2025年9月、違法建築問題を背景にその歴史に幕を下ろした札幌市南区の「ノースサファリサッポロ」。閉園から1ヶ月が過ぎ、静まり返りつつあるはずの園内で、皮肉にも新たな命が芽吹いていたことが明らかになった。
■まさかの”ライオンの双子”誕生
10月29日、ライオンの双子の赤ちゃんが誕生したのだ。
ライオンは通常、一度の出産で1頭から5頭の子を産むとされる。今回生まれたのは2頭。性別は不明だ。
本来、新たな命の誕生は喜ばしいニュースであるはずだ。しかし、この閉園した動物園で起きた出来事は、人々に「複雑な思い」を抱かせずにはいられない。解決の糸口が見えない「重い現実」を、さらに深刻化させる事態だからだ。
■全国で”飽和状態”のライオン
園には現在、ライオンを含めた256匹もの動物たちが取り残されており、その移転先探しは難航を極めている。なぜ、これほどまでに行き先が決まらないのか。そこには、単なる閉園騒動にとどまらない、日本中の動物園が抱える構造的な問題が横たわっていた。
「ライオンは今、日本中で余っている」
国内で飼育されているライオンは400頭以上とされる。繁殖力が強く、群れで増える彼らの数は、すでに全国の動物園で「飽和状態」にあるのだ。道内はおろか、日本全体を見渡しても、新たなライオンを受け入れる余裕のある施設は少ないと言える。
■問われる施設側の管理責任
そんな中での、新たな命の誕生である。ライオンの妊娠期間は約120日程度。逆算すれば、閉園の方針が固まった後に妊娠した可能性が高い。
「ただでさえ数を減らさなければならないのに疑問だ」 札幌市の関係者がそう憤るのも無理はない。受け入れ先のない命が増えることは、そのまま事態の泥沼化を意味するからだ。
これに対し、ノースサファリ側は「意図的ではなかった」と釈明し、法令に基づいた届け出も済ませているという。
だが不妊去勢手術をしていない雄と雌が同居していれば、妊娠は当然起こり得る自然の摂理だ。「意図的ではない」としているが、管理者としての責任は重いと言わざるを得ない。
■新たな動きも浮上したが…
そんな中、新たな動きも。東京の投資会社「ビーチ・キャピタル」が、残された動物を救うため、園の再開を目指すと表明したのだ。
しかし12月5日に開かれた地元住民への説明会では、住民側から運営について懸念の声も上がり、同社は「市の完全な許可」と「住民の賛同」がないかぎり再開はできないと述べるにとどまった。
生まれたばかりのライオンの双子を含め、動物たちの移転先問題は依然として不透明な状況が続いている。