ド派手なカーアクションに、荒野での迫力ある爆破。往年の刑事ドラマや特撮映画などではお決まりとして登場するシーンに、子どもの頃に興奮した人も多いのではないだろうか?

しかし、最近ではいろいろな規制があり、撮影場所の確保は関係者の悩みのタネになっているようだ。

そのような中、爆破ロケの場所を提供することで町おこしにつなげる試みが、福岡県筑豊地方で始まった。飯塚市出身の映像作家・永芳健太さんが中心となって、ロケ誘致を目指す「筑豊アクションプロジェクト」を2019年1月にスタートしたのだ。


広い荒野ではド派手なカーアクションや爆破を行うことができる

プロジェクトでは、ロケの誘致だけでなく爆破シーンを体験・撮影できるイベントも開催、なんと過去には「ロケットランチャー」を撃てる体験会もあった。

爆破して町おこし…言葉の響きだけ聞くと少し物騒な気もするが、なぜこのようなことを始めたのだろうか? 代表の永芳さんに聞いた。

小学生の時にドラマの爆破ロケを見て感動

――なぜこのような爆破を企画した?

小学4年生の頃、福岡で行われたドラマ「西部警察」のロケに見学に行き、その時目の前で見た、爆破シーンやカーアクションの光景に衝撃を受けました。また同時に、そういうシーンを撮影するために、プロのカメラマンやスタントマン、特効チーム、監督の方々の真剣な作業風景や緊張感が、幼心にとてもカッコよく見え、自分も将来、そういう凄い技術を持つ「職人さん」とともに、何かモノ創りができるような仕事をしたいと思い、その日から映画監督を目指すようになりました。

そして、家にあった8mmフィルムカメラを使って自主映画を制作し始め、その撮影を地元・筑豊の炭鉱跡地などで行っていたのですが、その頃に、何となく自分の中で、「筑豊にはこれだけ広くて使わない荒地や、全く車が走っていない道路があるのだから、ここに西部警察のようなアクション映画のロケを呼んだらいいのに」と思っていました。


――その子どもの頃の思いが、今回の企画につながった?

それから数十年が経ち、憧れていたテレビや映画の世界に入りましたが、すでに時代が変わり、日本ではハリウッドのようなアクションが撮りにくい状況となっていました。同時に、私自身が日本各地の自治体の地域ムービーなどを制作する中で町おこしに興味を持ち始め、やるならば地元の筑豊で自分にしかできないようなことをやれないかと考えたとき、小学生の頃に自主映画を撮りながら思っていたアクションロケ誘致のことを思い出しました。

これに今の日本ではアクション撮影を行える場所が少ない問題などをリンクさせると、「町おこしとして成立できないだろうか?」と思ったことがプロジェクトを立ち上げたキッカケです。

自動車だけでなく、列車を使用した体験会も行われた

“修羅の国”のイメージを逆手に

――企画が始まったのはいつ?

企画書を作成したのは、約3年前になります。それから、いくつかの市役所などに企画を持ち込みましたが、どこも、まず「爆破」という言葉を聞いただけで引かれて、ほぼ全ての場所でNGになりました。

ですが、それでも諦めずに2年くらい地道に動いているうちに、少しずつ理解者が現れ、さらには土地の所有者や、行政でも付き合って頂けるような町が出てくるようになり、2018年の秋くらいから急に動き出し、今年1月に1回目のイベントを実施できるようになりました。


――この爆破ロケはどのような形で町おこしにつながる?

例えば筑豊地域には、炭坑の跡地で全く手がつけられていない荒地や廃墟、シャッターが閉まったままの商店街の店舗、ほぼ車の走っていない道路などがあります。今後もただ残っているだけの場所にするのではなく、その場所を映画産業資源や観光資源に変え、「筑豊でしかできないロケの誘致」「筑豊でしか不可能なイベント」などを行うことができれば、地元への収入や観光客の増加などにつながるのではと思っています。

そして筑豊(福岡)といえば、ネット上では“修羅の国”と称されたりと、昔から「怖い」「暗い」といったネガティブなイメージがあります。これをムリに蓋をせず、逆手にとればアクションやハードボイルドといった男気のある世界観とリンクさせることもでき、「筑豊のイメージをまた違ったものに転換できるのではないか?」とも考えました。

爆破を間近で体験する参加者

地元の人も「どんどんやってください!」

――イベントで大変なことは?

まずは、安全を確保するということです。スケール感を大きくしたいという想いはもちろんありますが、やりたいことだけを求めすぎて事故が起きたり、地域の方々にご迷惑をおかけすることになれば本末転倒で、町おこしの意味が失われてしまいます。「最大限に攻めた迫力を求めつつ、安全がしっかり確保できるか」という点が一番重要だと考えています。

そのため、単に「イベントを行う」という方法ではなく、関わる全ての関係者が映画やテレビのプロだったり、国際A級ライセンスを持つドライバーだったりと、映画を制作するようなレベルの環境を構築し、その中に一般参加者を投入するという贅沢さも、このプロジェクトならではの魅力だと思っています。 さらに、爆破や銃撃戦の仕掛けなども全て映画撮影と同じものを使用し、迫力やリアリティも可能な限り求めています。


――これまで開催してきた反響は?

スタート前の想定以上の大反響を全国から頂き、私自身が大変驚いています。過去に開催したイベントには、福岡県内だけでなく、わざわざ東京など遠方からも参加される方もいらっしゃいました。また、マレーシアや台湾、香港などの旅行会社から体験ツアープランのお話しを頂いたりもしています。

最近では、役所、警察、消防などの各方面を始め、市民の皆さまにもご理解頂けるようになり、何かあった場合には各機関で対応頂けるような環境を整えていただいたり、現場に見学に来られた地域の方々も「どんどんやってください!」とお声がけいただけるようになってきています。

イベントでは大迫力のロケットランチャーも使われた

――爆破ロケをしたいという問い合わせはあった?

スタートから7月までの6か月間のロケ誘致実績は、ドラマ1本、CM4本、MV(ミュージックビデオ)1本、バラエティ番組6本、特番が1本になります。8月以降は、有名ドキュメンタリー番組の密着なども開始予定です。

――今後はどのような企画を考えている?

プロジェクトの企画はまだ途中段階で、これからさらにスケールをアップしていく予定です。現状、第3弾まで開催していますが、いま第6弾まで同時進行で準備を行っていて、今後は空や水の上などでも企画を行い、陸・海・空で筑豊では撮影ができるようになることを目指しています。

そうして、国内の映画撮影などの誘致だけでなく、海外からのロケ誘致につなげたり、一方で、インバウンドに向けたオリジナルのツアーイベントを開催したりできるようにしていき、最終的には、筑豊地域をアクションに特化した特別区のようにできればと思っています。


活動半年で既に10本以上のロケ誘致に成功し、体験イベントには県外からの参加者もいるというのだから、たしかに町おこしにつながっているようだ。まだまだいろいろなアイデアがあるようなので、これからもこのプロジェクトに注目していきたい。

(画像:筑豊アクションプロジェクト)