船を“朝の通勤手段”として活用する社会実験
東京都が、東京都内の“朝の通勤手段”として「船」を活用する社会実験を、7月24日から始める。
実施期間は、7月24日から8月2日の平日の8日間。
中央区の晴海地区にある「朝潮運河の船着き場」から「日本橋の船着き場」の間で行われ、午前7時半から午前9時まで、15分間隔で合わせて14便が運航される。
小型船6隻を使用し、1便の定員は40人程度。
ホームページや電話での事前予約制のため、確実に座れるのだという。
利用料金は無料で、片道の所要時間は30分~40分程度を見込んでいる。
今回の社会実験は、日常的な通勤電車の混雑緩和もそうだが、編集部がこれまで取り上げてきたように、2020年の東京オリンピック・パラリンピック期間中を見据えたものでもあると思われる。
(参考記事:「東京2020」その日、電車は止まり駅では大混乱が起きる…専門家が警鐘)
(参考記事:東京五輪まで2年。通勤の“混雑率200%”緩和へのカギは「テレワーク」)
では、今回のケースで「船」を通勤の選択肢として考える場合、電車やバスと同じ区間での移動を想定すると、どの程度、移動時間に差が出るのか?また、通勤に船を使うことにメリットはあるのか?
東京都の担当者に話を聞いた。
船の“交通手段”としての可能性を検証
――今回の社会実験の狙いは?
かつて江戸は、舟運が経済や人々の生活を支え、水の都として栄えてきました。今もなお、東京には川や海、運河などすばらしい水辺の空間があります。
東京都では、こうした水辺の魅力を都民に実感していただくために、船旅のPRや新たな航路の開設などにより、船を身近な観光・交通手段として定着することを目指し、2016年度から取組を進めています。
2016年、2017年と2年間にわたり、主に観光や移動を目的に、8航路で社会実験を行い、このうち3航路で民間による運行がすでに始まっています。
今回、船による社会実験を行い、通勤などの交通手段としての可能性について検証していきたいと考えています。
――同じ区間での移動を想定した場合、電車やバスと比べると、どの程度、移動時間に差が出る?
電車で移動した場合は、「勝どき駅から三越前駅 (東京メトロ半蔵門線、都営大江戸線使用の場合)」までで約20分。
バスで移動した場合は、「晴海三丁目から東京駅八重洲口まで(都バス使用の場合)」で約30分かかります。
船の移動時間は約30~40分なので、電車の場合は約10~20分、バスの場合は0分~約10分の差が出ます。
メリットは「混雑から解放された新しい通勤が体験できること」
――船を使った通勤にメリットはある?
全員が着席でき、運河や川などを利用してノンストップで運行するため、混雑から解放された新しい通勤が体験できることです。
また、船の通勤は、自動車のように渋滞がないので、天候などの影響がない限り、時間通りに目的地まで到達できることもメリットの1つです。
さらに、朝の涼しい時間帯に、運河や川などを船で通ることで、普段の通勤風景とは違った、船ならではの街の景色を堪能できることも、メリットと言えます。
――屋根がない船もあるが、雨が降ったときの対策は考えている?
大雨や台風などの異常気象の時は、運行を取りやめる予定ですが、雨量が少ない時には予定通り運行する予定です。
運行を取りやめる場合にはホームページなどで事前にお知らせいたします。
また、屋根がない船については、ポンチョを貸し出すなどの対応をする予定です。
――道路や電車の混雑の緩和も想定している?
今回の社会実験は、都内で朝の通勤などの交通手段として船を利用していただくことが目的のため、道路や鉄道の混雑緩和などの効果は想定していません。
――今回の社会実験の結果は、どのようなかたちで活かされる予定?
社会実験のアンケート結果や事業採算性などを検証した上で、来年の東京オリンピックの期間中やその後の新たな航路の実現可能性について、検討していきたいと考えています。
東京都が実施する、“朝の通勤手段”として「船」を活用する社会実験。
電車に比べて移動時間はかかるが、確実に席に座れるうえ、混雑からは解放される。この機会に一度体験してみるのもいいかもしれない。