中国と日本の外交関係が冷え込む中、関西の観光地では変化が起きています。
高市総理の『台湾有事』発言を受け、中国政府は自国民に日本への旅行や留学を自粛するよう警告。この影響で中国人アーティストの公演が中止になるなど、日中関係は緊張状態に。
果たして、関西の観光地は今どうなっているのでしょうか。
関西テレビの秦令欧奈アナウンサーが、大阪・京都を徹底調査しました。
■訪日外国人観光客の中で全体の消費額の約24%を占める中国人
日本を訪れる外国人観光客の中で、最もお金を使うのが中国人観光客で、全体の消費額の約24%を占めています。
訪日自粛が1年間続けば、日本の経済損失は、なんと約1兆8000億円とも予測されているのです。(野村総合研究所調べ)
■心斎橋から姿を消した中国人観光客
新斎橋には多くの人が行き交い、一見すると外国人観光客も以前と変わらない様子。でもよく見ると…。
【秦令欧奈アナウンサー】「今日も多くの外国人観光客の方いらっしゃいます。ぱっと見るとアジア系の方も非常に多いように見えますが、本当に中国人の方は減っているのか調査していきます」
早速、秦アナは外国人観光客に声をかけていきます。
【秦令欧奈アナウンサー】「すみません。こんにちは。Where are you from?」
声をかけた外国人観光客は、シンガポール、韓国…。中国人観光客の姿はなかなか見つかりません。
【秦令欧奈アナウンサー】「(中国人観光客は)本当に減ってますね。おそらくたまたまじゃないです」
■店舗で話を聞くと中国人観光客は半分以下も“大打撃ではない”という回答が
そこで秦アナは心斎橋のたこ焼き屋などの店員に話を聞いてみました。
【秦令欧奈アナウンサー】「中国の方って減りました?」
【店員】「減りました。半分以下になっている」
【秦令欧奈アナウンサー】「店の売り上げに影響は?」
【店員】「でもその代わり韓国人観光客が増えたので、大打撃ではない」
■外国人観光客に人気のおにぎり屋さんでも調査
続いて、行列のできている外国人に人気のおにぎり屋さんでも調査。ここでも並んでいる外国人観光客にどこから来たのか聞いていきます。
【秦令欧奈アナウンサー】「Where are you from?」
インドネシア、タイ、オーストラリア、台湾、ハワイ、シンガポール、マレーシア…。なんと並んでいた24人全員が外国人でした。
並んでいた24人全員が外国人。以前は中国人観光客も2割ほどいましたが、この日、中国本土からきた観光客はひとりもいませんでした。
おにぎり屋さんの店主に影響を聞いてみました。
【おにぎりごりちゃん代表 谷川翼さん】「ありがたいことにずっと満席なんで、今のところ売り上げに影響は出ていない。中国向けの集客をしている飲食店は、これから厳しくなりそう。これからどうなるかはちょっと心配」
■「売り上げに影響ない」が9割 一カ月の売り上げが”300万円”減少のレンタル着物店も
続いて、京都の人気観光地に向かって調査しました。
あぶらとり紙で有名な「よーじや」。ここでも中国人観光客は減っているそうですが…
【よーじや広報 東紗良さん】「(中国のお客さんは)“爆買い”というイメージがあるかと思いますが、大量に購入していただく方が多い。(購入額は)数万円ぐらい。紅葉シーズンで、日本人観光客が増えた。売り上げはプラスになっている」
しかし、すべての店舗が影響なしというわけではありません。レンタル着物店では...
【店主】「(利用者の)半分ぐらいは中国の方でした」
【秦令欧奈アナウンサー】「それじゃもう大打撃」
【店主】「1カ月で、ざっくりで言いますと、300万円ぐらいは減っている。あしたからどうしようかなと思って...」
大阪と京都合わせて20店舗で聞いたところ、売り上げが落ち、大打撃を受けていると答えたお店は、わずか2店舗でした。
■自粛要請にもかかわらず来日する理由とは?
調査を進める中で、秦アナウンサーは疑問を抱きます。
【秦令欧奈アナウンサー】「中国政府が訪日自粛を要請しているにも関わらず、日本に来る理由とは一体何なのでしょうか?」
ここからは、通訳さんの力をかり、改めて大阪から調査スタート!
街中で中国人観光客を見つけるのは困難を極めます。声をかけても...なかなか会話が成立しません。中国では政治的な話題を人前でするのはタブーとされているため、警戒されているようです。
取材を進めるうちに、ある中国人ドラマーに出会いました。
【秦令欧奈アナウンサー】「日本は初めてですか?」
【中国人観光客】「初めてではないです。2度目です」
【秦令欧奈アナウンサー】「政府が訪日自粛を要請している中でどうして日本に?」
【中国人観光客】「事態がこうなる前から、旅行は予約していたので、やっぱり来たかったんです。日本に来て初めて、心配することはないと分かりました」
【秦令欧奈アナウンサー】「日本の何が好きですか?」
【中国人観光客】「とても清潔でいい買い物がたくさんできるところが好きです。僕 ドラマーだから、こういうの集めてるんだよ!」
ガシャポンのおもちゃを10個以上購入したようです。
【秦令欧奈アナウンサー】「中国にはない?」
【中国人観光客】「ない」
続けて政治的な話題に触れると...。
【中国人観光客】「あー、それは…どう答えたらいいのかわからないよ」
■取材は難航...中国人観光客減少の現状
大阪と京都で6時間以上声をかけ続け…やっと見つけた中国人観光客も…。
【秦令欧奈アナウンサー】「今の日中関係についてどう思う?」
【中国人観光客】「…」
質問には答えず去ってしまいました。
■やっと話を聞けた中国人観光客
そんな中、上海からきたという旅行者にやっと話が聞けました。
【秦令欧奈アナウンサー】「日本は初めてですか?」
【中国人観光客】「もう4~5回は来てますよ。日本は中国の隣の国。お隣同士はたくさん行き来すべきだと思います。お寿司が好きなのですが、きのう行った居酒屋がとてもよかったです」
【秦令欧奈アナウンサー】「日本には来にくくなかったですか?」
【中国人観光客】「政府には一定の方針があり、民間人もある程度、政府の呼びかけに従うところはあります。しかし、日中にはお互いに友好や助け合いの文化があります。片方が間違ったことをしたり、歴史の共通認識に合わない所があったりしたら、お互い修正する必要があると思います」
■インタビューに答えてくれたのは64組中4組
今回番組で8時間かけて調査したところ、声を掛け64組の中国人観光客のうち、インタビューに答えていただけたのはわずか4組。これが今のリアルな日中関係を表しているのかも知れません。
今回の取材で、中国政府の渡航自粛要請により中国人観光客が明らかに減少している実態が浮き彫りになりました。
一方で、他のアジア諸国からの観光客や日本人観光客によって売上を維持している店舗もあれば、月に300万円もの損失を被っている店舗もあります。
京都大学大学院の藤井聡教授は、今回の取材を踏まえ「今までがオーバーツーリズムであった」と分析しました。
【藤井聡さん】「影響が出たという店舗が(20店舗のうち)2店舗、(今回の取材の)全体の1割ぐらい。ということは9割方影響なかったというのは、今の状況は、それぞれのお店の取り扱い可能容量以上の需要があったということ。
中国の方が来なくなったので、これまで入れなかった人が入ってくれる。お店としては、そんなに変わらないという方が9割なんですよね。それを考えると、やっぱりオーバーツーリズムという状況だったんですよね」
(関西テレビ「newsランナー」2025年12月5日放送)