思わず二度見!?

街中を歩いていると、ふと目にとまる看板や標識。
印象を残そうと創意工夫を凝らしたものが多く、地域性が出るものもある。

そんな中、JR青森駅の近くにある看板がTwitterに投稿され、「青森らしい」と話題を集めている
出張で青森に訪れたという、リツ(@litz331)さんが投稿した、看板の画像がこちら。



白の格子扉に取り付けられた看板には、「関係者以外立入禁止」の文字。
ここまではよくある光景だが...問題はその下の小さな看板。
 

 
 
この記事の画像(7枚)

「引く」をよく見ると右上にあるのは、濁点...?「引ぐ」と表記されているのだ。
 

 
 

どこか気の抜けたような表現に、ネットからは「ぐ?」「大笑いしてる」といった反応が続々。この投稿は、2万9,000以上のリツイート、6万9,000以上のいいねを集めている。(7月10日現在)

投稿画像にもあるが、この看板はJR青森駅が設置したもの。
そして私事ながら、青森県出身の筆者は、この表現が津軽弁の訛りと分かる。「引ぐ」は「引く・引っ張る」が訛ったもので、イントネーションを矢印で表現すると「引→ぐ↑」、カタカナだと「ヒィグ」「フィグ」となる。

それにしても、なぜこのような方言の看板を設置したのだろうか。
JR青森駅に連絡したところ、看板を設置した、吉田正樹副駅長が取材に応じてくれた。
 

「引げ」も考えたけど...

――この看板はどこにある?

JR青森駅とその隣にある商業施設「LOVINA(ラビナ)」の間にあります。駅とラビナの名前をとって「エビナ」とも呼ばれる空間ですね。看板自体は、社員専用の業務用通路につながる扉に付いています。

 

画像下部にあるのが話題となった扉。確かに「エビナ」とある(提供:JR青森支店)
画像下部にあるのが話題となった扉。確かに「エビナ」とある(提供:JR青森支店)

――なぜ津軽弁の看板を?

青森駅周辺では、都市開発計画の一環で改修工事が進んでいます。
この扉もそれに伴い設置されたのですが、入るときは「内開き」、出るときは「外開き」でしか開かなかったんです。みんながそれを知らずに動かすものだから、蝶番のところが何度も壊れてしまって...

この状態をどうにかしようと、2018年の秋ごろに設置しました。私は岩手県出身なのですが、目立たせて注意喚起したいと津軽弁を使いました。津軽弁には「引げ」という方言もあるのですが、それだと命令っぽくなる。でも「引く」なら普通すぎる..と考え、「引ぐ」に落ち着きました。
 

看板自体は目立たない場所にあるという(提供:JR青森支店)
看板自体は目立たない場所にあるという(提供:JR青森支店)

壊れることはなくなりました。でも理由は…

――看板の効果は?同じような看板はある?

実は看板を設置した数日後、修理業者から「両開きもありますよ」という話をいただいたので、両開きにしてしまいました。当然ですが、壊れることはなくなりました。

私が知る限り、同じような看板は他にはありません。話題となった扉の裏側にも看板はありますが、こちらは津軽弁が思い浮かばなかったので「押す」となっています。今考えると「おっつける」もありましたね。

※「おっつける」=津軽弁で「押す」の意味


――市民などから反応はあった?

社員からは「青森の人間ならあっちのほうが分かりやすい」「面白い」という声はありましたが、業務用通路ということもあり、一般市民からの反応は聞いたことがありませんでした。

今回の投稿がきっかけで話題となり、驚いています。ありがたいですね。

 

裏側は津軽弁ではなく、普通に「押す」。理由は「思いつかなかったから」とのこと(提供:JR靑森支店)
裏側は津軽弁ではなく、普通に「押す」。理由は「思いつかなかったから」とのこと(提供:JR靑森支店)

現駅舎は2021年3月に役目を終える…

――伝えたいことなどはある?

JR青森駅の現駅舎は、2019年12月で60周年を迎えますが、都市開発計画の一環で2021年3月に役目を終えます。駅の機能は建設される自由通路に統合され、現駅舎は取り壊される予定です。

私が聞いた話では、青森駅の最盛期は駅の近くでリンゴなどが売られ、にぎわっていたといいます。青森県民のみならず、旅行などで訪れた人もいるはずです。思い出を振り返る意味でも、もう一度訪れていただければうれしいです。

 

JR青森駅の夜景
JR青森駅の夜景

地元民には当たり前の方言も、他県民には新鮮に映ることがある。吉田副駅長が「引ぐ」という看板を設置したのも、リツさんがその看板をTwitterにアップして話題となったのも、方言の面白さがあってのものだろう。

皆さんの古里にも、遊び心あふれる“ご当地看板”はあるはず。探してみると、思わぬ魅力が発見できるかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。