特集・シリーズ広島県警24時 第10弾です。
クリスマスや忘年会でお酒を楽しむ機会も増えてきます。
飲酒運転による悲惨な事故を無くそうと、深夜に行われている取り締まりに密着しました。

コロナ禍が明け、繁華街に人が戻ってきた福山市中心部。
夜の深い時間になるとあちこちにほろ酔いの人たちの姿が…

この時期に警察が頭を悩ませているのが飲酒運転の増加だ。
今年県内で、飲酒運転で検挙されたのは10月末までに609件。
そのうち福山東警察署管内では82件で県内ワーストの数字となっている。
過去10年で見てもコロナ禍前を上回る検挙数。
去年11月からは自転車も、取り締まりの対象となったこともあり、すでに去年1年間に迫る件数になっている。

警察はこの状況に強い危機感を抱く。


【福山東警察署 交通第2課 河野篤史 課長】
「飲酒運転は重大な交通違反であり、重大な死亡事故、重傷事故に結び付く可能性が高くなります。絶対に許してはならないという信念のもと、取り締まりを強化しております」

悲惨な事故をなくすため、福山東警察署の取り締まりは曜日を問わず行われる。
パトカーで繁華街を走り、不審な動きをする車や自転車がいないか目を光らせている。

そんな中…見覚えのある高齢男性が自転車に乗っているのを見つけた。

【警察官】
「自転車の運転手さん止まってください、自転車の運転手さん!」

すかさず警察官が呼び止める。

【警察官】
「なんで同じことをするん、自分。今日何本飲んだん」
【男性】
「何本って…湯割り」

実はこの男性、これまでにも車の飲酒運転で検挙された経験があった。

【警察官】
「あなたが誰か傷つけたらいけんやん」
【男性】
「うん」

厳しく注意すると、少し反省したような表情を浮かべるが…

【警察官】
「お酒のにおいするね」
【男性】
「焼酎の湯割りを」
【警察官】
「結構飲んどるやろう」
【男性】
「そんなに飲んでない。カラオケが主じゃ」

焼酎のお湯割りを3杯飲んだという男性。
検知の結果、男性の呼気からはアルコールが検出されたが基準値未満だったため厳重注意となった。

【福山東警察署 交通第2課 亥下大貴 警部補】
「みなさんすごく飲酒量が多くて、何十杯も飲んでいた方とか、飲んでちょっと寝て大丈夫だろうと思って出られる方ですね。そういった方が多い傾向にあります。運転手さんとかはですね、パトカーを見たら目をそらしたりとか、急に安全運転になられる方がすごく多いので、そういったところに着目して取り締まりをやるようにしています」

飲酒運転は呼気1リットル当たりアルコールが0・15ミリグラム以上で酒気帯び運転となり、罰則は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。
また、自転車の場合でも同様の罰則が科される可能性がある重大な犯罪。

また別の日。

午前0時を回ったころ、歩行者が多く行き交う道を速いスピードで自転車に乗る女性を見つけ、警察官が声を掛けた。

【警察官】
「ちょっと飲んどる?」
【女性】
「あーでも結構前に飲んで、もう帰らんといけん」

女性からは酒のにおいが…。
3時間前にアルコール度数7%の酎ハイを1缶飲んだだけだと女性は説明。

しかし…

【警察官】
「香ります」
【女性】
「香りますじゃねえんよ。じゃけ、(アルコールが)出やすいんだって、めっちゃ、じゃけ3、4時間空けんといけんと思って空けてきとるわけじゃん。いけんよって言われとるわけで」
【警察官】
「まあ測ってみましょうよ、まずは」

ネットの情報を信じて飲んだ後に時間を空けたと言うが…検出されたのは0・25ミリグラム、基準値を優に超えている数値だ。
飲んだ量や時間と出たアルコールの計算が合わないが、女性は聞く耳を持たず主張を曲げない。

【女性】
「私が知ったこっちゃないじゃん」
【警察官】
「いや、知ったこっちゃないじゃないよ。現にね、私にも結構におうし」
【女性】
「こんなんだったら飲んどきゃ良かった。もうちょっと。損した気分なんじゃけど」
【警察官】
「うーん、ダメよ」

飲酒運転を軽視するような発言に警察官も呆れ顔。
結局、女性を任意同行し、警察署で詳しく話を聞くことになった。


後を絶たない飲酒運転・・・
警察はただ取り締まるだけでなく、アルコールを提供する店舗とも連携を強め飲酒運転を許さないまちづくりにも力を入れる。

福山市の繁華街にある割烹。
店内の目立つ場所にポスターを貼って啓発しているという。


【割烹有本・有本靖朗さん】
「お店はおいしい料理とか、おいしいお酒を提供して楽しんでもらおうと思って頑張っていますので、飲酒運転することでつらい思い出になっちゃいけないので、うちの駐車場を使われたお客さまには帰るときには代行を呼んでもらうことにはしています」

悪質な飲酒運転をなくすにはドライバーの意識向上が不可欠。
1台1台、地道に声をかけ、「許されない行為」だとわかってもらう必要がある。

【警察官】
「こんばんは、福山東署の川上と申します」
【男性】
「はいはい」
【警察官】
「今、飲酒検問させてもらってます」

コインパーキングから出てくる車や繁華街にいる車を止め、簡易検知器で飲酒の有無を確認していく。
運転代行サービスの営業が終わりつつある午前3時半。
特に飲酒運転が増える時間帯に突入した。
繁華街を走る車に信号待ちで声を掛ける。

【警察官】
「こんばんは、福山東署の川上と言います。今、飲酒検問させてもらっとるんですけど、お酒など飲んでない?」
【女性】
「いやー早くには飲んだ」

あっさりと飲酒を認める女性。
検知結果は…。

【警察官】
「0・19。だめですよ。お酒入ってますよという扱いになる」
【女性】
「そうなんだ」

道交法違反にあたるとしてパトカーの車内で詳しく話を聞かれることになった。

【女性】
「じゃあ乗って帰れないの」
【警察官】
「ダメ」
【女性】
「代行頼む」
【警察官】
「何を飲みましたか」
【女性】
「焼酎水割り。5~6杯かな」

女性はゴールド免許。
午後8時ごろまで自宅で焼酎を飲んだ後に、繁華街で酒を飲んだ息子を迎えに来たところだったという。

【警察官】
「お酒、体の中に残っている感覚があるでしょう。抜けんかったよということになるんで」
【女性】
「うん」
【警察官】
「そういう状況で運転しちゃいけん」
【女性】
「そうですね」
【警察官】
「いけんと思ってるでしょ」
【女性】
「大丈夫と思って」

違反点数は免許停止の13点。
女性は認識の甘さを自覚し、深く後悔したが、してしまったことは取り返しがつかない。

【福山東警察署 交通第2課 河野篤史 課長】
「少しの時間休んだからお酒が抜けるということはありません。(市販の)飲酒の簡易検知器等を活用していただいて、自分は絶対に飲酒をしていないという確認をされてから運転される方が間違いがないと思います。『お酒を飲んだら絶対に車に乗らない、車に同乗しない、車を運転する人には絶対にお酒を提供しない』というところで必ず守っていただければと思います」

どんな理由があっても許されない飲酒運転。
「飲んだら乗らない」は私たちの義務なのだ。


ここからは取材した毛利記者です。

ー 飲酒運転はだめだというのは誰もが知る当然のことですが、検挙される人は結構多いんですね。

【毛利記者】
はい…自転車も取り締まりの対象となったとはいえ、今年だけでも県内で600件を超えているというのには驚きました。また、飲酒運転による死亡事故は8日までに4件起きています。いずれも単独事故で自動車3件、バイク1件です。

- 重大な事故につながるかもしれないのに、どういった理由で飲酒運転してしまうのでしょうか。

【毛利記者】
はい、警察に聞きますと、少し休んだから良いだろうと言う人もいますし、運転代行サービスに断られたと説明する人もいるそうです。
やはり、心の中では、バレなければ大丈夫という心理があるのかなと思いました。

ー お酒を飲んだ場合、どのくらい時間を空ければ大丈夫なんでしょうか。

【毛利記者】
大まかな目安はあるそうですが、これも個人差があります。一番は簡易チェッカーが市販されていますので、運転する方はこちらを活用するのが一番かなと思います。

【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
飲酒運転について、本人の自覚もありますが、まわりの人が厳しく言うことも必要だと思います。

テレビ新広島
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