家庭での学習習慣がないから、学校に宿題を出してもらい、勉強しなくてはいけない環境を作り上げているのではないでしょうか。

理想的な「夏休みの宿題」は?

ーーもし夏休みの宿題をなくす場合、代替としてどのようなものが適当?

当然ですが、宿題をなくすことは、勉強をしなくてもいいということではありません。子供達は親との話し合いを通じて事前に書き出した自分の弱点から、自身で問題を作成し、先生に預けます。そして、夏休み明けにテストをしてもらいます。

次に学習を習慣づけるため、学習日記用のノートを1冊用意した上で、同じ時間同じ場所で勉強します。そして、子どもの学習時間にこだわらず、親は「できたね!」とその行為を最大限に認めてあげるのです。これが、”学習をした”という達成感につながり、次のステップへと進んでいきます。ここでの親の存在は、重要です。

加えて、外部主催のキャンプや体験型学習の参加などは、違う人たちとのコミュニケーションにつながり、成長期の子供たちに貴重な経験となるでしょう。親子で参加もよいのではないでしょうか。

ーーこれからの夏休みの宿題はどうなるのが理想的?

理想は「自ら学ぶ」形だと思います。

個人的には、日々の学習日記を活用すべきだと思います。学んだことで分からない点、もう少し頑張れば分かりそうだという点を書きます。まずは、自分の能力を知ることからです。これを認識できることで学力は確実に伸びていきます。

そもそも、子供の能力や理解、進度はひとり一人で違います。だから、子供自身が学ぶという方向に目を向け、先生方はそれをサポートしていくべきなのです。そうすれば、教え込むこともなく、子供たちも「やらされている」という感覚を抱きません。

ーーそこで、保護者は子どもとどうかかわるべき?

親子では学習の習慣化を目指しましょう。主体は子供であることを前提として、子供にも「自分自身の課題」であることの自覚を持つよう促すのです。夏休みを子供の学習の習慣化に向けた第一歩として位置づけ、今からその準備を始めておくといいでしょう。

その時、親はあくまでサポート役に徹します。指示や命令で行わせるのではなく、あくまで親子間の約束として、互いに文章化し、毎朝確認するといいかと思われます。


時代や社会の流れにともなって、同じやり方が通用しなくなることもある。
夏休みの宿題も例外ではなく、宿題を課すならば、ただ単にこなすだけの対象ではなく、「社会に出ても通用する力」の基礎を身につけるようなやり方や課題に変化していくべきなのかもしれない。